ラケットにおけるフレーム形状の違いは、ボールを飛ばすパワーや打球感(フィーリング)に大きな違いをもたらす。例えば、同じフェース面積でウエイトやバランスも同じ、素材も同じラケットでも、フレームがボックス形状のものはスイング時にフレームが適度にしなるためスイートスポットで捕えた時に独特の打球感が得られる。これに対しラウンド形状のものは、剛性が高くなりスイング時の空気抵抗が減るためパワーのあるショットを打つことができる。
これまで男子プロ選手を中心に愛用されてきた『SIX.ONE』ファミリーは、フェデラーやディミトロフ、ドルゴボロフが使うボックス形状のSIX.ONE TOUR BLX 90も、フィッシュ、ベルッキなどが使うラウンド形状のSIX.ONE 95も同じファミリーとしてカテゴライズされてきた。しかし、上記のようにフレーム形状はラケットの特性や打球感に大きな違いを生んでしまうもの。そこで、2012年に新発売されるラケットでは、フェデラー&ディミトロフが使うボックス形状のものが『PRO STAFF SIX.ONE』ファミリー、フィッシュ&ドルゴポロフ&ペトコビッチが使うラウンド形状のものが『SIX.ONE』ファミリーというように、明確にファミリー分けがされている。
そして、フレームがボックス形状の『PRO STAFF SIX.ONE』ファミリーは、フェース面が90平方インチ、95平方インチ、100インチの3モデルが発売される。このうちフェデラーが使うのは、フェース面が90平方インチのPRO STAFF SIX.ONE 90。前モデルSIX.ONE TOUR BLX 90のUSスペックとウエイト、バランスなどのスペックはまったく同じだが、フィーリングをよくする『アンプリ・フィール・テクノロジー』を搭載したのが大きな変更点だ。この『アンプリ・フィール・テクノロジー』は、これまでフレームに使用してきた新素材バサルト・ファイバーをグリップ部にも装着した機能。衝撃・振動をスムーズにする、遮音性が高い、軽量で剛性が高いという性能を持つバサルト・ファイバーをグリップ部に取り入れることで、快適な打球感をよりAmplify(増幅)させたのだ。
そして、この『アンプリ・フィール・テクノロジー』は、次世代のエース、ディミトロフが使うPRO STAFF SIX.ONE 95にも、PRO STAFF TOUR 100以来8年振りにプロスタッフの名を冠したフェース面100平方インチのPRO STAFF SIX.ONE 100にも使用されている。グリップの握りがそれほど厚くなく、インパクト時の打球感を感じながらプレーをしたいフェデラー・タイプの方には、このボックス形状の『PRO STAFF SIX.ONE』ファミリーから自分に合ったフェース面積のモデルをピックアップすることをオススメしたい。
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チーフ高
フェース面が90平方インチ、ウエイトが339gというスペックから、このラケットを使うのは高い確率でボールをスイートスポットで捕らえることができ、さらに自分のパワーでしっかりスイングしていける人に限られると思う。打球感は、以前のモデルより優しくなっていると感じた。それでもインパクト時の情報は非常にクリアに伝わってくるので、その感覚を大切にプレーしたい人向けだと思う。
ザッキー
ウエイトはあるが、その分ラケットを振り回してしまうことはないので常に安定したスイングができる。普段手打ちになってしまい、ボールを吹かしてしまうという人にはこのラケットが余計な力をセーブしてくれるだろう。ラケットに遠心力が加わり、自然にパワーボールを繰り出すことができるのである程度筋力のある人が使えばこのラケットが自分のテニスを変えるきっかけになるかもしれない。
チーフ高
90に比べフェース面積が5平方インチ大きくなっただけだが、そのぶんスイートスポットが大きくなり、ラケット自体のパワーも増えているので楽にボールを飛ばすことができる。それでもPRO STAFF独特のホールド感、インパクト時の打球感の良さは同じなので、低いボールを持ち上げたり、高いボールを押さえ込んだりというタッチ感を使ったショットが打ちやすかった。
ザッキー
ストロークではラケットがしなり、ボールを弾く感触が強く伝わってくる。相手のストロークに強打で対抗しても打ち負けない頼もしさがあり、軽く素振りをするだけでもスイングの力強さを体感することできる。回転はかかりにくいがラケットの重みで振り抜いた後に力が抜けるのでフォームは他のラケットを使っているときより良いかたちになるだろう。
チーフ高
フレームがボックス形状のPRO STAFFシリーズはフェース面が小さめのものだけだったため、独特の打球感を堪能できるのは中上級者以上に限られていた感があった。しかし、このラケットはフェース面100平方インチ、ウエイト285gなので初中級者でもPRO STAFFシリーズ独特の打球感を味わうことができる。心地よくコントロール性の高いボールを打つことの楽しさを存分に味わえる。
ザッキー
PRO STAFFシリーズの中では軽いモデルだが、シリーズの特徴である振り抜きの良さは健在。加えてボールを弾く感覚も強いのでボールの飛距離は使用者のパワーに応じて伸びていく。重みのあるボールが打ててコントロールもしやすくなっている。初心者から中級者でも問題なく使えるラケットとなっていると思う。
そして、フレームがラウンド形状の『SIX.ONE』ファミリーも3モデル発売される。こちらは、3本ともフェース面は95平方インチと同じだが、ウエイトが332gのものがSIX.ONE 95 US、ウエイトが309gでダブル・ホールが採用されているのがSIX.ONE 95 JP、ウエイトが289gのものがSIX.ONE TEAM 95と大きくはウエイトの違いで区別することができる。この他、『アンプリ・フィール・テクノロジー』が加わり、SIX.ONE 95は前作のSIX.ONE BLX 95に比べフレーム厚が0.5mm細くなっているため“しなり”が大きくなったことでボールとのコンタクト時間がアップ。もともとあったパワーに、心地よい柔らかな打球感でコントロールしていける性能が加わったことが大きな特徴だ。比較的厚めのグリップでボールにスピンとパワーを与えていくタイプのプレーヤーには、この『SIX.ONE』ファミリーがオススメだ。
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チーフ高
フラットドライブで押し込んでいく感じでスイングすると、自分が思っている以上に伸びのあるボールを打てる。テイクバックからフィニッシュまで一気に振り抜くことでボールにスピードとコントロールを与えていく中上級以上の方が試合で使えるようなセッティングになっていると思う。打球感はマイルドで、オフセンターでも嫌な振動が来ない。好みにより332gと309gを選べばいいと思う。
ザッキー
ストロークの力強さだではなくボレーでも面に安定感があるためネット前につめて相手のカウンターをくらっても力負けしない強さがある。ダブルスでも積極的にポーチに出るという人はこのラケットで相手の足下に打っていけば相当プレッシャーになるはず。自分のパワーを最大限生かしてテニスをしたいという人にオススメ。
チーフ高
振り抜き感がよく、またラケット自体がパワーを持っているため、弾くようにスピンをかけるスイングでも楽に球足の長いボールを飛ばすことができる。一旦ラケット面でボールをグッとつかんでいる感じがあるので、コントロールもしやすかった。体から遠くに来たギリギリで届いたボールについても、弾きがいいので楽にスライスで返すことができのるがうれしかった。
ザッキー
持ったときグリップに重みを感じるが、いざ打ってみると振り抜きはシャープで心地よい。縦回転がよくかかるのでラケットをいくら振ってもコートに収まるという印象。回転がかかるぶん、球威は劣るかもしれないが操作性にも優れているためボールの配球を良くしたい人にはもってこいだと思う。初中級者には頼りになるラケットだ。