10月2日~8日(本戦)、東京・有明テニスの森にて、今年も楽天ジャパンオープンが開催された。残念なことに、調整中の錦織圭選手は欠場となったが、多くのスタープレイヤーが集結し、素晴らしいプレーを見せてくれた。その中で、ウイルソンチーム勢が大活躍。ダビド・ゴフィンがシングルスで優勝(ATP500では初優勝)、そしてシングルス初勝利を遂げた内山靖崇は、マクラクランと組んだダブルスで快挙と言える優勝を果たした。
"また、来年も東京に戻ってきたい"、昨年の楽天ジャパンオープンでは準優勝。その借りを返すためにも、戻ってくる、という言葉どおり、今年もダビド・ゴフィンが返ってきた。
前週の深圳大会(ATP250)で今季初優勝。その2週前には、ベルギーのNo.1を背負いオーストラリアとのデ杯準決勝に出場し、母国を決勝進出に導いている(前年楽天ジャパンオープン決勝で敗れているキリオスにも勝利するなどシングルスで2勝をあげた)。
"調子の波に乗っている"そんな中で、出場を迎えた。2回戦こそM.エブデンを相手にフルセットとなったが、1回戦のF.ロペス、準々決勝のガスケにストレート勝ちでベスト4に。その準決勝で対戦したのは、売り出し中のシュワルツマンだ。
「お互いに似たタイプだから、いい試合になると思った」とゴフィン。第1セットは、キープ合戦の末にタイブレークでセットを先取。続く第2セットは先にブレークしたものの、再度タイブレークに。「勝てれば、自信になるだろう。だからファイトして頑張った」と語るとおり、そのタイブレークでは、ゴフィンがアグレッシブに攻めて8-5。接戦をストレートで勝利した。特にゴフィンが良かったのはサーブだ。BLADE 98 18X20 CV REVERSEから放たれるボールの威力は、前年のそれより確実に強いもので、シュワルツマンのショットを狂わせた。
決勝はマナリノとの対戦に。「ここに来て上達を見せている。安定感があるし、左利きだから、サーブには特に警戒しなければ。そこで、僕のバックハンド、ダウン・ザ・ラインは武器になると思う」、そう語って決勝に臨んだ。
第1セット、ゴフィンは今大会好調のサーブで主導権を握る。ファーストサーブが入ると実に88%、セカンドサーブでも78%の確率でポイントを奪取。第5ゲームでデュースとなった意外は、良い展開でキープを続けると6-3でセットを先取する。
しかし第2セット、マナリノが切り替えてアグレッシブにプレーし、ブレークされてしまう。「決勝というのは、感情をコントロールするのも簡単なものではない。アグレッシブに行こうと思った」というゴフィンは、ネットに出るなど、攻撃的にプレーをしていくと、すぐブレークバック。そして、この数週間、好調をキープしているゴフィンのテニスの質が最後は上回った。
5-5で迎えた第11ゲームでブレークすると、第12ゲームは15-0、30-0、40-0としてチャンピオンシップポイントを迎えると、最後はセンターへのサーブをマナリノがリターンミス。6-3、7-5でゴフィンが優勝した。意外なことに、ゴフィンにとって初のATP500のタイトルだ。
「ATP500での初優勝だから、とても特別なもの。先週に続いての優勝というのも、意味深い。このトーナメントが大好きだし、昨年、準優勝だったから、優勝できてうれしい」とゴフィン。 「私には、まだ上達の余地がある。アグレッシブなプレー、ボレー、サーブで伸びると思う。もっと努力して、いろいろと改善していきたい」
この優勝で、今年2月以来のトップ10に返り咲き、上位8名だけが出場できる今季最終戦のエントリーランキングでも8位につけたゴフィン。彼のモチベーションは、まだまだ燃え盛っているようだ。
内山が有明で躍動した――。
ワイルドカードで出場した楽天ジャパンオープン。まずはシングルス1回戦で、予選勝者のスクゴルと対戦。途中、足を痛めるヒヤッとしたシーンもあったが、BLADE 98(16×19)を使う内山は、アグレッシブに攻めて6-3、3-6、6-1で勝利した。通算4戦目にして、ATPワールドツアー初勝利だ。「毎年チャンスを頂いて、全然勝ててなかった。その中で今年もワイルドカード頂いて、このチャンスを活かせたのは一つ恩返しができたかなと思います」と喜んだ内山。続く2回戦チリッチに挑んだものの、3-6、4-6で惜敗。それでも、何度となくいいプレーも見せて、会場を沸かせた。
(シングルス1回戦後)「勝てて本当にうれしい。強かったが、思ったより戦えたなという気持ちもある。(この経験を)次に生かしたい」と内山。この初勝利で得た自信がダブルスでも生きることとなる。
同じくワイルドカードで出場したダブルス。パートナーは、張家港市チャレンジャー、デ杯ブラジル戦で共に戦ったマクラクラン勉だ(6月にニュージーランド登録→日本登録に変更。2010年全仏ジュニアでダブルスを組んだ過去がある)。チームを組んで3大会目(デ杯含む)、初のATPワールドツアー...その結末を予想していた人は、恐らく皆無だっただろう。
初戦のヒューイ/シャマスディンにスーパータイブレークで勝利した両者は、これで流れを掴む。〝デ杯期間中にじっくり練習できたことが大きい〟(内山)という2人は、準々決勝でUSオープン覇者のロジェール/テカウに、準決勝のゴンザレス/ペラレルタをストレートで退ける。決勝の相手は、マレー/ソアレス。グランドスラム2冠のダブルスを代表するペアだ。
「僕らはチャレンジャー。自分たちのゲームをやるだけ」と内山が語れば、「ソアレスとはデ杯で負けている。悔しいから勝ちたい」とマクラクラン。彼らは決勝で最高のプレーを見せる。
第1セット第1ゲームで、内山がスマッシュを決めて、まずキープ。すると、続くゲームでマクラクランがフェンスに激突するアクシデントも。しかし、その必死さが観客の応援に火を点けたことはまちがいない。1ブレークずつで迎えた第9ゲーム、内山/マクラクランペアは0-40と3本のブレークポイントを握る。2本返されたが、最後はマレーがダブルフォルトを犯して第1セットを先取した。
今大会中、内山は"シングルスのプレーが生きる"と語っている。それが現れたのが第2セットだ。第3ゲーム、ディサイディングポイントで、ファーストサーブをセンターに打ちこんでキープすると、第7ゲーム40-30でもサービスエース。加えて、タイブレーク1-0の局面ではリターンエースと要所で好プレーを見せていた。「シングルスで1回勝てたことで、ダブルスでものびのびとプレーができた」、シングルスの結果が内山に自信を与えていたわけだ。そしてパートナーのマクラクランは、ダブルス選手らしく小技も使った巧さを要所で披露。
「終盤、相手ペアにプレッシャーがかかっているのがわかった」という内山ペア。試合を重ねるごとに、よくなっていったコンビネーションで流れを引き寄せ、第2セットのタイブレークを7-1で奪って勝利。なんと、わずか3大会目でATP500のタイトルを制した。ジャパンオープンでの日本人ペアとしては、2005年の鈴木貴男・岩渕 聡ペア以来、12年ぶりという快挙。
「実感が湧かない。ただ、いいプレーができれば、どのペアと戦っても勝てるということがわかった」(内山)と自信を深めた両者の今後の予定は未定だという。ここで得た自信は、今後に生きるだろう。シングルスでの大躍進も期待できるはずだ。