フェデラー愛用のラケット系譜

2012.08 :: フェデラー愛用のラケット系譜

史上最高プレーヤーR・フェデラーを支え続けるボックス形状×90sq.in.ラケットの血統

2001現在、フェデラーが使用しているPro Staff Six.One 90は、ボールタッチの感覚を大切にするプレーヤーが愛用してきたラケットの流れを受け継ぐ最新モデルだ。 そもそものスタートは、1984年に発売されたPro Staff Mid。コナーズ、エバート、クーリエ、エドバーグ、サンプラスといった歴代のグランドスラム・チャンピオンでありランキングNo.1経験者でもあった名選手が使用し続けてきた。このラケットの特徴は、フレームがボックス(箱)形状でフェース面積が85平方インチと小さいこと。Pro Staff 6.0 85パワーで比べると現在主流となりつつあるラウンド形状でフェース面の大きいラケットには負けるが、ボックス形状のラケットにはスイートスポットで捕えた時の独特の打球感の良さがある。絶妙なホールド感があるので、繊細にボールをコントロールすることができるのだ。
そうしたボールコントロールの感覚を大切にするフェデラーも、1998年のプロ転向時から4年間は、このPro Staff Mid(当時は、ラケット名がPro Staff 6.0 85に変わっていた)を使用していた。

そして2002年、フェデラーはラケットをHyper Pro Staff 6.1 90(日本未発売)にスイッチ。フェース面が85平方インチから90平方インチになったのは、ラケットにパワーを求めたため。さすがにこの時代になると、ラケットが進化しパワーは必要不可欠な要素となったため、フェデラーもフェース面を大きくすることでそれに対応したのだ。
そして翌2003年には同じく90平方インチのPro Staff Tour 90の使用を開始。ウィンブルドンでグランドスラム初優勝をしたことから、この90平方インチへの移行は完全に成功したと言えるだろう。

2003〜2004

その後、n Six.One Tour 90になった2004年から、フェデラーの強さが本物になる。この2004年、2005年、2006年(n Six.One Tour 90)の3年間は1年で全豪オープン、ウィンブルドン、USオープンのグランドスラム3冠を達成したのだ。このn Six.One Tour 90、実は市販品とフェデラーが使っているものには若干、違いがあった。2004それはフェース中央付近のストリングの目の粗さ。ウエイトやバランス、ストリングパターンなどは同じなのだがPWS(フェース面の中央両サイドにあるパワー・ウエイト・システム)で盛り上がっているところのストリングを通す穴が、市販品は5本なのに対しフェデラー愛用のラケットは4本だったのだ。これはフェデラーが「ウエイトとバランスをいじらずに、もう少しボールが飛ぶようにしてほしい」とウイルソンにリクエストしたため。それに応えるべくウイルソン開発陣が出した答えが、スイートスポット付近の目を粗くしてボールを飛ばすというものだったのだ。このフェデラーモデルは、2006年に2000本限定で発売され、あっいう間に完売している。


[K] Six.One Tour 90 そして2007年からフェデラーは[K] Six.One Tour 90を使い始めるのだが、このシリーズから市販品もフェデラーのものと同じくPWSの部分のストリングは4本。同じフェース面なのに以前のn Six.One Tour 90より飛ぶと感じた方も多いと思うが、それはスイートスポット付近の目が粗くなっていたからなのだ。この後、2010年にSix.One Tour BLXにスイッチするのだが、このモデルの最大の特徴は、これまで以上に打球感がよいこと。フェデラーの「もっとインパクト情報を的確に感じられるものを」というリクエストに応えて、ウイルソンがBLXという素材を探し開発したのだ。このラケットは、フェデラーだけでなくドロゴポロフ、ディミトロフも使用。独特のタイミングでプレーするドルゴポロフ、フェデラーとそっくりプレースタイルで次世代のNo.1候補ディミトロフと、天才型のプレーヤーが好む打球感になっているのが分かる。

2010〜2012

そして今年2012年からフェデラーが使っているのがPro Staff Six.One 90。このボックス形状のPro Staff Six.Oneシリーズには、これまでなかった95平方インチが加わったため、ドロゴポロフ、ディミトロフとそちらに移行したが、小さいフェース面ならではの独特の打球感と振り抜きのよさを求めるフェデラーは90平方インチののまま。それでウィンブルドンで優勝し17個目のグランドスラムタイトルを手に入れるとともに、ランキングNo.1に返り咲き、No.1在位期間もサンプラスの286週を抜き歴代1位となったのだから、このボックス形状×90平方インチには他のラケットにはない魅力と戦闘力の高さがあるのだ。



フェデラー愛用のラケット系譜

  • 【1998年】 Pro Staff 6.0 85
    この年、ウィンブルドンジュニアで単複優勝。ジュニアランキングNo.1となり、プロ転向。 <2001年> ミラノ大会でATPツアー初タイトル獲得。
  • 【2002年】 Hyper Pro Staff 6.1 90
    日本未発売のモデル。 年末ランキングで初のトップ10入り(6位)。
  • 【2003年】 Pro Staff Tour 90
    ウィンブルドンでグランドスラム初優勝。
  • 【2004年】 n Six.One Tour 90
    全豪オープン、ウィンブルドン、USオープンとランドスラム3大会で優勝。 年末ランキングで初の1位を獲得。
    <2005年> ウィンブルドンとUSオープンで優勝。
  • 【2006年】 n Six.One Tour 90 Federer
    中央部分のストリングの目が少し粗い、市販とは違うフェデラー使用スペックのラケット。 2004年に続き全豪オープン、ウィンブルドン、USオープンで優勝。
  • 【2007年】 [K] Six.One Tour 90
    3度目の全豪オープン、ウィンブルドン(5連覇)、USオープンでの優勝。
    <2008年> 8月にランキングNo.1の座をナダルに奪われるも、直後のUSオープンで5連覇達成。
    <2009年> フレンチオープンで初優勝。生涯グランドスラム達成。続くウィンブルドンで優勝し、サンプラスを抜いて歴代単独1位となる15個目のグランドスラムタイトル獲得。これによりランキングNo.1に復帰。
  • 【2010年】 Six.One Tour BLX 90
    全豪オープンで優勝。16個目のグランドスラムタイトル。 フレンチオープンがベスト8だったため、6月に再びランキングNo.1の座をナダルに奪われNo.2に。
    <2011年> グランドスラムのタイトルはなかったものの、ATP最終戦で優勝。
  • 【2012-2013年】 Pro Staff Six.One 90
    ウィンブルドンで優勝。17個目のグランドスラムタイトル。 その直後、ランキングNo.1に返り咲き、No.1在位期間は287週に。サンプラスの286週を抜き歴代1位の記録(現在も更新中)。
  • 【2014年】 Pro Staff 90
    2013年、8月のシンシナティ大会より使用開始。しかし、背中の問題などもあって2014年年始からは、試作品の黒塗りラケットを使用。ウィンブルドンでは準優勝となっている。
  • 【2015年】 Pro Staff 97 RF Autograph
    2014年黒塗りのラケットにコスメが塗られ、グランドスラムとしてはUSオープンから使用開始。97平方インチ、フレーム厚21.5㎜、フレーム形状50/50(ボックスとラウンドの中間)とプロ・スタッフに革命をもたらした同ラケットで2015年シーズンは、ウィンブルドン、USオープン、ツアー最終戦で準優勝。34歳ながら、復活の狼煙をあげた。