テニスだけでなく野球などボールを扱う競技では、よく『ボールが伸びてくる』という言葉を使う。現実には初速より終速のほうが速いということはなく、ボールは徐々に減速するのだが、その減速率がイメージより低いと『ボールが伸びてくる』と感じるものなのだ。
テニスでは、一般プレーヤーがストロークを打ったインパクト時の球速を100とすると、相手が打つ頃には50~70%も減速されるというデータがある(つまり最初のスピードに比べると30~50%のスピードとなる)。野球のようにノーバウンドで打つ競技に比べ、基本的にワンバウンドさせるテニスでは、相手が打つ頃には減速率が大きくなってしまうのだ。また、この減速率は、フラットとスピンでは違いがある。意外に思うかもしれないが、ワンバウンドしたあとの減速率はフラットのほうが大きい。つまり、スピンのほうがバウンド後もパワーやスピードを失いにくいのだ。これは、プレーされている方なら、経験的に分かっていることではないだろうか。相手ボールがまっすぐフラットに飛んできた時よりも、バウンドして高く弾んできた時のほうが打点が遅れてしまうことが多いはずだ。スピンはボールに回転をかけるためフラットに比べるとバウンドするまでのスピードが遅くなるのだが、バウンド後の減速率で比べるとフラットより減速されないため『伸びる』と感じるのだ。こうしたことから、テニスでは『伸びるボール=スピンのかかったボール』と言うことができる。
テニスの技術では、ボールに与えるスピン回転が注目されるが、上記の理論からいってもスピンのかかったボールは武器となる。つまり選手にとってメリットとなっているのだ。また、バウンド後に高く弾むスピンボールは、バウンドが素直なフラットに比べ相手にミスヒットさせる可能性も高くなる。一発でエースを奪うことはできないが、主導権を奪ったり、相手からチャンスボールを引き出すにはスピンは欠かせない要素となっているのだ。
そして、そのスピンをかけることに重点を置いて設計されているのが、錦織 圭や伊藤竜馬が新たに使っている『STEAMファミリー』だ(錦織は『STEAM PRO』、伊藤は『STEAM 100』)。
STEAMファミリーは、軽量でバランスがヘッド寄りに設定されているため、同じ力でスイングしてもスイングスピードが加速する。さらに、そのスイングで生み出したパワーをロスしないよう、剛性が高いバサルトファイバーのフレームへの配合量を増加させたことが、スピン性能の向上につながっている。
こうした設計と設定により、STEAMファミリーでストロークを打った場合、スピンがかかりやすいため、ボールが相手に届くころには一般的なラケットと比べ10%程度高いパワーとなるのだ。
そして、その10%の差こそが、体格で海外の選手に劣る日本人が戦っていくための武器となっている。それを証明しているのが、錦織 圭であり、伊藤竜馬なのだ。特に錦織が使用する『STEAM PRO』と内山靖崇が使う『STEAM 95』は日本人のために作られた日本でしか発売されないジャパン・モデル。スピンで攻めて勝ちたいプレーヤーに、是非トライしてほしいモデルだ。
|
|
|