今年は、年頭のオーストラリアンオープン1回戦でグランドスラム初勝利、4月のATP250ヒューストンでも2回戦に進出し、続くチャレンジャー大会では高雄で準優勝、釜山で優勝。さらに5月のデュッセルドルフのワールドチームチャンピオンシップではステパネックに勝利するなど、着実に実績を残せるようになってきましたね?
ミスが減ってきたのが大きな要因だと思います。変なミスというか、簡単なミスが減りました。また、コート内に入って速いタイミングで打つなど展開に幅が出てきたので、無理にハードヒットしなくても相手のリズムを崩せるようになりました。そうしたことから、総合的にストロークに自信が出てきたのも、結果につながっていると思います。また、メンタルで少し余裕が出てきたのも大きいです。相手にファーストセットを取られても、『セカンド、ファイナルとまだまだ戦える』という感じでプレーしていると、相手のプレーが落ちてくるのが分かるようになりました。体力的に余裕が出てきたのも大きいと思います。
メンタルの成長というのは、なかなか難しいと思うのですが、何かキッカケがあったのですか?
チャレンジャーではシードが付くようになったためベスト8以上に勝ち上がることが多くなりましたし、全豪など大きな大会で少しずつ勝てるようになったので、自分に少しずつ自信が持てるようになりました。そういう気持の器が大きくなったと思います。
そうしたことは、やはりツアーを回らないと得られないものなのでしょうか?
回るだけではなく、やはり勝たないとダメですね。また、ツアーもアジアばかりでなく、ヨーロッパやアメリカも回ることでテニスの幅が広くなり、そこでベスト4や決勝に勝ち上がることで、すごく自信がつきます。
テクニック的に変わったことは?
目標を直線的に狙うだけでなく、ネットの高い所を通すなど空間を使えるようになりました。そうして攻守のメリハリができるようになったのは、大きいですね。空間を使うと一度リセットできるので、展開に幅を出すことができます。直線的に打つだけだと、3~4球打つとミスが出てしまうので…。また、しつこい相手であれば、逆に相手に打たせてこちらは粘るという配球が可能になります。あと、バックのラリーでのミスが少なくなりました。特に、ラリーの早い段階でストレートに切り返すことができるようになったので、相手がそれを警戒してくれるため、少し甘いクロスラリーでもタイミング次第でエースが取れるようになりました。フォアについては、以前は90%ぐらいの力で打っていたのが、今は攻撃の時以外は60~70%ぐらいで打ち、基本的にはコントロールベースでコースを変えたりなどのプレーをしています。チャンスボールでも打つのは80%ぐらいですね。それくらいでもすごくいい球が行きますし、なおかつミスが減るので、無理する必要はないなと。逆に無理した力が入ってアウトなどが多くなるので。
ウイルソンのラケットを使い始めて2年ですね。
空間を使えるようになったのは、ラケットのおかげも大きいです。軌道に角度をつけてスピンをかけやすいので、激しい動きの中でも自分の思っている通りの軌道でボールが打ちやすいんです。スライスもネットスレスレの攻撃的なスライスや、時間を稼いで粘るスライスなど自由自在に打てます。あと、デュースサイドでワイドにスライスサーブを打った時のキレがすごくいいですね。そうして相手をコート外に追い出せると、大きなオープンコートが作れるのでフリーポイントになり、自分のサービスゲームを楽にキープできます。
全豪オープンに続きフレンチオープンにもダイレクトインして、さらにウィンブルドンの出場も確定しましたね。
ランキング70~80位になると、グランドスラムだけでなくATPツアーの本戦にもほとんどダイレクトインできるので、ATPツアーの予選に出るのかチャレンジャーに出るのか調整しなくてもいいのでスケジュール的にかなり楽になりました。また、チャレンジャーだとシードを守るにはマストで勝たなくてはならない緊張感がありました。でも、ツアーではまだ一番下のランキングなので、思い切りぶつかっていきたいですね。やっと、ここまで来たという感じです。
具体的にどんな戦い方ですか?
基本的に今のベースは崩さずに、チャレンジャーの選手以上の切り返しが来るので、それに負けない切り返しをしていきたいです。あとは、サーブの確率です。リターンは元々自信があるので、やはりサービスが大事になってくるかなと。
スピードは時速200km以上が出るようになっていますね。
そのファーストサーブが大事なポイントで入るということと、セカンドサーブの強化です。トップの選手はセカンドサーブでのポイント獲得率が非常に高いんです。リターンがうまい選手を相手にしても60~70%はとっているので、そうなるようにセカンドサーブを強化していきたいですね。具体的には、回転の量や配球がポイントになります。
今はナショナルの増田コーチや高田コーチにツアー帯同してもらうことが多いですね。
試合中に自分が思っていることと、外から見ていることは違うので、レベルアップしていくためにも客観的に見てくれるコーチは必要です。
うまくプレーできない時は、何が原因なのですか?
気持ちです。最近は、その気持ちをリセットできるようになってきたので、勝てるようになってきました。大体ダメな時は、試合のことを考えてないです。『なんで今日はこんなに風が吹いているんだ』『何で今日は当たりが悪いんだ』とか色んなことを考えてしまうのですが、例えばファースセットを取られても一度トイレットブレイクを取って、気持ちを試合の1ポイント1ポイントに向ける。そうしてポイントのことしか考えなくなると、だんだんリズムが掴めてきて足が動くようになり、ショットも結構入るようになるんです。うまくスイートスポットでボールを打って、狙えるようになります。『これに勝ったら何位になる』とか考えず、最終的に試合に勝つためにどう戦うかということを考えれば勝てるようになりましたね。
今年の目標は?
ATPツアーで一度はベスト4や決勝に行ってみたいですね。そうすればランキングも50位くらいまで上がると思いますし、さらに上が見えてくると思います。そのためには、一度の大会で3ケタのポイント(100点以上)を取ることが必要なんです。
戦って見たい相手は?
ティプサレビッチです。フェデラーはYouTubeなどで見ていると、展開が速く敵わないイメージです。ナダルとは、ファイトして戦ってみたいですね。
錦織がランキングでトップ20というのも刺激になりますか?
そうですよね。そこまで行けるという可能性を見せてくれているので。
伊藤選手も16位になれますか?
そのためには、まずはグランドスラムでベスト8やベスト16に入らないと。まだまだ技術も体力も必要です。あと、トップの選手はブレークポイントやゲームポイント、セットポイントの時の集中力がすごいんです。絶対ミスしない集中力がありますし、そうした大事なところの見極めが大切だと思います。そのためには、強い気持ちがカギになって来ると思います。
「気を付けているのはサプリメントです。特に暑い所に行った時は、これまでケイレンが何度かあったので、それを予防するために何種類かサプリメントを持っています。試合前に2種類、試合中に2種類とか飲んでますし、リカバリー用もあるので、全部で5~6種類必ず持って行きます」
「今年になって、ストリングの張り替えが多くなったので、いつも多めに持っています。毎試合、張り立てのストリングを使うようになったのと、その時の体調やボールの跳ね方に合わせるため、いくつかのテンションを用意しているので、張り替えが増えました」
「ホテルではパソコンを使っていますが、会場ではiPadを使うことが多いです。会場にはワイアレスが飛んでいるので、便利なんです。」
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