全仏オープン女子シングルス決勝は、第3シード、25歳のシモナ・ハレプ(ルーマニア)とノーシードの20歳エレーナ・オスタペンコ(ラトビア)というカードになった。いずれも勝てば、グランドスラム初優勝。ハレプは、優勝したら、世界No.1の座も手にする試合だった。
ハレプといえば、168cmと小柄ながら抜群のフットワークを生かし、守備からカウンターを狙うタイプ。一方、今大会の台風の目となったオスタペンコは、すきあらば強打を繰り出すハードヒッター(大会終盤、フォアの平均速度は時速122km。A.マレーの平均[117km]より速いと発表されていた)。言うなれば「守備を軸とするハレプ」と「攻撃を軸とするオスタペンコ」という構図だ。それは両者が使うラケットにも表れている。
ハレプが使用する「BURN 100S CV」は、100平方インチ、300gの黄金スペックに、18×16というスピン・エフェクト・テクノロジーを搭載したモデル。パワーと広いスイートエリア、そして最高のスピン性能を持つため、スピードとスピンを兼ね備えたボールを打つのに最適なラケットである
一方、オスタペンコが使用するのは「BLADE 98(18×20) CV(全仏ではリバースカラーのラケットを使用)」。ボックス形状とラウンド形状を半々に生かしたX-LOOP設計など、しなりとトルネード効果によるたわみ戻しによってショットのエネルギーを生み出すことが特徴。ボールを打ち抜いて、コートにボールを突きさす、そんな打球を放つためのラケットである。
今回の決勝のラリーを見ていると、両者・両ラケットの特徴がハッキリわかるものとなっていた。最大の特徴は、ネット上の通過点。ネット上低いところを通過するフラット系のボールで押しまくるオスタペンコに対して、ハレプは、トップスピンをかけたボールで高い場所を通過していた。それが数字にも表れている。ウィナーの数はオスタペンコ54に対して、ハレプは8。アンフォーストエラーはオスタペンコ54に対してハレプ10。つまり、オスタペンコはリスクを背負って攻め、ハレプは高い安定感で対抗したというわけだ。
第1セットを6-4で奪ったハレプは、第2セットも3-0でリードする。ベースライン際で落ちるハレプのボールに対して、ミスが多くなっていたオスタペンコは、ここで「失うものはないのだから、この瞬間を楽しもう。子供のように楽しむだけ」と思い直したという。すると、ハレプに傾きかけていた流れが一転する。6-4でオスタペンコが第2セットを奪った。第3セット、オスタペンコはベースラインの内側に入り、フォアはもちろん、バックでもドンドン強打を打っていく。ハレプは「何度もボールを見ているだけになってしまった」と語るとおり劣勢に。
最後は、5-3でブレークチャンスを迎えたオスタペンコが、リターンエース。その瞬間、オスタペンコの「夢が現実のものになった」。「彼女の強打は素晴らしかった」、惜しくも準優勝となったハレプは相手をそう称えた。
ハレプとオスタペンコ、両者のライバル対決は今後とも続いていく、そんな予感がする全仏決勝だった。
シモナ・ハレプ選手使用ラケット | エレーナ・オスタペンコ選手使用ラケット |
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