PRO STAFFの系譜は、最強プレイヤーの歴史である。
ジミー・コナーズ、ジム・クーリエ、ステファン・エドバーグ、ピート・サンプラス、そしてロジャー・フェデラー...歴代使用者の名前を見れば、それは一目瞭然だ。ウイルソンにとっても「PRO STAFF」は、特別なラケットである。だからこそ、契約選手であっても、誰もが使えるというものではない。ウイルソンが"納得したプレイヤー"のみが使える――それだけ大切なラケットなのだ。
若くして、そのラケットの使用を認められ、2017年シーズン、ランキングを一気に119位(156位→37位 ※最高35位)も上げた、まだ20歳のプレイヤーがいる。それが"アンドレイ・ルブレフ"だ。
彼は2017年、アンディ・ロディック以来となる20歳でのUSオープンベスト8入りを果たし、初タイトルとなるウマグでのシングルス優勝。ディミトロフ、ゴフィン、ベルディッチ、ソックといったトップ・プレイヤーにも勝利している。世界No.1のナダルをして、「まちがいなく、次世代のテニス界を担う一人だろう。彼には素晴らしい未来が待っている」と言わしめる選手である。それだけの活躍をしたのだから、「グレートなシーズンだった」と本人が語るのも納得だ。
それらは、すべて「PRO STAFF 97」を相棒に戦ってきた成果だ。どんなストリングを張っているのか? 実はルキシロンのポリエステル・ストリング「アドレナリン(ADRENALINE 125)」を張っているのだ。驚いた人もいるかもしれない。同モデルは、ルキシロンのストリングの中でも"入門モデル"に位置づけられるものなのだ。ただ、だからといって性能が低いというわけではないことはルブレフが使っていることでもわかる。どこを気に入っているのか? それは、振った分しっかりパワーを与えてくれるという点が大きいはずだ。同モデルは、スイングの速い人がより長所を引き出せるストリングである。振った分だけ、しっかり飛んでいき、スピンもしっかり加えられる。それは、PRO STAFFの特徴にも通じるものだ。一見、彼は体が引きちぎれんばかりにスイングしているように見える。だが、大事にしているのはコントロール。「WILSON PRO STAFF 97」 ×「LUXILON ADRENALINE」という組み合わせにすることで、それを高めているわけだ。
一部では、フェデラーとの比較もされるルブレフ。バックハンドは片手打ちと両手打ちとの違いはあるが、共通点もある。フェデラーといえば、華麗なプレーが際立つが、そのフットワークもツアーNo.1の存在。頭の位置が終始ブレないことで有名だ。実は、ルブレフにも同様の特徴がある。コートエンドから見るとわかりやすいが、彼はフェデラーを彷彿とさせるほど頭の上下動が少ないのだ。より良いポジションに動いて、しっかりインパクトし、正しいコースへ打つというのが、彼のテニスなのだ。相手の逆を突くショットが多いのも納得である。
初出場となったNEXT GEN ATPファイナルズは決勝に進出し、準優勝という結果に終わったが、彼にとって大きな成果であるとともに、悔しさをかみしめるものでもあったようだ。
「(自分のプレーに)変化を加えなければならないとハッキリわかった大会だった。そのために、全力を尽くしたい。シーズンのはじめと今を比べたら、大幅に進歩したことはまちがいない。特にメンタル面では成長できたと思う。感情をコントロールできるようになった。ただ、十分いいプレイヤーになったかといったら、まったく違う。いい大会もあるが、アップ・ダウンがまだある。一貫性がもっと必要だ。体がより強くなって、もっと速くフットワークが使えれば、もっといい戦いができるはずだ。明日からプレシーズンが始まる。来シーズンにそなえて、可能なかぎり追い込んでいく」。
なんと楽しみな言葉だろうか。本人も語っているとおり、メンタル面での成長は今季の成績につながったことはまちがいないだろう。
もう一つご紹介したいのが、彼の負けず嫌いな一面である。USオープンでは1歳年上のカレン・カチャノフと常に練習し、さまざまな形で打ち合いを行っていた。次の内容へと切り替える最後のプレーで、カチャノフに決められたり、自分がミスをしたりすると、ルブレフは自分が決めるまでやり直すのだ。「負けず嫌い」であることは、トップ・プレイヤーに必須なメンタルだ。
2018年、アンドレイ・ルブレフは、「WILSON PRO STAFF 97」 ×「LUXILON ADRENALINE」を武器に、驚くような結果を導き出すに違いない。これまで以上に注目すべき存在となるだろう。
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