テニスは、初級から中級、上級とレベルが上がるにつれて一般的にスイングスピードも速くなっていくものだが、それとともにラケットに求める性能も変化してくる。というのも、≪いつもスイートスポットに当てて滑らかにスイングする≫ということができない初級や中級レベルでは、『フェイス面が大きくてスイートスポットが大きい』『軽く振れる』『少し外れたところで打ってもしっかりボールが飛ぶ』『簡単にスピンがかかる』という性能を持ったラケットを選ぶと技術が習得しやすく楽しくテニスができるのだが、スイングスピードが速い中上級~上級者になってくると『ラケットがパワーサポートしてくれる』という性能は、かえってボールの飛びすぎを招くことになる。ボールの飛びやスピードは自分のスイングの速さで作り出せるため、どちらかというとコントロールを重視したモデルのラケットを選ぶようになるのだ。
そうしてラケットにコントロールの良さを求める際、大きく関わってくるのが≪球持ちの良さ=ラケット面のフレームの柔らかさ≫だ。ウイルソンのラケットの中では、これまでPRO STAFFシリーズとBLADEシリーズがその両翼を担っていたのだが、実はフェデラーが使うPRO STAFFシリーズは10月にリニューアルされた際、これまでのものよりパワーのあるモデルとして生まれ変わっている。これに対し、来年1月にリニューアルされるBLADEシリーズは、従来BLADEより≪さらにしなる≫ものになっているのが特徴だ。
そうした味付けになったのは、ラオニッチのリクエストを受けたことが大きい。ファーストサーブが入ったときのポイント獲得率が83%(ATPランキング2位)なのに対しセカンドサーブでは55%(同15位)と極端に低くなるラオニッチは、ストローク戦でのコントロール力を上げてより優位に展開するため「もっとインパクト時にボールがストリングに食いついている時間を長くしたラケットにしてほしい」とウイルソンに要求したのだ。彼が得意とする回り込みフォアからの逆クロスとダウン・ザ・ラインへの打ち分けの精度をもっと高くするのが狙いだろう。
そして、それを受けて開発されたのがニューBLADE。これまで以上のホールド感を出すため、素材を編み込む目を粗くしてフレームがよりしなるセッティングとなっている。だが単にブレードの編み込みを粗くしただけでは素材にかかる負荷が大きくなり、フレームの亀裂や破損の原因になってしまう。そこで用いたのが、軽量で安定性能が高いウイルソン独自の素材バサルト・ファイバーの配合比を高めるという手法。これにより≪強靭でありつつもしなる≫というムチのようなフレームを作ることが可能になったのだ。さらに、このバサルト・ファイバーを使ったしなる素材をフレーム全面に入れることで生まれる最大のメリットは、インパクト時にフェイス面が内側にたわみやすくなったこと。大げさに例えると、網で包み込むようなイメージでボールを捕らえることになるので球持ち感が格段にアップ=コントロール性がさらにアップするようになったのだ。
また、新BLADEではスイートスポットが上方向に広がるパラレルドリルを採用。フェイス面の上で打つサーブの威力が上がるだけでなく、ぎりぎりで届いたボールでも相手コートに返球できる可能性が高くなるなど、より試合志向のプレーヤーが好む仕上がりとなっている。ちなみに、今回の新BLADEには3つのモデルがあり、ストリングパターンが18×20のものはラオニッチ、ゴフィン、モンフィスなどが使用、ストリングパターンが16×19のモデルは内山康崇、江原弘泰が使用する予定だ。また、ストリングパターンが18×16のSラケバージョンは回転がかけやすく、軽量で楽にボールが飛ぶモデル。『しなりがあってボールも飛ばしたい』という方のためにラインナップされることとなった。
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