これまでテニスファンの間では『世界で通用する選手』として知られていた錦織 圭だが、今回、全豪オープンでベスト8に入ったことでテニスを知らない人からも注目されるようになってきた。
この錦織のサクセスストーリーは、小学6年で全国選抜U12、全国小学生大会、全日本ジュニアU12の3冠を達成した時から始まるのだが、当時から現在に至るまで錦織が愛用しているのがウイルソンのラケット。小学生の時から「将来はプロになって、トップになりたい」という夢を持っていた錦織は、「トップになるために必要なラケットは、サンプラスやグラフなどNo.1選手が使っているウイルソン」と考えていたようだ。そしてウイルソン・ラケットの中で錦織が一貫して愛用してきたのが、ウエイトが比較的軽く、バランスをトップ寄りにセッティングした“ハンマー・テクノロジー”採用モデルの<ツアーシリーズ>。
そのツアーシリーズの進化版である『STeam PRO』は、錦織にプロ転向後の<第2の飛躍>をもたらした(第1の飛躍は、デルレイビーチでATPツアー初優勝し、USオープンでもベスト16に入った08年)。本来なら12年から使用予定だった『STeam PRO』だが、テスト段階でその打球感を気に入った錦織は11年10月のバーゼル大会から使用開始。1回戦でベルディッチを破ると、準決勝ではNo.1のジョコビッチを倒す日本人男子初の快挙を成し遂げたのだ。その流れを受けての全豪オープンでのベスト8。日本人男子として80年振りの快挙は、成るべくして成ったものだったのだ。錦織が予定より早めにスイッチするほど気に入った『STeam PRO』の特徴は、“パワフルなスピン”。これは、前作『TOUR BLX』よりフレームに使うバサルトファイバーの量を増やしたことでもたらされたもの。さらに、スピン量が増大することでバウンド後の減速率は低くなるため、ボールの伸びも大きく向上した。ボールが伸びれば、エースとなる可能性は高くなり、追い付かれても相手の打点を遅らせることがことができるため強力な武器となる。その伸びが、今回の<第2の飛躍>につながったと言っても過言ではない。
また、プロのツアーで上位に勝ち上がっていくには、スピン量を調整することでアングルに打ったり軌道の高い深いボールを打つなど、コートを立体的に使った展開力が欠かせない。体格では海外選手に劣る錦織が17位までランキングを上げることができた背景には、幼いころから大きなエネルギーを生み出せる“ハンマー・テクノロジー”に親しみ、それを生かすための技術と戦術を積み重ねてきた事実がある。今回、錦織が愛用している『STeam PRO』は、海外では入手することができない日本独自のジャパン・モデル。錦織のように厚めに握って積極的にスピンをかけていくタイプのプレーヤーで、さらにボールにパワーや伸びがほしいというジュニアやアダルトに是非使ってほしい。