現在、市場を見渡してみると、いわゆる「簡単ラケット」と言われるフェース面積が大きく、軽いラケットが数多く発売されている。しかし、意外に軽視されがちなのが「実際の使い心地」だ。単に軽ければいいわけではなく、ボールの飛び、パワー、操作性の良さ、快適な打球感…と選択の幅が欲しいのがプレーヤーの本音だ。
また、大きなフェース面を持つ厚ラケの需要は今も根強く、以前のモデルを長年愛用しているプレーヤーも多いが、素材とそのアレンジによる進化は速いスピードで進んでいる。特にこの種のモデルでは最新の素材やアイデアが惜しみなく投入されるため、旧機種と新機種では文字通りの世代差が存在する。例えば、前モデルよりフェース面が小さくても、実はパワーでは最新モデルのほうが上で、コントロール性も快適性も確実に向上していることもある。
そうした声に応えてウイルソンからリリースされたのが、「コンフォート&パワー」というカテゴリーの4本、「ONE 118」「TWO 110」「THREE 117」「FIVE.TWO 105」のシリーズ。ウイルソンのラケットはモデルのナンバリングで大まかなパワーレベルが分けられていて、数字が小さいモデルほどパワフルな特性が与えられている。そして、この4モデルは「比較的小さい、ゆっくりとしたスイングタイプ。大きなパワーと大きなスイートスポットを好むダブルス中心のプレーヤー向き」という共通したターゲットがあるのだが、それぞれの特性を細かく見ると、そこには明確な味付けの違いが加えられている。
まず「ONE 118」は、シリーズ中最大のフェース面積(118平方インチ)を持ち、フレーム厚28mmのパワーが強調されたモデル。スイングが小さく、タッチの感覚でボールを操作しながらリターンを深く入れ、ボレーで勝負するというダブルスプレーヤーに最適なスペックが与えられている。
次に「TWO 110」の場合、注目すべきはそのウエイト。250gを大きく切った223gは近年のモデルでは存在しないレベルの超軽量。そのぶんバランスがトップに寄っているため、相手のボールに打ち負けず、軽さのメリットだけを生かせるようにセッティングされたモデルだ。
そして「THREE 117」は、海外モデルでは260gなのだが、日本向けのモデルの設定は279g。この重量増分は全て衝撃吸収性の機能向上のために費やされている「超衝撃吸収タイプ」モデルだ。ウイルソンの誇る「トライアド」構造に加え、手に伝わる衝撃を止めるための「ショックシールドシリーズ」のグリップテープ(元グリップ)、振動止め、オーバーグリップテープの3点セットが標準装備とされている。ヒジに不安を抱えるプレーヤーでも、安心してプレーを楽しみたい。そんな声に応えたモデルに仕上がっている。
最後に「FIVE.TWO 105」は、パワーと操作性の両者をバランスよく共存させたモデルで、競技系のモデルはもう厳しいとなってきたベテランや、レジャー志向のスクールプレーヤーの最初の1本として、あるいはパワーとコントロールの両方が欲しいという実戦派のためのモデル。日本人プレーヤーにとって最も扱いやすいバランスとされ、長時間プレーしても疲れが出にくいよう、「トライアド」構造を始めとした高い衝撃吸収性も兼ね備えた実用性に特化した設定になっている。
この4本は、前述のようにどれを選んでも必要なパワーは十分にあるが、それぞれに上記のような個性があり、その特性を求めるプレーヤーにとっては最適なテニス環境が提供される。衝撃吸収性が高いと言っても、必要な打感までが消えてしまうような無打感の味付けではなく、ボールの感覚をしっかりと伝えるバサルト・ファイバーを採用し、快適な打ち味は楽しめる。また、ストリングの可動域を確保するダブルホールの採用で、パワーがあってもただ弾きがいいだけのラケットではなく、しっかりとボールを捕らえつつ、面でボールをコントロールしながら鋭く打ち返すという感覚を味わえる設定となっているのは、テニスの本質を理解したブランドならではの絶妙な味付けと言っていいだろう。
ONE 118
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TWO 110
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THREE 117
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FIVE.TWO 105
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