楽天ジャパンオープン・レポート

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錦織 圭の連覇ならず!次世代テニスの具現者デルポトロが初優勝!!持病の腰痛に泣いた錦織

錦織圭大会前の前年優勝者記者会見で「もちろん、連覇を狙っていきます」と話していた錦織 圭。1回戦ではサウスポーのメルツァーにあと2ポイントで敗退というところまで追い込まれたものの逆転勝利し、2回戦ではUSオープン前に負けていたロペスをストレートで一蹴したが、準々決勝でニコラス・アルマグロにフルセットで敗退。最後は持病の腰の故障が再発し、まともにサービスが打てないという状況では仕方のない敗戦でもあった。

ただし、錦織は「第1セットを取れていれば、そのまま2セットで勝てていたかも」と話している。この手のことでは常に正直な自分の考えを語る錦織の言葉だけに、手応えは感じていたのだろう。実際、第1セットを先に4-1とリードしたのは錦織だったが、ここで萎縮せずに逆に思い切り振り切るスイングでショットの威力と精度を上げてきたアルマグロに対して、錦織は後手に回された。本来であれば、先に展開を動かし相手を翻弄しなければならない錦織がアルマグロのテニスに対応させられる形になってしまったのだ。「正面から打ち合えば、打ち負ける」と錦織は前日に話していたが、それも腰の不安込みでのことだったようだ。短い時間であれば全力勝負ができても、長時間アルマグロと真っ向勝負はできないと彼は考えていたのだろう。

錦織圭一方、相手のアルマグロからみれば、得意ではない高速系ハードコートで自分より今や上位シードの選手でもある錦織に負けても失う物などない。思い切り自分のプレーをぶつけることで錦織を突破しようとしたのが、結果として勝利につながった形となった。昨年の大会ではベルディッチを真っ向勝負で沈めた錦織だったが、今年はそういうテニスができる状況ではなかったようだ。2回戦こそ、確実な守備から即攻撃に転じる縦深性のある戦術を、その鋭いフットワークと共に見せていた錦織だったが、それも限られた時間だけ可能だったということのようだ。

錦織もすでに23歳で、今年12月の誕生日を迎えれば24歳。もう若手とは言えない。彼とその陣営にとって、もうのんびりとしてはいられないのがフィジカルの調整と強化。全力で戦える時間を伸ばし、安定したパフォーマンスを年間を通じて繰り出し続けられるようにするには、ベースの部分から着実に上げていくしかないが、テニス選手は個人差こそあるものの概ね24、25歳頃に一度成績的なピークを迎える例が多い。この観点から言えば、彼のキャリアで本当の意味での最初の大きな正念場はこの1、2年ということになる。錦織にはいい形でその時を迎えて欲しい。

近未来のグランドスラム決勝、デルポトロ対ラオニッチ

デルポトロ今回、大会の優勝を争ったのは、デルポトロとラオニッチ。ポスト・ナダル&ジョコビッチ世代を代表する2人が決勝を戦ったというのは、なかなか興味深い。近い将来のグランドスラム決勝を先取りした対決だったと言えば、また違った趣もある。

ラリーでの強打が武器のデルポトロと、強烈なサービスとリターンというポイントの一発目で流れをつかもうとするラオニッチの対決は、まるで一昔前のテニスに逆戻りしたような印象を与えたかもしれないが、必ずしもそうではない。両者ともにポジショニングで相手にプレッシャーをかけ、2m近い巨体を鋭く動かしてコートを駆け回っていた。ラオニッチこのサイズの選手たちが、まるで180cm台の選手たちのように鋭く手足を動かし続けるというインパクトの強さは、映像ではなかなか伝わりづらいのだが、実際に見れば誰でもそれが尋常なことではないとに気づくはずだ。以前ならこの種の選手たちのテニスはパワーオンリーだったが、今ではそこにスピードと駆け引きが色濃く上乗せされ、よりスケールの大きなものとなっている。

技と駆け引き、そして驚異的なスピードとパワーを駆使して戦う次の時代のテニスのひな形を、この二人は見せてくれたような気がする。彼らのテニスがさらに洗練され、完成される時、テニスはまた新たな進化の局面を迎えるのではなかろうか。

スケールアップした伊藤竜馬

伊藤竜馬昨年、1回戦でアルマグロを破るアップセットを演じた伊藤竜馬は、今年はサウスポーの試合巧者、ロペスと対戦。第1セットを6-4で先取し、第2セットも5-5まで迫り、「今年も!」と期待されたが、ここから逆転負けを喫した。しかし、ファーストサーブはコンスタントに時速200kmを超え、最速は時速228kmを計測。ストロークの威力も上がり、そのテニスそのものは昨年よりも数段上質なものとなっていた。
ただし、それをうまく勝負どころで使いこなすことができていない。「あとは、いつ結果が出るかだけ」と本人も手応えを感じてはいるようなのが心強いが、待っているだけではそのときは訪れない。このロペス戦でも勝てるチャンスは幾度かあったが、それらを見逃しロペスが息を吹き返す場面が少なくなかった。時には強引なまでに自分のやり方を相手に押し付けるテニスを見せてもいい。それができるのが伊藤の魅力であり、強さのはず。一日も早い伊藤のブレイクスルーを期待したい。やや大げさに過ぎるかもしれないが、この大会でのプレーに関してだけ言えば、錦織以上の底力を感じさせたのが伊藤のテニスだった。