シューズを選ぶ際、どうしても「フィット感が...」「アウトソールが...」とシューズ本体が足や地面に触れる部分の機能に目がいきがちなもの。それ自体は間違っていないのだが、車などと同じようにシューズも基本思想がしっかりしていなければ、いくら細部にこだわっていても全体のバランスが悪く、かえって履きにくく、足は動かしにくくなるもの。
そうした視点でウイルソンのRUSH PRO 2.0を見ると、その『足が動く時の本質』を踏まえた開発に、誠実さと品質の高さを窺い知ることができる。そもそも人間の足は、小指側の付け根(小趾球)が車でいう『アクセル』、親指の付け根(母趾球)が『ブレーキ』の役割をしているのだが、RUSH PRO 2.0ではフォアフット(前足部)のラスト(足型)形状を小趾球サイドに広げる設計のスピーディー・ラストを採用している。これにより、アクセルの役割をする小趾球を有効に稼動させることが可能になり、足本来の能力を生かして素早くスムーズにダッシュすることができる設計となっている。
また、カカトを包み込むホールド感が重視されるヒールカップを従来より低い位置にしているのもRUSH PRO 2.0の特長で、これは距踵関節(足関節の動きを左右する関節)を動かしやすくするため。ヒールカップが高い部分にまで及ぶと距踵関節も固定されてしまい、それが動きの悪さとなるのだが、骨学的に踵骨部分がフィットするようにヒールカップを配置させたことで、距踵関節を自由に動かすことが可能に。これも動きのスムーズさにつながっている。
さらに、これは余談だが、一般的に『くるぶしまで包み込むミッドカットやハイカットはホールド感や安定感が高い』と考えがち。しかしこれは人体工学的に間違っていて、テニスシューズではオススメできない。というのも、そもそもミッドカットやハイカットが最初にバスケットボールで採用されたのは対人接触でくるぶしにケガを負うのを避けるため。『足を守る』という点では効果があるが、『カカトをホールドして足とシューズの一体感を高める』という点ではくるぶしを包み込むことは関係なく、かえって足全体がホールドされるため『関節を動かしにくい』という弊害が生まれることに。つまり、テニスシューズでは必要なく、動きの邪魔になるのがミッドカットやハイカットなのだ。