小学6年時に、全国選抜ジュニアU12、全国小学生、全日本ジュニアU12で3冠を達成し、アメリカ・フロリダのIMGアカデミーに留学した内山靖崇。このジュニア時代の戦績、アメリカへのテニス留学は錦織 圭とまったく同じだが、違っているのは、そのプレースタイル。錦織がボールにさまざまなスピン回転をかけコートを広く使うクリエイティブなスタイルなのに対し、内山は強烈なサーブを打ち込み、返ったボールをフォアで打ち込むパワフルタイプ。このスタイルは小学生時代から得意としており、それには内山の体格、そして気性が大いに反映されている。内山自身も自分のスタイルについて「小学校6年のときには身長が170cmあり、他の選手より背が大きくパワーで圧倒することができました。サーブは北海道のころから得意でした(北海道出身)。北海道ではインドアでテニスをすることが多く、速いサーフェスだといいサーブを持っていると有利なので、サーブ練習をたくさんしました。またテニスを本格的に始める前はスキーをしていて、急斜面でも思い切って攻めるのが好きだったので、テニスでもサーブから攻撃して、フォアでも攻撃していくというスタイルが僕には向いていたのだと思います」とコメントしている。
この内山、IMGアカデミーの「常にテニスができる、競争が激しい環境」(内山談)でもまれることで自分の長所を着実に伸ばし、アメリカへのテニス留学後のジュニア時代、錦織に負けないぐらいの戦績を残している。まず、09年にはオーストラリアンオープン・ジュニアのダブルスで準優勝。そして10年には、フレンチオープン・ジュニアとUSオープン・ジュニアのシングルスでベスト16をマークし、グランドスラム・ジュニアと同じグレードの大阪スーパージュニアでは単複で優勝(日本人2人目の快挙)。さらに、つくばフューチャーズでも優勝。特に、プロの試合であるつくばフューチャーズで優勝したことは、自信になったようで、「プロでやっていけるかどうかというときに勝てたので、この優勝で『大丈夫だ』と少し思いました」と語っている。
その内山は4月1日にプロに転向し、ラケットはウイルソンのTOUR BLX 95を使用。もともと他メーカーのラケットを使っていた内山だが、オーストラリアンオープン・ジュニアで優勝したことでウイルソンの海外担当の目にとまり、試打を開始したところ「最初に2~3球打った瞬間に、『これはヤバイ。これまでのラケットと違う』とハマってしまいました。打った感触がよすぎるんです。一番いいのは、すごくボールが飛ぶこと。単にパワーがあってボールが飛ぶだけではなく、スピンをかけるための軌道の高さが一瞬で出ます。それまでネットにかかっていたボールが、このラケットを使うとネットを越えて、それでいていいボールになる。操作性がいいことも、すぐに気に入った理由です」とTOUR BLX 95にほれてしまったのだ。
そして、そのTOUR BLX 95に張るストリングは、縦アルパワー×横ナチュラル。「これは、ラケットを振り回して、しっかりボールを叩ける組合せだと思います。サーブだけを考えるとナチュラルを縦コーデイネイトにしたほうがすごいボールを打てますが、ストロークでは逆にパワーが出すぎてアウトします。試合全体を通じてうまくコーディネートするには、僕には縦アルパワー、横ナチュラルが合っていると思います。テンションは、縦が54ポンドで横が52ポンドです」(内山談)。
この内山、「中学生でアメリカに行ったときから、『将来はテニスのプロになろう』と決めていました。『プロになれないわけはないし、なれなかったら僕の人生は終わってしまう』という覚悟でテニスに取り組んできました」という強い決意が実り、プロへの第一歩をスタートした。「理想は、来年のオーストラリアンオープン予選に出れるくらいランキングを上げること。そのためにはランキングで300位以内に入らなければればチャンスはないと思いますが、不可能ではないと思います」という目標を達成することができるのだろうか。錦織 圭や伊藤竜馬に続き、また一人、その成長を見守り続けたい期待の若手選手が船出をした。
内山靖崇選手使用ラケット
内山靖崇選手使用ストリング
アルパワー最高級品質ナチュラル
使用選手: ロジャー・フェデラー、錦織 圭、セレナ・ウィリアムズ、ヴィーナス・ウィリアムズ