楽天ジャパンオープン・ストリング・ストーリー

楽天ジャパンオープン・ストリング・ストーリー

楽天ジャパンオープン・ストリング・ストーリー

ストリンガー細谷氏 楽天ジャパンオープンで錦織 圭、伊藤竜馬、ベルディッチのストリンガーを務めた、ウイルソン・ストリンギングチームのメンバーである細谷 理氏。
大会期間中は選手と同じホテルに泊まり込みサポートをし続けたのだが、「錦織のストリングについては、準々決勝から少し張り方を変えました」という。準々決勝(3回戦)といえば対ベルディッチ戦。1~2回戦は格下相手にフルセットの苦しい戦いだったが、この準々決勝はランキング6位と格上相手に一転してストレート勝ち。優勝までの弾みとなった試合だ。

錦織圭 確かに1~2回戦の錦織は、試合中にストリングの張り替えを出す、いわゆる“オンコートラケット”が多かったが、準々決勝以降はそれがピタッとなくなっていた。 「横糸のナチュラルの張り方が問題だったんです。今回はストリングルームではなくホテルでの張り替えでスペースも限られていたので、USオープンなど、いつも手で行っていたナチュラルのプレストレッチをストリングマシーンで行っていました。

錦織圭 どうもそれがマシーンだとプレストレッチが弱く、さらに強さが出ずにバラつきがあるため、錦織にとってはしっくりこなかったようなのです。
マシーンでプレストレッチをかける時は、例えば50ポンドで10%のプレストレッチであれば、まず55ポンドで引っ張って、それが50ポンドに戻るセッティングにして張るわけですが、戻ってから張るまでのタイミングで横糸1本1本の張りにバラつきが出てしまうんです。
これに対し手で引っ張ると、マシーンにかける前に先にストリング全体を引っ張っているので、引っ張りに誤差が出ません。でも、この差は、一般の人ではほとんどわかりません。感覚が鋭い錦織ならではのものなのです」。そこで細谷氏は、準々決勝から手でプレストレッチをかけることにしたのだ。錦織は縦糸が4G、横糸がナチュラルのため、ナチュラルを半分に切って短くしたうえで何とか工夫し手でプレストレッチをかけたという。

錦織圭 そもそも錦織は楽天ジャパンオープンが始まる前、細谷氏に「前の週のマレーシア・クアラルンプールで戦っていた時から、オンコートラケットが多かったんです。試合前に4本張り替えていて、オンコートで4本出すこともありました」と相談していたという。
細谷氏は“それは異常だ”と感じ、どんなふうに張り替えをしていたかを聞いたところ、「マレーシアでは、10%のプレストレッチでお願いしていました」(錦織)とのこと。それで楽天ジャパンオープンでも1~2回戦は、マレーシアと同じようにマシーンによる10%のプレストレッチで張っていたのだが、結果的には、そのマシンと手のプレストレッチの差が、錦織が持つ本来のプレーを妨げることとなっていたのだ。
実際、1~2回戦では、錦織がエースを狙いにいった時に、ラケット1本分くらいアウトする場面があり、その時は「錦織もこんなミスをするんだな」と思っていた。それが準々決勝あたりからしっかり入るようになり、「さすがに調整してきたな」と思ったのだが、確かに技術的な調整もしたのだろうがストリングのセッティングの調整がうまくいったことも調子を上げてきた大きな要因だったのだ。
錦織も準々決勝の後、「今日はラケットのお陰でした」と細谷氏に 感謝していたそうだ。こうしたサポートが錦織の優勝を支えたのだろう。