3時間58分―― 錦織 圭がアンディ・マレーを倒した2015 USオープン準々決勝の試合時間である。鉄壁の守備と強烈な切り替えしを得意とするマレーから、ポイントを奪うのは困難なこと。だからこそ、1ポイント毎が長く、タフものになる。その間、ストップ&ダッシュを繰り返し、何度も何度もボールを打つ。それが体力を奪っていた。2日後、行われた準決勝では、1試合を戦い抜く体力を持ち合わせていなかった。190cm台がザラにいる男子ツアー界で、錦織の178cmはさまざまな点で不利となる。まして、長い試合となれば、爪あとは大きくなる。しかし、そこを乗り越えなくては大きな目標を成し遂げることはできない。
2013年、錦織とウイルソンは、新モデル開発のためのヒアリングを実施した。そこで錦織がリクエストしたのが"スピード"。2015・2016年使用モデル「BURN 95」には、それが反映されている。しかし、そのヒヤリングで錦織は、もう一つ要望を出していた。「ファイナルセットになってもパワーが落ちないラケットなんて無いですよね?(笑)」、錦織にとっても夢のようなことができたらいいな、くらいの冗談だったはず。プレーしても疲れないラケット、それは物理的には不可能な話。しかし、聞き流してもおかしくない、その言葉をウイルソンは心に留め、実現の方法を模索していたのだった。
その結晶が、2016年12月29日(錦織選手の誕生日)に発売となる「BURN 95 CV」である。
【疲れない!!】と謳うには理由がある。ラケット名(CV)にもある新素材"カウンターベイル"を使用しているからだ。同素材は衝撃吸収性の高さが特徴。従来のカーボンとの比較で、約130%もの衝撃を減衰させるという実験結果も出ている。最新の研究では、衝撃・振動こそが筋肉疲労の原因であることが明らかとなっている。つまり、カウンターベイルが衝撃を吸収することで、筋肉の疲労が軽減されるということなのである(筋肉の働きを図る筋電図を付けての試打実験で、上腕二頭筋、上腕三頭筋、手関節屈筋群[前腕]が14.5%休んでいるという結果も出ている)。
もちろん、完全に疲れないラケットではない(もし、あるとしたら魔法だ ※ウイルソン未開発)。しかし、何分の一でも疲労が軽減されるなら、フルセットにもつれるような接戦では、特にメリットになる。"相手は疲れているのに、自分は元気なまま"というシチュエーションが実現するのだ。だからこそ、その使用を錦織も楽しみにしている。
「(使用が)待ち遠しいですね。ニューデザインはシンプルでかっこよくなっている。加えて、カウンターベイルという新しい素材。良いラケットになっていると思います。体への負担がなるべくないラケットは、昔から欲しかったもの。少しでも体力、筋力への負担が少ないラケットなら、長い試合の時に心強いラケットになると思います」と錦織(11月24日の記者会見より)。
先のUSオープンで、もし、新モデルを使っていたら、どんな結末を迎えたのだろうか?
想像しただけでも、ワクワクしてしまうし、期待も高まっていく。
"錦織が使う"「BURN 95 CV」をトップモデルとする22mmフラットビームの新BURNシリーズには、全3モデルがある。「BURN 95 CV」は、トップスペックを搭載した上級者にこそふさわしいモデル。続くは"錦織を作った"「BURN 95J CV」。錦織がジュニア時代からプロ初期まで使い続けた通称"錦織スペック"(289gの重量+34.0cmのバランスポイント+95平方インチ)で形作られている。上級者には及ばない、そんなプレーヤーには特にパワー面でのアシストをしてくれるはず。両モデルには、「カウンターベイル」が搭載されている。そして、未来のKeiを目指すプレーヤーにはこちら。次の錦織 圭を作る「BURN 100 TEAM」である。カウンターベイルは搭載していないものの、フェースの6時方向にはラバー製のグロメットを採用しているため、衝撃吸収性は申し分ない。267gと軽量で取り回しがよく、パワー面のアシストは最大。これなら、初心者、中級者になったばかりのプレーヤーでも、上級者と打ち合える可能性が高まる。
いずれのモデルも、前作同様にパワーとスピン性能は折り紙付き。錦織が打っている、ネット上高くを通過し、ベースライン際で急激に落下するようなボールを打つことも夢ではないはずだ。持ち前の特長をキープしつつ、「疲れにくい」という、大きなポイントが加わったBURNフラットビーム・シリーズ。このモデルを使うことで、アナタに大きなプラスをもたらすことになるはずだ。
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