市場には「高いスピン性」を謳ったラケットは数多くあるが、「スピンがかかるメカニズム」を解析し、「実際にテニスをするうえで効果があるかたち」でラケットに仕上げられてきたとは言いがたい。多くのモデルは「スピンはかかっても、そのぶんスピードが落ちる」という状況から脱していなかったからだ。しかし、この1月にウイルソンが満を持して発表した「16×15」のストリングパターンが採用された「STeam 99 S」と「STeam 105 S」は、「スピン性」と「ボールスピード」の関係をイチから見直して開発されたモデルで、「次世代のスタンダードになる可能性がある」とまでウイルソン開発陣が断言する実力を持っている。
それをデータとして証明したのが、アメリカのテキサス州の会社で開発された最新の計測器である「TRACKMAN」。元々は、最先端のレーダー技術を応用してゴルフ用に開発されたものだが、ウイルソンとの協力でテニス専用に改良。ボールの回転数と速度、軌道と飛距離を正確に計測できるマシンなのだ。
既にこの「TRACKMAN」で、「16×15」のストリングパターンを持つ「STeam 99 S」と「STeam 105 S」が「回転量が多くなっても速度が犠牲にならず、しかも、しっかりと飛んでコントロールもできる」ということが証明されているのだが、今回、その「TRACKMAN」が<来日>。そこで、実際に「STeam 99 S」の実力を確かめるため、「STeam 99 S」に加え、似た特徴を持つラケット2機種の計3機種に同じストリングを同じテンションで張り上げ、ボールマシンから出される同じボールを打ち、「TRACKMAN」を使ってそのデータを検証することに。テスターとして、20代の「筋力に自信がない」という女性からテニス歴15年以上の40代の男性まで、プレースタイルもレベルも違う4人の方に試打してもらった。
そして、テストの結果、最も顕著に現れたのが、回転量と速度の関係性。40代でスクールでテニス歴5年の山川さんの場合、既存モデルでは回転量が毎分1362回、速度が時速117.7㎞だったのだが(それぞれ10球の平均)、「STeam 99 S」では1683回転、時速124.2㎞と回転量で122.6%、速度で104%もアップした。また、20代で中高時代にテニス部でプレーしていたパワー系プレーヤーの橋本さんは、既存モデルでは2022回転で122.7㎞だったのが、「STeam 99 S」では2355回転で122.6㎞と回転量が116%向上。さらにテニス歴15年以上でテクニシャンの40代、鈴木さんの場合は、既存モデルで1451回転、118.4kmが、「STeam 99 S」では1474回転、119kmと大きな差は出なかったが、飛距離が既存モデル20.51m→「STeam 99 S」23.3mと113%も飛びがアップ。
また、20代の女性で、筋力がなくスイングスピードの遅い河野さんの場合、速度と回転数に目立った差は出なかったが、飛距離の面では「STeam 99 S」が108%アップの数字となった。「同じように打ったはずなのに、最初はスピンがかかりすぎると感じたほど、自然な感じでスピンがかかった」というのがテスターたちに共通した意見で、橋本さんは「今まではスピンは自分のスイングでかけるものだと思ってきましたが、自然にかかるという感覚がわかりました」という。
この実験からも、Sシリーズが「よりスピンがかかり、速度も出る。そして深いボールがコンスタントに打てるようになる」ということが証明された。テニスフリーク待望の性能が、「TRACKMAN」によるテストによって数字でも裏付けられたと言える。こうした性能は、Sシリーズが、ただストリングパターンを減らしただけのモデルではなく、コントロール性や使用感に影響が出ずにスピン性が向上するメリットだけを味わえるようチューニングされた、シリーズ専用設計のフレームを使用していることに起因する。だからこそ、「16×15」とストリングパターンを粗めにしたことによる、①ストリングの大きな「スナップバック」、②打球時のたわみと復元反発が大きくなる「トランポリン効果の向上」というこれまでのモデルにはない性能を手にすることが出来たのだ。
>>「スピンのメカニズム」に関する詳しい情報(12.20更新号)
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