プロツアーは、日々凌ぎを削り合う厳しい世界である。コンディション、ギアの性能やセッティング...わずかな違いが勝敗を分けることになる。だからこそ、プロはギアにもこだわるわけだ。ちなみに、プロの世界での傾向は、後に一般ユーザーのムーブメントとなることが通常だ。
ここで興味深いデータを紹介したい。ATP・WTAのトップ100選手(以下すべて2017年USオープン時の調査)のポリエステル・ストリング(ポリ)使用率はなんと100%なのだ! これはメインとクロス双方、またはどちらかに使っているということ。
つまり、プロは勝つためにポリを選んでいると言える。加えて書くとATPの100人中72人、WTAの100人中51人は、ルキシロン製のポリを使用しており、ATPのトップ10に限ると契約するミロス・ラオニッチ、錦織圭、ガエル・モンフィスを含む"7選手"が「ルキシロンのポリ」を使用している(とりわけトップ5では4名が使用!!)。トップ10の内、契約選手以外の3名は、購入してまでルキシロンを使っている。つまり、プロの世界では、「ポリといったらルキシロン」が常識ということである。
なぜ、これほど圧倒的な人気なのか?
"ポリ元年"と言ってもいいのが、ちょうど20年前の1997年。この年、全仏でノーシードから優勝を果たしたグスタボ・クエルテン(00年、01年も全仏制覇)が、ルキシロンを使用していたことがきっかけである。彼が得意としたのが"ルキシロン・ショット"と呼ばれる「回り込みフォアの逆クロス・ショートアングル」。
この位置に打つためには、回転を多くし、スピードを落とすのが普通。ところが、クエルテンのそれはスピードを保ったままコートにグインと落ちてエースを量産した。他のストリングでは、不可能な軌道がルキシロンなら実現できる。プロが選ぶのも当然の成り行きだ。一連のことは当時、アメリカの『TIME』誌でも伝えられ、話題となった。その記事には、「プロ選手たちが『ルキシロン・ショット』という言葉を使っている」「あるコーチは、ルキシロンによって、テニスは直線的軌道から放物線的軌道の時代に突入した、と言っている」と紹介されている。
そのルキシロンの代表作、アル・パワーの名前は、ポリエステル素材にアルミ・ファイバーを加えたことが語源。ルキシロンにとって2作目のポリ「オリジナル」をもっと反発よくし、もっとパワフルにし、もっとゲージを細くしたい。それがアルミ・ファイバーを加えることで、他の追随を許さないパワーが実現したのだった。 その性能は今でも、色あせることはない。クエルテン優勝の衝撃から20周年、ルキシロンは今年「アル・パワー125」の20周年記念モデルを発売する。そのカラーは"グーガ(クエルテンの愛称)・パープル"と呼ばれるムラサキ。その色は、さまざまなデザインのラケットとも、なじみが良さそうだ。
そして、アル・パワーに対して要望が多かった1.20mmのゲージを実現させた「アル・パワー・フィール」もついに日本初上陸する。ルキシロンの中で最もパワーがあり、最もハードという同ストリングも、多くのプレーヤーを虜にするだろう。アル・パワーについては、もう一つ知っておくべきことがある。約10年前に発売となり、復活を願う声が多かった「アル・パワー・スピン」もリバイバルとなるのだ。5角形の形状が、ボールに食い付くことで、得られる最高のスピン性能も体感してみたいものだ。
2017年は、アル・パワーにとって記念すべき年である。紹介した3つのモデルは、いずれも自信作。冒頭で紹介したように、プロでの流行は、いずれ草の根に影響を与えることになる。一般プレーヤーにも"ポリならルキシロン"という時代が来る予感がする。
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