今の男子のトッププロたちはハードコートでも大きなスキール音と共にスライディング・フットワークを繰り出し、広大なコートカバー範囲からの攻撃を可能にしているが、あれは鍛え上げたフィジカルを持つプロだからできる「スペシャル・テクニック」であり、彼らですら故障と隣り合わせのリスクの高い技。だが、言うまでもなく、テニスの攻守において、スライディング・フットワークのメリットは大きい。だからこそ、プロたちも危険を冒して実行しているのだが、それを一般プレーヤーにもできるようにできないかとウイルソンは考えた。
この秋発売される「RUSH PRO GLIDE」はそれを可能にした世界初のモデルだ。ラケットがウッドからカーボンに進化したのと同じ種類の「ギア革命」がシューズでも遂に起きようとしている。
テニスのギアはラケットを中心に幾度かの「革命」と呼べる変革を経て来た。ラケットが木製からカーボン繊維製になったのはその象徴的なものの一つで、近年で言えば、ストリングがナチュラルからナイロンに、そして各種ポリ系のストリングに取って変わられつつあるのもその一つと言っていい。
だが、シューズは長く変わらなかった。もちろん、各種の衝撃吸収素材の進化や、人工皮革やラバーの進歩による軽量化、耐久性のアップ、フィット性の向上などの進化はあったものの、それまでの常識を覆すような、全く新しい変革はなかったし、それでいいとされてきたギアでもあった。 だが、この秋、ウイルソンが発表した「RUSH PRO GLIDE」は、テニスシューズにまさに革命を起こすモデルと言っていい。
これまでのテニスシューズは、いかに快適に、そして安全にプレーするかに主眼が置かれ、パフォーマンスの向上に関しては、サーフェス別のソールパターンが用意される程度で留まってきたが、この「RUSH PRO GLIDE」はフットワークの技術の一つであり、今日のテニス界のトップクラスの世界では必須の技術でもある「ハードコートのスライディング・フットワーク」に焦点をあて、それを一般プレーヤーレベルでも実現出来るように、突き詰めた機能を持って生み出された。
これまでもハードコートでのスライド性を考慮したモデルが皆無だったというわけではないが、ここまで徹底した形でスライディング・フットワークに特化したモデルはこのモデルが初。また、トッププロの世界のフットワークの技術の進化に合わせて、それを一般プレーヤー向けにアレンジしたモデルを開発するという意味では、ラケットがウッドからカーボンに進化したことで生まれた、デカラケや厚ラケの登場に匹敵する、「それができれば確実にプレーが向上するというのなら、それができるシューズを作ればいい」という発想で生まれた超画期的なモデルと言っていい。
かつて、トップスピンのストロークはプロだけの技術だった。それを一般プレーヤーにも広げたのがラケットの進化だったが、ハードコートでのスライディング・フットワークを特別なテクニックでないものにするシューズがこの「RUSH PRO GLIDE」だ。
ウイルソンで「ラッシュ・プロ・グライド・マスター」として、このモデルの普及に務める上田篤さんは、法政大学時代にはテニス部のキャプテンを務めた経歴を持つシリアス・プレーヤー。上田さん自身も最初は懐疑的に見ていたという「RUSH PRO GLIDE」だったが、実際にコートに立って使ってみると、その印象は一変したのだという。
「これは一般プレーヤーというよりもむしろ、シリアス・プレーヤーが求める性能なんじゃないかと思いました」と上田さんは言う。
「きちんとスライディング・フットワークの身体の使い方を分かっているプレーヤーじゃないと、簡単には滑れないセッティングですが、それがわかっているプレーヤーなら、メリットだけを生かせる。ハードコートで相手に振られて追いつめられたときに、それまではミスをしない、という選択肢しか持てなかったのが、この「RUSH PRO GLIDE」でスライドして打点に入れるのであれば、カウンターやパッシングショットなどを打てる体勢でボールに入れて、勝負をしにいけるようになる。
それぐらいテニスが変わるんです」。ウイルソン社のテストではスピードで約30%、距離にしてラケット1本分以上となる80cmのコートカバー範囲の拡大が確認されたという。
アウトソールに搭載された「スライディング・コントロール・プレート」が、スライディング・フットワーク時のハードコートでの摩擦を調節し、これまでにないフットワークを可能としたのは間違いないのだが、これもシューズのベースとなる「RUSH PRO」シリーズの際立った安定感が実現した機能だ。
フィット感や安定感に不安のあるアイススケートシューズや、スキーブーツを想像すれば誰にでもすぐに理解できるはずだが、元々摩擦の高いハードコートでのスライディング・フットワークは当然、かなりのリスクが伴う選択。このモデルの使用者には、プレーをする前に必ず、所定のエクササイズを経て、その特性を理解してからの使用を強く推奨しているのはそのためでもあるのだが、「RUSH PRO」シリーズが持つ基本性能の高さがあって初めて実現した機能でもあるという理解はまず必要だろう。
つまり、基本となるシューズの性能の高さに、スライドという機能が加わったのが「RUSH PRO GLIDE」。さらに、プレーヤーの使い方次第では戦術の幅が広がり、効果はかけ算で様々な可能性を持っている。 「クレーで見るような、長い距離のスライドというよりは、最後の最後に打点に飛び込んで行って、強くボールを叩くようなステップワークが使えるようになります」と上田さん。「普通に使っているだけでは全然滑らない感じで、スライドしたい時だけ滑るというセッティングです。このシューズを使いこなせれば、色んな可能性があると思います。逆に言えば、このシューズで慣れてしまうと、もう後戻りはできないというぐらいの特徴のあるモデルだとも思います。それだけに、ウイルソンも長い目でこのモデルを育てていこうと本気で取り組んでいます」。
「RUSH PRO GLIDE」は純粋に「ハードコートでの戦闘力を上げる」というコンセプトで生み出されたギアであり、同時にギアの変更だけで「今までできなかったことができるようになる」という性質のある新兵器的な存在でもある。
しかし、こればかりは体感するより他に理解の方法がない。興味を持ったら今すぐ近く専門店に急げ。
RUSH PRO GLIDE 本体価格:19,900円+税
サイズ: 25.0〜29.0cm(メンズ)
カラー: ウイルソンレッド×ユニオンブルー×ブライトブルー
付属品: RUSH PRO GLIDEエクササイズマニュアル、DVD
2015年11月発売予定