今や、その一挙手一投足が注目を集め、試合の結果が常にニュースで取り上げられほど日本を代表するアスリートになった錦織 圭。単に強いだけでなく、クリエイティブな配球で最終的にポイントまで結び付けるテニススタイルは見ていて楽しいのも人気の秘密だが、そうした繊細なプレーをする錦織だからこそ、使うラケットにも独自のこだわりがある。例えば、グリップの長さが通常よりも(上に)長いのを使っているのは「リターンなどとっさにグリップを握った時に、左手がフレームに当たるのがイヤ」(錦織)だから。また試合中もストリングの張り替えを出すなど、プレー同様、微妙な違いを感じ取る能力を持っている。
そんな錦織が「ウイルソン以外のメーカーもいろいろと試しましたが、どうしてもフィーリングが合わなくて...。ボクは日本製のPRO OVERGRIPしか使えません。抜群の感覚です」と絶賛するのがウイルソンのプロオーバーグリップだ。『日本で売っている製品は、どれも品質が良くてそれほど差がないのでは?』と思う人もいるだろうが、実は、ウイルソンのオーバーグリップに対するこだわりをつぶさに見ると、錦織の感覚が正しいことが分かる。
詳しく説明をすると、現在市場で人気の商品Aとウイルソンのプロオーバーグリップを比較すると、まずグリップテープの土台となる元生地(専用不織布)の品質が違う。技術センターで引っ張り強度と伸び率を比較したところ、商品Aが伸びてからちぎれたのに対し、プロオーバーグリップは『伸びづらく、切れにくい』という結果に。これはTシャツの襟をイメージすると分かりやすく、数回洗濯しただけで襟がヨレヨレになるのが商品A、形状復帰性能が高く襟が買った時の状態を長く保つのがウイルソンのプロオーバーグリップということができる。
また、手にフィットする感覚を左右するポリウレタンのコーティング方法にも大きな差がある。それは、商品Aが『乾式コーティング』なのに対し、ウイルソンのプロオーバーグリップは『湿式コーティング』を採用しているポイント。詳しく説明すると、『乾式コーティング』はポリウレタンシートを原反(元生地)の上に貼り付けただけのもの。これに対し『湿式コーティング』は、原反をポリウレタン液に漬けては乾かすということを繰り返し、コーティングを中まで染み込ませたもの。これは比べるまでもなく、どちらがしっかりコーティングされているかは明白で、プロのように試合毎にオーバーグリップを巻き替えることが少ない一般プレーヤーには(毎回、新しいオーバーグリップテープに巻き直したほうがより気分も新鮮にプレーできるのだが)、よりフィット感が長持ちする『湿式コーティング』のほうがいいことが分かるだろう。
こうして原反とコーティング方法にこだわっているからこそ、グリップテープの表面を静的&動的の2つの摩擦係数で比較した時も、商品Aに比べてウイルソンのプロオーバーグリップのほうが摩擦が高い=ズレずらい=フィット感が高い、という実証実験の結果が出ている。さらに、これも表面だけコーティングした乾式コーティングと布の中までコーティングが染み込んでいる湿式コーティングの差があるので当然なのだが、グリップ裏面の静的&動的摩擦係数もウイルソンのプロオーバーグリップのほうが高いというデータとなっている。そして原反の強度を示す磨耗性においても、商品Aよりウイルソンのプロオーバーグリップのほうが優れているといデータも。
ウイルソンのプロオーバーグリップがこのように高品質なのは、商品Aが表面だけをラップで覆った状態で販売しているのに比べ、プロオーバーグリップが表裏の両面ラップで覆っていることからも、商品に対する愛着が推測できる(しかも、表と裏でラップの種類が違うという気配りも)。そして、こうした細かい気配りができるのは、製造、パッケージ、フィニッシングテープまで全て日本製だから。その違いを肌で感じるからこそ、錦織はウイルソンのPRO OVERGRIPから離れられないのだ。
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