フレンチオープン4回戦でフェデラーと対戦しセットカウント1-3で敗れたが、フェデラーから1セットを奪ったことで注目を集めたのが21歳のデイビット・ゴフィンだ。ベルギー出身のゴフィンは、このフレンチオープンが初のグランドスラム出場で、実は予選決勝で負けたため本来は本戦に出ることができないはずだった。それがモンフィスの欠場によりラッキールーザーとして本戦入りすると、1回戦で第23シードのステパネック、2回戦で地元フランスのベテラン・クレモン、3回戦でパワーサーブが武器のクボットと強豪選手を連破しての勝ち上がり。そして4回戦でフェデラーと対戦したのだが、フェデラーが「彼はゲームを読むのがうまいね」というほどの試合巧者振りを見せたのだ。
ゴフィンは身長180cm、体重68kgとテニス選手としては細みのタイプで、打つショットもそれほどパワーがあるわけではない。サーブも含めて、一発でエースを奪える明らかな武器は持っていないのだが、フェデラーがコメントした通りゲーム展開が多彩で、相手のショットのコースを読むのがうまいのだ。相手が強打してきても滑らかにボールのコースに入り、パッシングショットやロブをコントロールよく繰り出す。さらにポジション取りも巧みで、少しでも余裕があればコート内にナナメに切れ込んで速いタイミングで切り返す。特にゴフィン自身が「得意なショット」と言うバックでのストレートへの切り返しは、ダウン・ザ・ラインという言葉の通り見事にサイドラインに沿って決まっていく。スピードやパワーよりも、タイミングやキレで勝負するタイプのプレーヤーなので、見ていて非常に面白い。
このゴフィン、プロ転向は09年で、今年年頭は174位からのスタートだった。1月のチェンナイ大会でベスト8に入ったものの、全豪オープンは予選2回戦敗退。その後はチャレンジャー大会を中心に回り、フレンチオープン前のボルドー・チャレンジャーでは1回戦負けを喫していたものの、フレンチオープンでチャンスをつかみ大躍進を遂げたのだ(フレンチ前は109位だったが、フレンチオープン後は64位に)。そして芝のウィンブルドンに移動しても好調は続き、1回戦でオーストラリアの若手エース、第20シードのトミッチを下すと、2回戦はアメリカのレバインに勝利。3回戦で第10シードのフィッシュに敗れたが、ウィンブルドン後のランキングは59位に。
急に現れたかのように見えるが、実はエナンが「ベルギーの男子で次に出てくるのは、ゴフィン。彼が活躍できないわけがない」と言っていたくらい、地元ベルギーでは注目されていた選手。今回の活躍でゴフィンがベルギー人トップのランキングとなったが、ベルギーからはこれまでザビエル・マリース(72位。最高25位)、オリバー・ロクス(104位。最高24位)という試合巧者が出てきている国。ベルギーは小国ながら、2時間ほど電車に乗ればテニスが盛んなパリに行けるという地理的条件を生かし、女子ではエナン、クリスターズなどNo.1選手を輩出してきている。エナンが見込んだゴフィンが、今後どんな活躍をし、どこまでランキングを上げてくるのか注目だ。
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