「ポリは耐久性こそ高いが打感が硬く、そしてテンション維持性が低い」。そんなイメージを持っているプレーヤーも多いだろう。確かに、初期のポリ系ストリングは、張り上げ5日後には15~23%もテンションダウンを起こすというデータがあり、毎日張り替えるプロであればともかく、数日~数ヵ月、張り替えなしでプレーを続けなければならない一般プレーヤーにとって敷居が高かったのは事実だ。
だが、ポリ系ストリングが主流となりつつある現在、その開発も急ピッチで進んでいる。 第1世代と呼べるのはルキシロンで言えば「オリジナル」。90年代に登場し、ラケットの高反発化とテニスのスピード化の流れの中で、多くのプロたちが使用を開始。グスタボ・クエルテンと共に97年の全仏オープンを制したことで一躍注目を浴びたのがポリだった。
その後、第2世代となるのが、ポリに添加物を配合し、パワーとスピードを強調したモデルたち。今も定番の一つ「アルパワー」はこの世代のモデルだ。続いて第3世代として登場したのが、ポリの弱点だった「硬質な打感」を改善した「M2」などに代表されるソフト系のモデルになる。この頃にはポリのユーザーはプロから広く一般層にも広がって行くことになる。
そして今回、ルキシロンが満を持して市場に投入するのは、その名も「4G」。第4世代の最新モデルだ。この「4G」は夏のニューモデルとしての登場だが、実は今年1月の全豪オープンの時点ですでに錦織 圭のラケットに張られ、彼の初のグランドスラム・ベスト8進出の影の立役者としてその性能をいかんなく発揮していた。
当時一部のファンの間で噂になった「錦織の黄色いストリングは何だ?」という疑問の答えは、「4G」だったというわけだ。実績がない新製品でも、自身が「いいもの」と判断すれば、すぐに使用するのが錦織の特徴。ルキシロンとしては開発テストのつもりで錦織に渡したところ、その感触が良かったため、彼は即座に使用を開始。結果を残したのだ。この「4G」はその後もアレクサンダー・ドルゴポロフなどのラケットに張られ、多くの実戦経験を経ている。ニューモデルだが、すでに実戦での性能証明付きというモデルと言っていい。
この「4G」の最大の特徴は、テンション維持率がいいということ。「ボールチェンジごとにラケットは交換していますが、そのギリギリまで僕の好きなマイルドな打感が持続している感じがしますし、イメージ通りの軌道でコントロールできるのでとても気に入っています」というのが錦織のインプレッションで、「パワーは申し分ない。打った時に柔らかすぎず、硬すぎない心地よいフィーリングだ」というのがドルゴポロフのコメント。一球の緊張感が一般プレーヤーとは桁違いなプロたちから、すでに強い信頼を勝ち得たストリングと言っていい。
第4世代の「4G」が高いテンション維持性を持っている理由は、その分子構造にある。従来のポリ系ストリングを分子レベルで見ると、その結合は「無定形」という状態。そのため安定度が低く、テンションロスが起こりやすかった。それを防ぐために第2世代、第3世代でも配合する素材を工夫するなど様々な試みがなされたが、それも完全ではなかった。
しかし第4世代となるこの「4G」では、ストリングの分子構造の段階から開発が行なわれ、「無定形」だった構造を「半結晶状態」に高め、分子鎖を規則正しく形成することで内部の強度をアップ。また、ルキシロン独自の技術で、核生成密度を上げることで構造として強く密な糸を形成し、耐久性としなやかさを両立させることに成功したのだ。錦織が「マイルドな打感が長続きする」と言葉にしたのは、こうした裏付けあってのことなのだ。
ポリ最大の特徴である耐久性はそのままに、打感のマイルドさとテンションが長時間持続する。毎日コートに立ち、激しい練習を繰り返す選手や学生層が求めていた性能が、まさにそのまま現実のものとなった形だ。これを試さないという手はない! ポリの新定番の誕生と言っていいだろう。
|
|
|
|