テニスの魅力とは何か。あまたあるが、その内の一つが『単にパワーがあればいいものではない』ということだろう。速いショットは誰もが打ちたい。だが、時速150キロのショットを打てたとしても、コートに入らなければ意味がない。
コートの中に収めるために、不可欠となるのは「スピン<回転>」である。
順回転がかかると、ボール上部の空気抵抗が大きくなる。逆に下部の抵抗は小さくなり、ボールが下に引っ張られるマグヌス効果という物理現象が発生。ボールがコートの中に落ちやすくなるわけだ。
しかし、ただ入れるだけでは、意味がない。 <より攻撃的なボールを打つ>ということを考えるなら、より球速が速く、より回転がかかったボールがベスト。球速と回転は反比例するものと思われがちだが、ラケットの性能、相性によっては、どちらの値も上昇することがある。スピンを特徴とするラケット、ウイルソンで言うならば代表格は、『BURN 100S CV』である。同モデルは、ウイルソンの特許技術「スピン・エフェクト・テクノロジー」を搭載したラケットだ。スピンの発生メカニズムである“スナップバック現象(打球時にストリングがズレて戻る。そのズレ幅、戻る速度でスピン量は決まる)”を発生させる同テクノロジーは、同社がスピンを最も効率的に発生させる機能として特許を得て採用したものだ。そのほか各ブランドに、スピン性能を特徴とするモデルが存在する。
それでは「スピン性能で最も優れているのは一体どのラケットなのか?」。 皆さんの疑問を晴らすべく、今回は、弾道測定機トラックマンを使っての『スピン・ラケットNo.1決定戦』を実施した。
実験にあたり、公平を期するため、今回は早稲田大学庭球部から古賀さん、清水さん、大学体育会出身30代男性2人、そして編集部(広)が参加し、突発的に生まれる高数値・低数値を除き、アベレージ(平均値)で判断をした。上級者・初級者による回転数、球速がアップするモデルはどれか!?を決めようという実験を試みた。
いつわりのない実験結果が、以下の表である。
テスター | 清水 | 古賀 | テスターA | テスターB | 編集部(広) | アベレージ | ||
A社 ●ブラック×イエローのスピン強化モデル |
回転数(rpm) | ①1446 | ⑤1584 | ④1397 | ②1425 | ⑤815 | ④ | 1333.4 |
球速(km/h) | ③133.7 | ③131.3 | ⑤112.5 | ④121.4 | ③102.3 | ④ | 120.2 | |
B社 ●シャフト部の形状が特徴的なモデル |
回転数(rpm) | ⑤1157 | ①2120 | ③1596 | ⑤1349 | ③996 | ③ | 1443.6 |
球速(km/h) | ①143.2 | ②131.9 | ④113.9 | ①127.5 | ④100.6 | ② | 123.4 | |
C社 ●蛍光色が特徴的なスピン特化モデル |
回転数(rpm) | ③1324 | ③1829 | ②1649 | ②1649 | ①1231 | ② | 1485.8 |
球速(km/h) | ⑤128.7 | ⑤128.7 | ⑤128.7 | ②123.4 | ⑤94.7 | ⑤ | 119.1 | |
D社 ●空気抵抗の少なさが売りのスピンモデル |
回転数(rpm) | ④1202 | ④1777 | ⑤1352 | ④1360 | ④929 | ⑤ | 1324.0 |
球速(km/h) | ④131.0 | ④130.1 | ②122.7 | ③123.7 | ①108.1 | ③ | 123.1 | |
BURN 100S CV | 回転数(rpm) | ②1338 | ②1980 | ①1805 | ①1859 | ②1135 | ① | 1623.4 |
球速(km/h) | ②141.1 | ①139.4 | ①125.3 | ⑤121.1 | ②105.1 | ① | 126.4 |
平均回転数(rpm) | 平均球速(km/h) | |||
1位 | BURN 100S CV | 1623.4 | BURN 100S CV | 126.4 |
2位 | C社 | 1485.8 | B社 | 123.4 |
3位 | B社 | 1443.6 | D社 | 123.1 |
4位 | A社 | 1333.4 | A社 | 120.2 |
5位 | D社 | 1324.0 | C社 | 119.1 |
ノーマル・ベンディング(硬さ) ※数値が低いほうが硬い | トルショナル・スタビリティ (捻じれに対する強さ。安定性) ※数値が低いほうが、ねじれに強い |
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BURN 100S CV | 4.5 | 2.4 |
A社ラケット | 5.8 | 4.5 |
B社ラケット | 5.4 | 4.6 |
C社ラケット | 7.2 | 6.0 |
D社ラケット | 6.3 | 4.5 |
結果、回転数、球速ともに、平均でNo.1となったのはウイルソンの「BURN 100S CV」だった。回転数では、2位C社(1485.8)に137.6差というぶっちぎりの数値だ。
トラックマンの数値は、技術レベル、スイング速度、スイングタイプによって、数値は変化するもの。そのため、ご覧のとおり、それぞれスピン、スピードの順位は、各々異なっているが、全テスターがBURN 100S CVで回転数、球速ともに、1位か2位の数値をはじき出していることは特筆すべきことと言える。
なぜ、これほどの結果となったのか?
その要因の一つと考えるのが①ノーマル・ベンディング(硬さ)②トルショナル・スタビリティの数値である。「■硬さ、ねじれに対する安定性数値」の表をご覧いただきたい。「BURN 100S CV」は、ノーマル・ベンディングが4.5(一番硬く曲がりにくい)、トルショナル・スタビリティが2.4(最もねじれに強い)となっている。これは、最もボールをしっかり受け止め、面ブレを起こさないということ。加えて「スピン・エフェクト・テクノロジー」が、効力を発揮したということなのだろう。
スピンNo.1ラケットは「BURN 100S CV」。このラケットこそが、最も鋭いスピンがかかり、最も球速も出せるのだ。
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