オゾン層破壊による紫外線増加、急激な温暖化による気象問題、森林減少、ごみ問題...、世界の現実に目を向けると改善できていない環境問題が数多くある。
国連気候行動サミットで、グレタさんの口から語られた大人への抗議が世界的ニュースとなったことは記憶に新しい。読者の中には、すでに環境を考え、ゴミの分別、さまざまなムダの排除など、できることをやっているという人も数多いだろう。
それでは、テニス界の現状はどうなのか?
大きく進んでいないことは確かである。中でも「ボール」は実に難しい問題だ。なんと全世界で年間1億2500万缶、4億球が廃棄されているのだという。プラスチックゴム量にして、なんと8,900万ポンド(約4万トン)。テニスボールが直接というわけではないが、プラスチックについては、海に流出したものを誤って食べた海洋生物を経て、知らずの内に人間が体内に取り入れてしまっていることも報告されている。もはや無視し続けることはできない “不都合な真実”。あるコーヒーチェーン、ファーストフードショップはプラ性ストローを廃止するなど、すでにその動きは出はじめている。そして、ウイルソンも環境問題に向けて動き出していた。 “#地球環境を考えるボール”――『TRINITI<トリニティ>』がついに完成し、11月15日、発表となるのだ。
一般的に使用されるプレッシャーボールは、ボール内の空気圧+ゴムによって弾む仕組みとなっている。ボールの空気圧を保つため、缶の中は1気圧以上に保たれているわけだ。それが“プシュッ”と開けた瞬間から内圧は落ちていき、最終的には打っても飛ばない“エア抜け”となる。従来は、気圧を保つためにどうしても缶やペット缶が不可欠だったわけだが、ウイルソンは今回、それが不要となるボールを開発。“再生木材”による紙パックに収めて販売することでプラスチックを削減できるようにしたわけだ。ノンプレッシャーボールではなく『プレッシャーボール』であることが重要なポイント。空気圧をキープできない紙パックでも、内圧をキープできるボールだということだ。そのクオリティが心配になるかもしれないが、従来のテニスボールより4倍長持ちする作りとなっているというから、心配ご無用だ。
冒頭で紹介したグレタさんは「状況を本当に理解しているのに、行動を起こしていないのならば、あなた方は邪悪そのものです」とも批判している。そのとおり。ウイルソンとしても、即座に缶入りのプレッシャーボールを終わらすことはできない。実は、今年のUSオープンやレイバーカップでは、①ストリングの袋を廃止 ②ラケット用ポリ袋を廃止 ③練習球の缶をキャップレスにするなどの活動も行っているのだが、それだけで、立ち止まっているわけにはいかない。小さなことからでも、手をつけなければ...。その想いが『TRINITI』となったのだ。
このウイルソンの動きに対し、プレーヤーも応援の声を発している。
「万が一、別の惑星でも見つけることが出来ない限り、当面の間我々の住む惑星はたった1つだ。全ての生命体にとって、我々人間にとって、そして次世代にとって大切な地球を守っていかなければならないと思う」
――ロジャー・フェデラー
「より良い住みやすい地球のために、我々は小さな事からでも少しずつ出来ることを積み重ねていくべきだと感じています。TRINITIというボールをウイルソンが開発したのは素晴らしい事だと思います。地球環境に対してより良く行動出来るという事を示してくれるボールだからね。僕はとても気に入っているよ」
――ガエル・モンフィス
「私たちが住んでいるこの地球に対してやさしくしないといけないと思います。そのために、私自身も出来る限りリサイクルをしたり、カーシェアをしたり、二酸化炭素の排出量を出来るだけ減らせるように日々小さな事から心がけていますよ。ウイルソンがしているこういった取り組みはとても重要な事ですし、正しい1歩だと思います」
――マディソン・キーズ
多くのテニスブランドに先んじて行動を起こしたウイルソン。この『TRINITI』を使用すること、応援すること。それは、テニスを愛するあなたが“地球を守る行動”を取ることと同じ意味合いを持つことになる。LITTLE THINGS, BIG IMPACT<小さなこと、それが大きな影響を与える>、今がその小さなことを為すべき時である。
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