7月20日、世界同時解禁でNEW PRO STAFFが発表された。開発のスタート時点から、フェデラーが開発に加わり、自らの<新たな武器>を作り上げた。「究極のラケット」。そう呼んでもいい新兵器である。
34歳となった今でも、トップ5のランキング(7月18日時点で4位)をキープ。全豪、ウィンブルドンとベスト4進出を果たしているなど、衰えを見せないレジェンド。その右手に握るのは、ご存じ「PRO STAFF RF97 AUTOGRAPH」である。
2014年8月から正式に使い出した同モデルは、ヘッドサイズが97平方インチ、フレームを50/50ジオメトリー(半分ラウンド形状・半分ボックス形状)にしたもの。長年、使ってきた90平方インチ×ボックス形状のラケットから、大きくスペックチェンジをした。
そこから、わずか2年。自ら開発に携わったという新ラケットでは、どんな要求をしたというのか?
そのキーワードこそ「タキシード・スタイル」である。フェデラーのタキシード姿をご覧になったことがある人も多いだろう。テニス界で、彼ほどそれをスマートに着こなす選手はいないと言ってもいい。それならば、彼の相棒であるラケットも"タキシード・スタイル"であるべきではないのか?
ラケット売り場を連想してみてほしい。そこにあるラケットは、メーカーロゴやラケット名が大きく、さまざまなカラーをあしらわれたものばかりであることに気付くだろう。 「自信を持って最小限のデザインでラケットを作ろう」、フェデラーは開発の中で、そう語ったという。
そうして出来上がったのが、「UNCONTAMINATED Design=何にも汚染されていないデザイン」である。フレームがマットとグロス、2種類のブラックから出来上がっているNEW PRO STAFF。ウイルソンのロゴはスロートに入っているだけ。その反対側にはレーザー彫刻によるシンプルなPRO STAFFが施されていることに注目したい。
それではNEW PRO STAFFの変化は、デザインのみなのか?
もちろん違う。ただ、開発に加わったフェデラーは、「(PRO STAFF RF97 AUTOGRAPHのパフォーマンスから)何も変えないでほしい」と要求したという。文字どおり、ラケットのパフォーマンスに満足しているということだ。実は、この言葉の前に、興味深い言葉が付いていたのだ。 「そのパフォーマンスには、満足はしている。ただ、まだ完璧ではない。ラケットの手触り、触感をより良くしてほしいんだ。ただし、それ以外は、何も変えないでほしい」
コスメ(ラケットのコーティング)が変われば、多少なりともフレックスは変わってしまうし、重量だってフィーリングにだって変化が加わってしまう。この難題に応えるべく、試行錯誤を続けた結果、ウイルソンがたどり着いたのが、世界コーティングサミットで披露された「Velvet Paint(ベルベットペイント)」なるコーティング術である。
今回のNEW PRO STAFFでは、マット部分のブラックに使われているのが同コーティング。これが実に不思議な感覚を与える。何と触った人の多くの人が「柔らかい」と感じるのだ。
これぞ、フェデラーが求めた触感なのだ。プレーの中で、繊細なタッチを武器とするフェデラーならでは、と言ってもいいだろ。
燃え上る闘志を持っているなら
限界を超えたいなら、
より速くなりたいなら、
テニスに夢中なら、
相手を脅えさせたいなら、
すべてを支配したいなら、
私の真似をしたいのではなく、いつか私を超えたいなら。
私はあなたのためにこのラケットを作った。
パワー、コントロール、そしてすべきことの全てを込めて。
それが私を導くように、あなたを頂点まで導くだろう。
ロジャー・フェデラー
フェデラーによるデザイン、フェデラーが満足するパフォーマンス、そしてフェデラーが納得した極上の感触。PRO STAFFは、今、究極のレベルに達したと言っていいだろう。
|
|
|
|
|