ウイルソンは、そもそも精肉会社の子会社として親会社の副産物を再利用し、バイオリンの弦、テニスのガットなどの製造を始めることでスタートした会社。1914年にスポーツ用品に専念するため親会社から独立し、テニスだけでなく野球やゴルフ用品を製造してきたのだが、元々が<お肉屋さん>なだけあり、革製品を扱うのはお手の物。創業間もない1923年には、野球の神様ベーブ・ルースのオリジナルグローブを製作している。
そうして、テニスのラケットだけでなくゴルフのサンドウェッジなど、スポーツ界に革新的なテクノロジーをもたらし賑わせてきたウイルソン。2年後には、創業100周年を迎える。ウイルソンは、その100周年に向けて様々なことを企画しているのだが、今年、目に見える形で登場するのがレザーのラケットバッグだ。これまで革のラケットバッグというのはほとんどなく、しかも今回は、このレザーバッグを錦織、アザレンカなどウイルソン契約選手がウィンブルドンとオリンピックで使用する。
お肉屋さんから始まったウイルソンが、野球のグローブ作りで培った革製品を取り扱うノウハウを取り入れて製作したレザー・ラケットバッグには、正にウイルソンの歴史が詰まっていると言える。このラケットバッグ、置いた時に下になる部分以外は全て革(下になる部分は汚れを防ぐためシンセティックが使われている)。しかも側面に使用している革は、肌触りのいい牛の背中の部分の一枚革なので、1頭の牛から取れる量が限られている入手困難なもの。今回、このレザー・ラケットバッグを作る時は、この革を確保するのが大変だったという。そして縫製はすべて手縫い。ここには、野球のグローブを作っているノウハウが生かされている。
革製品は、使えば使うほど味が出るもの。また、Wilsonのロゴは控えめで、全体的に重厚感とアンティーク感のあるデザインになっている(ロゴが小さいので、規定に厳しいウィンブルドンやオリンピックでも使用が可能なのだ)。これまでテニスを愛し楽しんできたプレーヤーが、これからも末長くテニスを楽しむ時に相棒としてそばに置いておきたい、今までになかった究極のレザーバックといえるだろう。
|
|