ウイルソンの若手選手が次々にブレーク!

2011.03 :: ウイルソンの若手選手が次々にブレーク!

全豪オープン・ベスト16で自信をつけ、サンノゼでATPツアー初優勝、 続くメンフィスも準優勝と快進撃!ランキングも152位から37位へ!!

ラオニック

オーストラリアンオープンで、本格的なシーズンの幕開けとなったテニス。そのオーストラリアンオープンで予選3回戦を突破しグランドスラム2回目の本戦初出場を決めると(初グランドスラムは昨年のUSオープンで1回戦負け)、本戦でも1回戦でパウ、2回戦でロドラ(第22シード)、3回戦でユーズニー(第10シード)を下しベスト16に進出したのがラオニック(カナダ)だ。
このラオニックの最大の武器は196cmの長身から打ち下ろすサーブ。フォーム自体は、それほど特徴がなく、トスを上げてラケットを担ぐまではゆったりとしたフォームで優雅さを感じるくらいなのだが、そこから驚異的な背筋力を使ってボールを押さえ込んでいく、インパクトからフォロースルーにかけての動きはダイナミックで、ラケットから放たれたボールはあっという間にサービスボックスに突き刺さり、その後バックフェンスまで一直線に飛んで行く。その勢いは、グランドスラム常連のロドラやユーズニーでさえ、スイートスポットで捕えなければ弾かれてしまうくらい。その前に、そもそもボールに触れることができないくらいで、サーブ4本でサービスキープするもの珍しくない。さらに、フラットドライブ系で打つフォアも威力が抜群で、高い打点から思い切りスイングしていくので、相手にとってはサーブを打たれているような感覚に陥ってしまうだろう。そしてフォアを打ち込んだあとは、ネットに詰めてオープンコートにボレーで止めを刺すというそつなさもある。
ラオニック4回戦ではリターン名手のフェレール(第7シード)から第1セットを先取したが、サーブのコースを読まれてストローク戦になると、弱点であるバックを集中的に攻められて1-3で逆転負け。しかし、このオーストラリアンオープン・ベスト16が自信になったのだろう、2月上旬のサンノゼ大会ではマリース、ブレーク、モンフィスという試合巧者を下し決勝に進出すると、その決勝ではベルダスコを破り初のATPツアータイトルを獲得。続くメンフィス大会では1回戦で再びベルダスコを破り、決勝まで進出。決勝ではロディックに敗れたが、オーストラリアンオープン前に152位だったランキングを3月中旬の段階で37位へと急上昇させた。
このラオニック、伯父がモンテネグロの副大統領で、94年に家族と一緒にカナダに移住してきたという特異な経歴の持ち主。このパワーと勢いで、今年の男子ツアーをまだまだ盛り上げてくれるはずだ。



グリゴール・ディミトロフフェデラーを継ぐ才能がようやく開花 グリゴール・ディミトロフ
ラオニック同様、オーストラリアンオープンをキッカケにブレークを始めたのがディミトロフ(ブルガリア)。予選3回戦を勝ち上がって、2度目のグランドスラム本戦出場を決めると(1度目はワイルドカード出場の09年ウィンブルドン/1回戦負け)、1回戦でゴルベフにストレート勝ちし、グランドスラム初勝利。2回戦では第25シードのワウリンカに敗退したが、リラックスしたフォームから放つサーブとフォアハンドは切れが抜群で、体のしなりを使って打つ片手バックには伸びがあり、そのテニスをする姿はフェデラーに瓜二つ。
ラオニックそもそもディミトロフは08年のウィンブルドン・ジュニアとUSオープン・ジュニアで優勝したことで注目を集めていたのだが、そのテクニックの多彩さゆえにもろいところもあり、それがこれまで結果に結び付いてこなかった。しかし、このオーストラリアンオープンで十分に戦えたことで自信をつけたのだろう、2月上旬のロッテルダム大会、下旬のドバイ大会で予選をクリアし本戦インすると、今年初のチャレンシャー大会、シェルブール・チャレンジャーでは優勝。昨年末106位だったランキングは、3月中旬時点で71位まで上昇。フェデラーも、好成績を上げていたジュニア時代からプロへの過程で足踏みをし、プロ当初の成績では同じ81年生まれのヒューイットに差をつけられていたが、その後、大きく逆転した。『大器晩成』ということわざは、そうした意味では真実なのだろう。ディミトロフが今後、フェデラーと同じように成長していく予感がしてならない。



ヒザのケガを乗り越えグランドスラム初のベスト8入り!スピード&パワー抜群のペトコビッチ
ペトコビッチ男子のラオニック、ディミトロ同様、今回の全豪オープンをキッカケにポテンシャルの高さを見せつけたのが、女子のペトコビッチ(ドイツ)。ペトコビッチはグランドスラム初出場となった07年フレンチオープンで2回戦に進出すると、USオープンでも2回戦進出。これからさらに上を目指す、という期待の新人だったのだが、08年のオーストラリアンオープン1回戦の試合中に右ヒザの十字靭帯を断裂して、その後8ヵ月ツアーから離れることを余儀なくされていた。
しかし、そのケガから完全復活した今年は、年頭のブリスベン大会で準優勝し好調を維持したままオーストラリアンオープン入りすると、自身初のグランドスラム・ベスト8をマーク。このペトコビッチの武器はサーブとフォアで、放たれるボールは力強く、ボールへ与えるパンチ力は男子選手並で、その威力はオーストラリアンオープン3回戦でヴィーナス・ウイリアムズ、4回戦でシャラポワを下したことでも証明済み。特に、フォアのダウン・ザ・ラインは鋭く切れがあり、このショットを見せることで常に相手にプレッシャーを与え、ゲームの主導権を握っていく。準々決勝では李 娜に敗退したが、フットワークの面で劣っていたもののショット力では互角以上のものを見せた。今後、上位とも戦える動きや戦術を身につけてくれば、グランドスラム上位の常連になるのは間違いない才能を持っている選手だ。