まさかの1回戦敗退 錦織 圭の挫折

まさかの1回戦敗退 錦織 圭の挫折

まさかの1回戦敗退 錦織 圭の挫折

錦織圭昨年のUSオープン、大会直前に足にできた嚢胞を除去する手術をして抜糸を済ませたばかり。出場するかどうかも迷っていると話していた中での快進撃で、決勝に進んだのが錦織 圭だった。 だが、今年はウィンブルドンで傷めた左脚ふくらはぎの筋膜炎の影響が不安視されてはいたものの、北米シリーズまでには回復。北米ハードコート・シリーズのモントリオールでは初めてナダルに勝ち、好調をアピールしていたのが今年の錦織だった。直前のシンシナティをスキップしたのも、疲労の回復と調整には十分な時間を取って大会に入った。

だが、結果はご存じのとおり1回戦でペールにまさかの敗退。相手のペールはフランスで5番手以下の選手だが、ハマったときの爆発力がツアー有数で、いわば飛び道具のようなプレーヤーでもあった。

ペールはドローが発表された時点では、自分には運がなかったと感じたという。しかし、相手が第4シードで世界4位の前年準優勝者との1回戦という絶望的な状況は、逆に言えば開き直るにも十分すぎる条件で、彼は「別にロジャー・フェデラーと戦うわけではない」と自分に言い聞かせてコートに立ち、自分の最大の武器であるバックハンドを思い切りぶつけるだけのシンプルな戦い方をした。結果としてこれが彼の勝因となった。

試合後の錦織は、相手の攻撃に動揺し、冷静に戦術を組み立てられなかったと話していたが、全仏オープンのツォンガ戦での敗戦も似たような形で冷静さを失っての負けだっただけにその共通点が気になるポイントだ。

錦織圭ナダルに対する勝利や、今季を通じての活躍を見ても、錦織が強くなり、そのテニスの質が上がっているのは間違いないが、できることが増えた分だけショットに迷いが生じているのかもしれず、また、自信が空回りしているのかもしれない。

どんな選手でも、常に順風満帆ということはない。逆に挫折を経てまた成長していく。どんな相手にも油断せず、また、公私ともに自分に妥協することもせず、真っすぐに勝利をつかもうとするのが「チャンピオンの魂」を持つ選手たちの共通項だとすれば、これからの錦織に求められているのは、原点に戻ってコートでただひたすらに勝利を目指す姿勢。

全米の後、彼は自身のブログにヒジの故障で苦しんでいた時期のことを思い出したと書いている。挫折が彼をまた強くする。そんな未来を期待したい。