9月16日(金)~18日(日)の3日間、有明コロシアムで行われたデ杯ワールドグループ・プレーオフ、日本×インド戦。今回の日本チームの命題は二つだった。一つは、過去90年に渡る戦いの歴史の中で3勝18敗と大きく負け越しているインドを倒すこと。二つ目は、85年以来、実に27年ぶりとなるワールドグループへの復帰を果たすこと。そのために欠かせない存在として、日本のシングルスNo.1に抜擢されたのが錦織 圭だ。
大会初日。まず、第1合に登場したNo.2の杉田祐一が気迫の込もったプレーでインドのNo.1デバーマンをストレートで一蹴。そして、第2試合に登場したのが錦織。対するのは、3年前、敵地インドの芝コートで対戦し5セットの末に敗れた相手、ボパンナ。その時は苦杯をなめたが、最近、シングルスで特筆できる実績を残していないボパンナに対して、錦織は今年自己最高の46位も記録した格上。ボパンナが190cmの長身から放つビッグサーブを頼りに散発的に攻撃を仕掛けてくるのに対し、錦織はボパンナのセカンドサーブに対してリターンでプレッシャーをかけることでストローク戦を優位に運ぶという落ち着いた展開で、「相手のショットはギャンブル的だったので、僕は自分からミスらないように、そして何よりも勝つことを目的に戦いました」(錦織談)と貫録を見せ6-3、6-2、6-2で圧勝。会場に駆け付けた数多くのサポーターからの応援に力を得つつ、さらにサポーターを力づける『頼りになるエース』の姿を見せた試合内容だった。
そして、次に錦織が登場したのは最終日。両国のNo.1同士の対戦が予定されていた第1試合は、デバーマンが右肩を痛めたため、急遽、この試合がデ杯デビュー戦となるバルドゥハンが代役で登場。ATPランキング400位台中盤と錦織とは比べるべくもないが、序盤は188cmの長身から繰り出すサーブと安定したストローク力で錦織と対等な戦いを見せた。しかし第1セット5-5で迎えたバルドゥハンのサーブを錦織が鋭いパッシング・ショットでブレークすると、続く自身のサービスゲームを落ち着いてキープし、このセットを7-5で先取。すると「ここからギアが入った」という錦織は、トータルで10本のエースを奪ったサーブと、ラリーが長引くほどにコースの厳しさを増してゆくストロークでバルドゥハンを圧倒し、続く2セットを6-3、6-3と連取してストレートでゲームセット。この錦織の勝利により、二つの命題=『インド戦の勝利』、『27年ぶりのールドグループ復帰』は見事に果たされた。
「(ワールドグループ復帰が決まって)本当にうれしい。今日は自分も動きがよく、サーブも好調だったので心配はしていませんでした。(来年のワールドグループで対戦したい国は)まだフェデラーとは対戦したことがないので、フェデラーがいるスイスと対戦してみたい」と試合後の会見で語った錦織。世界でたった16の強豪国で争われるデ杯ワールドグループ。その大舞台で、世界と日本を代表するウイルソンのプレーヤーどうしの対決が実現するかもしれない。
直前のUSオープンで初のグランドスラム本戦ストレート・インを果たした伊藤竜馬は、今回のデ杯は2日目のダブルスに登場。メンバー合流後、限られた時間で築いた杉田祐一とのコンビネーションは、お互いの持ち味であるストローク力を生かしたものだったが、それは実戦で見事に生かされた。
相手のブパシとボパンナは、ともにダブルスランキングでトップ20内に名を連ねる選手。ダブルス・スペシャリストらしくネットに詰めプレッシャーをかけてきたが、伊藤と杉田はコンパクトなスイングで丁寧にコースを突くリターンを返し、続くショットで相手陣形を崩していくことでインドペアのサービスゲームにプレッシャーをかけた。一方、自分たちのサービスゲームではIフォーメーションをとりつつ、前衛・後衛の役割を明確に分担。特に伊藤は、威力あるサーブから展開を優位に運び、主にカバーしたフォアサイドでは落ち着いてインドペアの動きを見極めながら、豪快なウィナーや繊細なタッチのアングルショットを打ち分けるなど多彩なテクニックを駆使して対抗した。
しかし、インドペアは要所でファーストサーブの確率を上げるなど集中力を高め、またネット際ではダブルス・スペシャリストらしいボールさばきを見せて、結局セットカウント3-1でインドが勝利。試合後、伊藤は「(杉田と)お互いのいいところはわかっています。ダブルスではそれを引き出し、さらにお互いをカバーし合えるように戦うことが大事。今後はツアーでも挑戦していきたい」と敗戦に対しても前向きに振り返った。
日本にとっては、課題であったダブルスに光を見出すことのできる意義ある敗戦だったといえる。そして、それは伊藤自身にとっても、今後プレーヤーとしての幅をさらに拡げるきっかけであったと言えるだろう。
伊藤竜馬選手使用ラケット