オールラウンドに速いテンポで攻撃していくのが持ち味のロジャー・フェデラー。ストロークからの展開力で、自分より体格&パワーで上回っている海外選手からポイントを奪っていく錦織 圭。一見すると、この2人のプレースタイルには大きな違いがある。しかし、実際に2人からラケットに求めるものをヒアリングすると、「一番大切なのはフィーリング」という共通した答えが返ってくる。
そもそも、フェデラーが使用していた前モデルSIX.ONE TOUR BLX 90は、「テニスの全てをコントロールしたい」というフェデラーの要求に応えるため、衝撃・振動をスムーズにする、遮音性が高い、軽量で剛性が高いという特徴を持つ新素材バサルト・ファイバーをフレームに採用した画期的なモデル。そのバサルト・ファイバーは錦織が使うTOUR BLX 95など他のウイルソンラケットにも採用され、それぞれのモデルはラケットとして高い次元で完成されたものであった。しかし人間は、良いものを知るとさらに良いものを求めるもの。
以前、「良いフィーリングのラケットがほしい」と言っていたフェデラーは、今回も「もっと良いフィーリングのものを」とウイルソンにリクエストしてきたのだ。このリクエストは錦織も同じで「インパクト時のフィーリングがいいものを」と、フェデラーと同じようなことを同じ時期にウイルソンに伝えていた。
それに応えるためウイルソンが出した答えが、グリップ部にもバサルト・ファイバーを装着する『アンプリ・フィール・テクノロジー』と、フレーム全体に使用するバサルト・ファイバーの割合を増やすという2つの方法。
この異なる2つのアプローチのモデルをフェデラーと錦織に提案したところ、フェデラーは『アンプリ・フィール・テクノロジー』を採用したもの、錦織はフレーム全体のバサルトファイバーの割合を増やしたものが気に入ったのだ。
結果的にはどちらも“フィーリングがよくなっている”のだが、フィーリングにこだわる2人の選手に違いが出たのは面白い現象だ。
『アンプリ・フィール・テクノロジー』
これまでラケットに新素材をもたらしてきたウイルソンは、現在、極上のフィーリングをもたらしてくれるバサルト・ファイバーをフレームに使用している。
バサルト・ファイバーには
① 衝撃・振動をスムーズにする
② 遮音性が高い
③ 軽量で剛性が高い
という特徴があるのだが、今回は、そのバサルト・ファイバーをグリップ部にも装着。これによりBetterFEELをよりAmplify(増幅)させたラケットとなっている。
これはフェデラーと錦織のグリップの握りの違いによるものと推測することができる。フェデラーは錦織に比べると握りが少し薄く、その中で多彩なテクニックを駆使してボールを打っていく。
これに対し錦織は厚いグリップでスピン回転を調整し、ストロークを組み立てていく。フェデラーがラケット全体の動きでボールをコントロールしていく時のフィーリングを大切にしているのに対し、錦織はラケットヘッドを振り抜いた時のフィーリングのよさを基準にしているのだろう。その違いが、グリップに『アンプリ・フィール・テクノロジー』を入れて全体的なバランスをとったモデルをフェデラーが、フレームのバサルト・ファイバー使用量を増やすことで衝撃・振動がよりスムーズになったモデルを錦織が選んだことにつながっていると考えると分かりやすい。
もし、あなたがPRO STAFF SIX.ONEファミリーかSTEAMファミリーかで悩んでいるのならば、フェデラーと錦織のどちらのグリップの握りに近いか、どちらのプレースタイルに近いかも判断基準としてほしい。そうすれば、より細かいテクニックを使った時にフィーリングのよさが感じられるだろう。
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