フレンチオープンでは錦織 圭がハイブリッド張りの方法を、これまでの<縦ポリ(4G)×横ナチュラル>から<縦ナチュラル×横ポリ(4G)>に変えた。この理由を錦織は「もう少し柔らかいフィーリングに変えたかったことと、初速より伸びのあるボールを打ちたかった・・・」と話した。柔らかいフィーリングは昔からの好み。そしてTOP10を目前にして、よりレベルの高い相手との対戦も増え、また自分よりランキングが低く、ノーリスクで挑んでくる挑戦者との対戦を見据えて、初速より伸びのあるボールで自身の攻撃力を最大限に高めようとしたのだ。実は錦織はプロになる数年前に縦ナチュラルX横ポリエステルを試した経験があり、その時は「どこに飛んでいってしまうか分からない」と嫌った経緯があった。速いスウィングスピードによる縦ナチュラル×横ポリエステルはあまりにパワーが出すぎるため、コントロールが難しかったのだ。しかしテクニック、パワー、体格、経験の全てにおいて成長した錦織は「更なる高みを目指すための武器になる」と感じ、今回のスウィッチに至ったのだ。こうした自身のステップアップのために、あらゆる角度から探求し、ポジティブにトライし、プラスになると感じるとすぐに吸収できてしまうのが錦織の凄いところだ。そして、この縦横のチェンジが悪い方向ではなく良い方向に出たことは、フレンチオープンで日本人選手としては75年振りにベスト16に進出したことでも分かるだろう。
そしてウィンブルドン。当然のようにここでも<縦ナチュラル×横ポリ(4G)>で、1回戦を快勝した錦織。改めてストリングの縦横を変えた感想を聞くと「芝コートだと食い込まれることが多いですし相手のボールも重く感じるので、縦をナチュラルにしたことでボールが飛んでくれるので楽ですね」という答え。さらに「今日は打つ球がほとんど深く返ってくれたので、ずっと自分が攻める展開で相手にスキを与えないプレーができました」というコメントからは、縦ナチュラルによるボールの伸びが貢献していることが分かる。
また、2回戦でマイエルにストレート勝ちしたあとは「サーブが良くなっているのが安定した成績を出せているカギだと思います」と語っているが、一般的に縦をナチュラルにしたほうがサーブに伸びが出てスピードも上がるもの。<縦ナチュラル×横ポリ(4G)>に変えたことが、「錦織の数少ない弱点」と言われているサーブ強化を手助けしていると見ることもできるだろう。
現在、錦織はトップ10を確実に射程圏内に捉えている。そして、「一度入るだけでは意味がありません。その地位をしっかり確立することが目標です」というコメントからは、その先のトップ5、グランドスラム優勝、そしてプロ転向時に語った「将来の夢はNo.1」を見据えていることが分かる。縦ナチュラル、横ポリはテニスの天才フェデラーも好んだ組み合わせ。そのパターンが錦織が夢としている目標へのサポートになることを願って、今後の錦織を見守りたい。
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