これまでフェデラーが黒塗りで使っていたラケットPRO STAFF 97だが、8月4日から始まったトロント大会でついにそのコスメがお目見え。レッドをメインにブラックをあしらった力強いデザインとなっている。そして、今年最後のグランドラム・USオープンが始まるのは8月25日から。ウィンブルドンで優勝まであと一歩と迫っただけに、コスメが与えられたPRO STAFF 97 RF AUTOGRAPHと同様、フェデラーも新たな気持ちで6年振りのUSオープン・タイトルを狙ってくるはずだ。
その新ラケットのPRO STAFF 97 RF AUTOGRAPH、既報の通りフェデラーの「もっとパワーのあるラケットがほしい。でも、フィーリングはこれまでと同じものがいい」というリクエストに応えるべく新たに開発されたもの。パワーを出すために、フェイス面積を97平方インチと大きくし(これまでのPRO STAFF 90は90平方インチ)、フレーム厚は21.5mmに設定(PRO STAFF 90は17mm)。そしてフレーム形状が半分ラウンド形状、半分ボックス形状というのも、『パワーを出しつつも、フィーリングの良さは残す』というセッティングにするためだ(ラウンド形状は、剛性&振り抜きが良くなりパワーがアップするのが特徴。ボックス形状は、打球感が良いのが特徴)。そして素材は、これまでと同じく、ケブラーとグラファイトの組み合わせ。ケブラーは、コナーズやサンプラスが愛用していた初代PRO STAFFから使われているもので、それを現在でも使うということは、やはりPRO STAFF独特の『球持ちする打球感の良さ』を出すにはケブラーが必要ということなのだろう。
それでも変化するべきところはしっかり進化していて、今回のPRO STAFF 97 RF AUTOGRAPHではフェイス面の両サイドに付いているPWS(周辺加重機構)が薄く&小さくなっている。これはフェデラーから「視覚的にスッキリしたものにしてほしい」というリクエストがあったから。実はテスト段階ではPWSのないものも試打したフェデラーだったが、やはり打球感や面安定性が変わってしまうためPWS搭載モデルを選択。その上で、フェデラーから「スピンやスライスを打つ時のイメージを大事にしたい」というリクエストがあり、それを受けて、今回のPRO STAFF 97 RF AUTOGRAPHには従来の性能やパフォーマンスを維持しつつも、薄く小さくしたPWSが搭載されることとなったのだ。
そして、ここまで新ラケットの性能が分かってくると、一般ユーザーとして気になるのは、『ディミトロフが使っているSIX.ONEやラオニッチが使っているBLADEと比べると、どっちがパワーを持っているの?』ということだろう。車を買う時に似たようなモデルを比べるのと同様、PRO STAFFユーザーには、SIX.ONEやBLADEとの比較が気になるものだ。それぞれのシリーズに違うフェイス面のモデルが揃っているため単純に比較するのは難しいが、代表とするモデルをそれぞれのフラッグシップ・モデルに限定して、SIX.ONEは95S、BLADEを98とすると、パワーの大きい順にPRO STAFF 97>BLADE 98>SIX.ONE 95Sという並びとなる。これまでフェデラーが使っていたPRO STAFF 90はSIX.ONE 95Sよりパワーは低かったので、今回のニューモデルは随分パワーアップしていることが分かる。
そして忘れてはいけないのが、新ラケットを開発するに当たり、フェデラーがパワーだけでなくフィーリングにもこだわったこと。『パワーは上がっているのにフィーリングが今まで通り』という微妙なバランスをとることがウイルソン開発陣にとっては一番の難所だったようだが、それをクリアしたからこそフェデラーは使用するようになったのだ。
ということは、このPRO STAFF 97 RF AUTOGRAPHは、これまでのPRO STAFF愛用者だけでなく、『憧れていたけれど、使えなかった』というプレーヤーも取り込むものであることが分かる。10月上旬の発売予定日が待ち遠しくてしようがないのは、あなただけではないはずだ。
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