楽天ジャパンオープン2011レポート

2011.10 :: 楽天ジャパンオープン2011レポート

錦織 圭(1回戦)

錦織 圭(1回戦)前週のマレーシアでは準々決勝で第1シードのアルマグロを破り、ベスト4の成績を挙げた錦織 圭。USオープンで痛めた腰のケガから完全に復活し、その魅力的なテニスをホームコートでファンに披露すべく有明コロシアムに帰ってきた。
そして大会2日目の10月4日(火)、初戦で対したのは第3シードのフェレール。このドロー、錦織にとってはチャンスと捉えることもできた。なぜなら、錦織がベスト16に進出した08年のUSオープン、3回戦でファイナルセットの末に勝利を収めた相手がフェレールだったのだ。しかし、その時以来となる2人の2度目の対戦は、大会時点で5位というフェレールのランキングを正直に表したものとなってしまった。

錦織 圭(1回戦)サーフェスがUSオープンと同じデコターフに塗り替えられ、ややスローになった有明コロシアムでは激しいストロークの打ち合いが演じられ、ブレーク合戦となった第1セットには錦織が展開をリードする場面もあった。しかし、試合を通じて「大事な場面でのポイントにかける集中力の違いが出た」(錦織)と、4-6、3-6で敗退。
試合後、錦織は「今日は1ゲーム目から本当にタフな試合だった」と振り返ったが、同時に「自分はより攻撃的に行こうと思い、それができていた部分もあった」と、自らの課題に対して手ごたえもつかんだ様子。正真正銘のトップクラスに挑もうとする位置にいるからこその苦しみは、きっと錦織をまたワンランク上の世界に導いてくれるに違いない。


伊藤竜馬(2回戦)

伊藤竜馬(2回戦)ワイルドカード(主催者推薦枠)で出場権を得た伊藤竜馬は、初戦で予選上がりのセラと対戦。予選上がりといえども、セラは一昨年には29位を記録している実力のあるプレーヤーだ。第1セット、伊藤はスタートダッシュに成功して3-0と先行。ところが、ここから4ゲームを連取され逆転を許してしまうのだが、9月のデ杯(対インド戦)を経験して「自分を信じることができるようになった」という伊藤は、その後3ゲームを連取して第1セットを先取。結局、この試合はフルセットにもつれ込むものの、ファンの声援というホームの利も生かして、6-4、3-6、6-3のスコアで大会初勝利を挙げた。
伊藤竜馬(2回戦)続く2回戦は、ベスト8進出をかけてランキング58位のトミッチ(今年のウィンブルドン・ベスト8)と対戦。1球ごとに球種やスピードに変化をつけたショットを放つトミッチだが、そのペースに惑わされることなく伊藤は自分のテニスを貫き、フォア、バックでクロスの打ち合いから機を見て放つダウン・ザ・ラインは何本もトミッチの横を通り抜けていった。
そうして第1セットを7-6(4)で先取した竜馬だったが、前週のクアラルンプールから痛みを感じていたという右ヒジの筋肉疲労が影響し、第2セットは1-6と一方的な展開でトミッチに。迎えたファイナルセット。伊藤竜馬(2回戦)その「痛みを忘れるほどのアドレナリンが出て」(伊藤)再び集中力を高めた伊藤が、先にトミッチのサーブをブレークすることに成功。さらにトミッチの足にケイレンが来たこともあり、1ブレークの差を維持したまま逃げ切りたいところだったが、長いラリーになる前に早めの勝負に打って出てきたトミッチにペースを乱されて逆転を許し、結局5-7でゲームセット。試合後の記者会見では「ファイナルセットは、こちらが先にブレークしてリードしたのにも関わらず攻め切れなかった」と悔やんだ伊藤。しかし、2回戦に進んだからこそ垣間見えた一つ上の世界があったはず。ウィンブルドン・ベスト8のトミッチを相手に、ベースラインからエースを奪っていける攻撃力の高さは、今後のさらなる活躍を予感させるものが十分にあった。


ダブルス/錦織 圭&伊藤竜馬(2回戦)

錦織 圭と伊藤竜馬のダブルスは、前週のクアラルンプールで伊藤から声をかけて実現した。ペアを組むのも初めてだが、なんと「試合前のウォームアップが、一緒にダブルスとしての初めての練習」(錦織)でもあった。
ダブルス/錦織 圭&伊藤竜馬(2回戦)この二人が初戦で対したのは第3シードで、今年のウィンブルドンではベスト4に入っているカス&ペヤ組。ペアとしての経験が如実にプレーの精度に反映されるダブルスで、急造ペアが実績のあるペアに立ち向かうのは至難の業。案の定、ネット際で壁となって立ちはだかるカス&ペヤ組の前に第1セットを4-6で失った錦織と伊藤のペアだったが、第2セットに入ると伊藤の強力なサーブと錦織の反応鋭いボレーがそれぞれ機能し始め、徐々にゲームを取り巻く空気を変えていく。こうしたケミストリー(化学反応)もまた、ダブルスならではの醍醐味だ。そうして、第2セットを6-4で奪い返した錦織と伊藤は、ファイナルセットに代わるノーアドバンテージのマッチタイブレークを10-4で取り、見事に初戦を突破。
ダブルス/錦織 圭&伊藤竜馬(2回戦) 試合後、錦織は「今のルールなら、(ダブルスの)勝負は紙一重のところにある」と振り返り、伊藤は「コートの半面を守っての勝負なら、相手よりうまいと思って戦える」と胸を張った。伊藤にとっては、先のデ杯で杉田祐一との"明確な役割分担"によるダブルスで世界トップクラスのインドペアに肉薄した経験も自信となっていたのだろう。
続く準々決勝では、アンディー&ジェイミーのマレー兄弟に3-6、4-6で惜しくも敗れた。しかし、その後マレー兄弟はみごとこの大会のチャンピオンとなったことを考えると、錦織&伊藤のペアも相当なポテンシャルを持っていると言えるだろう。

M.フィッシュ(3回戦)

M.フィッシュ(3回戦)今年4月に、ロディックを抜いてランキングでアメリカNo.1の地位に就いたフィッシュ。7月にはアトランタで6度目のATPツアータイトルを獲得。さらに翌週のロサンゼルス、そしてUSオープン直前のモントリオールでも決勝進出を果たし、8月15日には自己最高の7位を記録。ハードコートで滅法強いことを見せつけてきただけに、有明コロシアムでの戦いぶりにも注目が集まった。
ところが、初戦は予選上がりで同じアメリカの19歳、ハリソンに6-4、3-6、7-5と大苦戦。続く2回戦は、23歳のグルビスに6-2、6-4とストレート勝ちを収めたものの、準々決勝では急成長中の18歳トミッチ6-7(5)、6-4、6-1と逆転によるフルセット勝ちという苦しい勝ち上がり。
M.フィッシュ(3回戦)しかし29歳とベテランの域に入りながら、シーズンも終盤に差し掛かり体には疲れも溜まるこの時期に、しっかりとシード(今大会は第4シード)を守って勝ち残れるところにフィッシュの本当の強さが見て取れる。トミッチ戦の後、フィッシュは「私は我慢をし、自分のできる限りのことをし、セカンドセットの後半に訪れたチャンスをものにするように努力するのみだった。今後の目標は(まだ出場経験のない)ロンドンのATPファイナルに出ること。試合の重要性を認識してプレーできるという感触はよいものだね」と語っている。若い選手には絶対に口にすることのできない、そんな言葉で自らのテニスを語れるところに今のフィッシュの充実ぶりが象徴的に表れていると言えるだろう。
そして、準決勝では第1シードのナダルと対戦。ナダルとは過去1勝6敗の成績だが、最も近い対戦である今年8月のシンシナティーではフィッシュが6-3、6-4で勝利を収めている。今回の対戦も、ナダルの鉄壁のストロークに対してフィッシュはビッグサーブと果敢なネットプレーで応酬、第1セットからシンシナティーの再現を予感させる緊迫感のある展開となったが要所でナダルの守りが勝り、5-7、1-6でフィッシュの東京での戦いは終わった。