もともと“耐久性がある”ということで、学生を中心に一般プレーヤーにじわじわと広がり始めたポリエステル系のストリング。特に、パワーがありスピンをかけて打つ高校生や大学生の男子のポリエステル系ストリングの使用率は非常に高い。さらに最近は、打球感が柔らかいものも開発され、ポリエステル系特有のパワーやスピードを求める社会人にも愛用者が拡大してきている。あるデータでは、ポリエステル系38%、モンフィラメント35%。マルチフィラメント20%という使用率となっており、その人気は年々広がりを見せつつある。
こうした流れは、ポリエステル系ストリングの変革と一致する。当初、ポリエステル系ストリングは、前述のように『耐久性の良さ』が最大の特徴だった(第一世代)。ラケットの進化によりボールに強烈なスピンをかけられるようになった結果、ナイロンなどのシンセティック・ストリングでは数分プレーするだけで切れてしまうため、ポリエステル系ストリングが使われるようになったのだ。特にクレーでのプレーが多いヨーロッパや南米のプロ選手は、ボールにわずかにだが土が付着するため、よりストリングが切れやすい。それを解決したのがポリエステル系ストリングだったのだ。
そして、ポリエステル系ストリングが世の中に一気に知れ渡ったのが、クエルテンがルキシロンのオリジナルを使いフレンチオープンで優勝した1997年。シンセティック・ストリングにはないパワーとスピン性能を持っていたため、その後、フェデラーなどトップ選手もこぞって使い始め、ヨーロッパでは、ポリエステルのことを「ルキシロン」と呼んでいたほどだった(第二世代)。
その次に現れた大きな流れが、打球感の柔らかさ=コンフォート(第三世代)。耐久性、パワー、スピンというテニスに必要な要素を多く持ったポリエステル系ストリングだが、分かりやすい欠点もあった。それが、打球感の硬さ。切れにくいという性質上、これはその裏返しの特徴としてどうしても出てきてしまうこと。それでも、張り立てはシンセティックと同じようにそれほど硬さを感じないのだが、時間が経つと打球感の硬さが顕著に出て振動が伝わってくるのだ。試合毎に何本も張り替えるプロであれば問題ないのだが、数日~数ヵ月は使う一般プレーヤーが敬遠するのも無理はなかった。しかし、これも技術で解決されるようになり、現在では打球感がマイルドなポリエステル系ストリング(M2プロなど)も発売されている。
そして、今年8月24日、ルキシロンから第三世代に続く第四世代の商品が発売される。これは既にプロに使われ、一部では話題となっている商品だ。錦織 圭がオーストラリアンオープンの時に縦糸とて使用していたものが正にそれで、一部の目ざといファンからは「あの黄色のストリングは一体何なんだ」という声が上がっていた。第四世代=4th GENERATIONということで4Gと名付けられたこのストリングの詳細は、まだ不明だが(8月5日に情報が解禁される)、ウィンブルドンから4Gを使いはじめたセリーナはシングルスに加え、姉のビーナ スと組んだダブルスでも優勝、錦織やドルゴポロフ、そしてディミト ロフが実 戦で使い結果を残していることから、“いいもの”であることは間違いないはず。どんなスペックなのか、公開が待ち遠しい。