錦織 圭 北米ハードではやっぱり強い! ワシントンで優勝! モントリオールではナダルを撃破!!

錦織 圭 北米ハードではやっぱり強い! ワシントンで優勝! モントリオールではナダルを撃破!!

錦織 圭 北米ハードではやっぱり強い! ワシントンで優勝! モントリオールではナダルを撃破!!ツアー10勝目を引き寄せたのは<<光ったリターン力>>

左足ふくらはぎを痛めたため、ウィンブルドン2回戦を棄権した錦織。それから約1ヵ月、錦織が復帰戦として選んだのが8月3日から始まったワシントン大会(シティオープン)だ。心配されたケガは深刻なものではなかったようで「ウィンブルドン後に1週間休んだら足はすっかり良くなった。ここに来る前は2週間みっちりトレーニングしてきたから準備万端だよ」と錦織。
そうして迎えた復帰初戦(第2シードのため1回戦BYEで2回戦から登場)。相手はサーブとフォアの強打を武器とするダックワース(オーストラリア)で、第1セットはその勢いに押される形となりタイブレーク8-10で落としてしまう。しかし、相手サーブのスピードに慣れ、コースも読めるようになってきた第2セット以降は「リターンが良くなって、集中力が途切れなかったのも良かった」と試合後に錦織が語ったように、相手のビックサーブを好リターン。得意のラリー戦に持ち込むことでリターンゲームでも主導権を握り、続く2セットを危なげなく連取し逆転勝利で復帰戦を飾った。

ツアー10勝目を引き寄せたのは<<光ったリターン力>>こうして錦織にとっての北米ハードコートシーズンが幕開けしたのだが、この後、この≪リターン力≫が錦織の生命線となっていく。というのも、3回戦のマイエル(アルゼンチン)戦以降、準々決勝グロス(ウィンブルドン史上2番目となる時速236㎞のサーブを記録)、準決勝チリッチ(昨年のUSオープンで負けた相手)、決勝イズナー(身長208cm)とビッグサーバーとの対戦が続いたのだ。しかも、チリッチ戦、イズナー戦はどちらも第1セットを先取される苦しい展開に。さらに、チリッチとは昨年のUSオープン決勝で敗れて以来の対戦で、イズナーには初対戦となる今年3月のマイアミ大会準々決勝でストレート負けを喫していた。

しかし今回は、「ビックサーバー3人を連破するのは簡単ではなかった。しかし第1セットを先取されても、第2セットからいいプレーができて勝ててよかった。メンタル的に戦い続けることができ、特にリターンが良かったのが勝因となった」と錦織自身が振り返ったように、第1セットでエースを取られていた相手サーブを冷静に分析し、それに対応することでわずかなブレークチャンスを引き寄せ確実にものにしていった。また、自身のサービスゲームは、センター、ワイド、ボディへと相手の読みを外すようにコースを打ち分けることで確実にキープ。≪リターンで相手コースを読む≫ということは、≪サーブの時に相手の読んでいるコースの裏を突ける≫ということでもある。それを証明するかのように3人のビッグサーバーを連破してのツアー10勝目。この大会、第1シードのマレーが3回戦で破れていたことからも分かるように、ウィンブルドン後のハードコート初大会はトップ選手といえどもアジャストするのが簡単ではない。そんな中、ハードコートでの強さと安定感の高さを見せ付ける形での優勝は、錦織にとってさらに自信を深める手ごたえとなったはずだ。

ナダルに初勝利も、マレー戦は疲労で満足に戦えず
上記のワシントン大会優勝後、錦織が出場したのが翌週に行われたATPマスターズ1000モントリオール大会。錦織には第4シードが付いたが(1回戦BYEの2回戦からの登場)、順当に勝ち上がると準々決勝でナダルと対戦するドロー。ナダルには過去7戦全敗と相性が悪いものの、最後に対決したのは昨年の5月。それから1年以上を経て、錦織は上り調子で、ナダルは調子を落としている(ランキング9位の第7シード)。その状態で対戦すれば、どんな結果が待ち受けているのかがドローが決まった時からの注目だった。そして錦織はアンデュハルとゴフィン、ナダルはスタコフスキーとユーズニーを倒し、両者ともに順当に準々決勝まで進出。8度目の対戦が現実のものとなった。

ナダルに初勝利も、マレー戦は疲労で満足に戦えず 試合のほうは、錦織サーブの第2ゲームでナダルがブレークチャンスを迎えるも、これを錦織がしのぐと、続くナダルサーブの第3ゲームでは"お返し"とばかり錦織がブレークチャンスを握りこれをものにする。サウスポーから放つナダルのサーブも悪くないのだが、それ以上に錦織がリターンするコースが厳しく、ナダルはサーブを持っているというアドバンテージをほとんど生かせないという流れに。結局、このあとの第5ゲームでもブレークに成功した錦織が第1セットを6‐2で先取すると、第2セットでも2ブレークに成功し(ナダルにも1度ブレークを許したが)6‐4で勝利。錦織自身「今日は、全部良かったですね。サーブを始めリターンが良かったので、すごく積極的に攻めていけましたし、ストロークではほぼ主導権を握れていました。ナダルが相手だと攻めないと勝てないので、より振り切っていくことができたと思います」とプレーに満足した内容で、これまで唯一倒したことのなかったビッグ4の一角、ナダルから初勝利を挙げた。

こうして第4シードの役割を果たし、準決勝まで駒を進めた錦織。そこで待ち構えていたのは第2シードのマレー。マレーには過去1勝4敗で、直近に戦った5月のマドリード大会(クレー)では敗れている。しかし、今回は錦織が得意とするハードコート。さらにここまで錦織はワシントン優勝、準々決勝ではナダルに初勝利と波に乗っていて、マレー相手でも十分勝機はあると思われていた。

だが結果的に、その連戦が錦織には災いとなってしまう。「試合開始前は大丈夫だったけれど、第1セットが終わった時点で別人のように動けなくなってしまった。疲れがたまっていて100%の力が出せなかった」と錦織。特にセカンドサーブになった時は、マレーの積極的なリターンに苦しめられたこともあり、25本中5ポイントしか獲得できず、第1セットを3-6で落とすと、動きが目に見えて悪くなった第2セットは0-6と一方的に敗退。試合後、「なるべく早く体力を回復して、次のマスターズ1000シンシナティ大会に備えたい」とコメントしていた錦織だが、その後、シンシナティをスキップしてUSオープンに備えることを発表。今回のワシントン大会優勝は休養明け、さらに昨年のUSオープン準優勝も休養明けということを考えると、ここで一度しっかり体をリフレッシュさせてUSオープンに臨むことがベストの選択と言えるだろう。