USオープン2017 REPORT

USオープンにフェデラーが帰ってきた。欠場者も多く出たUSオープンだが、終わってみれば、多くのニューヒーロー、ニューヒロイン、そして数多くの好試合が見られた素晴らしいグランドスラムとなった。

アンドレイ・ルブレフ ターニングポイントになった大会というのは多くのスターにあるもの。アンドレイ・ルブレフにとって、それは今回のUSオープンかもしれない。
アンドレイ・ルブレフ ネクストジェネレーションを代表するプレーヤーである19歳は、今年飛躍的な進歩を遂げてきている。156位から始まったランキングが、6月に100位を切ると、7月、クロアチア・オープンで初優勝を果たすと50位以内にまでランキングを上げていた。「昨年と比較して、フィジカル、テクニック、すべての面で進歩している」(ルブレフ)、自信を持って臨んだUSオープンだった。

初戦ベデネをストレートで退けると、2回戦で相見えたのはディミトロフ。同じPRO STAFFを使用するトップ・プレーヤーである。大方の予想は、ディミトロフだったはず。実際、第1セット、ルブレフは先にブレークされて1−4とリードされてしまう。試合後にルブレフは「攻撃的なプレーこそ僕のスタイル。とにかくファイトすることに集中した」とコメントしているのだが、すると、ミスが目立ったストロークが入りだし形勢が逆転。第1セットを奪うと、低く速いフォアハンドを武器にリズムを取り戻し、ストレートでアップセットに成功する。

この勝利が、彼を加速させたことはまちがいない。ルブレフは続く3回戦でズムルを3−1で下すと第9シード、ゴフィンとの4回戦を迎える。ヒザを痛めているとはいえ、相手はトップ10経験者。接戦となるという予想は覆される。ゴフィンのセカンドサーブを攻撃的に返していくと、持ち前の低い姿勢から放つ電光石火のフォアハンドが次々とウィナーとなっていく。なんとゴフィンからもストレートで勝利をもぎ取ってしまった。

ついにベスト8にまで到達。そこに待ち受けていたのは、ルブレフ憧れの選手でもあるナダル。 「現在の力を知るいい機会だ。ラファにはフットワークと驚異的なディフェンスがあるが、僕にもいいショットはあるし、速いテンポ、速いショットという武器もある。大一番だ。ぶつかっていく」

アンドレイ・ルブレフ 結果的に、奪ったゲームは5(内ブレークは1)。ナダルの牙城は高いものだった。しかし、その中でルブレフは渾身のショットを打ち続け、ナダルを脅かすシーンも見られた。「彼は、今大会、ディミトロフ、ゴフィンに対して、素晴らしいゲームを披露していきた。まちがいなく、次世代のテニス界を担う一人だろう。彼には素晴らしい未来が待っているはずだ」、試合後、ナダルは称えた。

「グランドスラムの準々決勝でNo.1のラファと戦えた。素晴らしい経験だし、これからどれだけレベルアップしなければいけないかもわかった。僕はもっとハードに練習すべきだ。そして、すべての弱点を克服したい。次に対戦する時を楽しみにしてほしい」。敗れたルブレフは、そう語った。

30代と10代がグランドスラムの準々決勝以上で対戦するのは、1990年USオープンで対戦したサンプラス(当時19歳)とマッケンロー(同31歳)以来。サンプラスが後に黄金時代を築いたことは言うまでもない。そのサンプラスを始めとする歴代王者が手にしてきたPRO STAFFを手にするルブレフ、彼にはどんな未来が待ち受けているのだろうか。

ロジャー・フェデラー
ロジャー・フェデラー 「ラファとここでプレーすることは楽しみだ。全豪のような素晴らしい戦いを、素晴らしい空気の中でやってみたい」、「ここ数日で数セットを行ったが、(背中の)感覚は悪くない。とてもうれしいよ」。

2年ぶり出場となったUSオープン、大会中、何度となく質問が飛んだのが、ナダルとの対戦について、そして背中の状態についてだ。ロジャー・フェデラーいわく"問題はない"。そして初戦のティアフォー戦に臨んだ。

初戦は難しい戦いとなる。試合開始直後、ブレークされると第1セットを落としてしまったのだ。第2セット、第3セットを奪ったものの、試合はフルセットに。危うい展開となったが、なんとか試合をものにする。再度、背中は問題ないと強調したフェデラーは、「準備が少し足らなかったことが原因」と語った。

2回戦の相手はユーズニー。パワフルなストロークを武器とする相手に対して、試合開始から翻弄して第1セットを6−1で奪う。しかし、これで一安心...とはいかなかった。調子の上がったユーズニーのショットに手こずると、ここからフルセットの勝負となってしまう。最後は振り切ったものの、初戦に続き、不安の残る試合となった。
「準備の面で、少し妥協してしまったためだろう。ただ、まだ私は勝ち残っている。もっと安定した戦いをしていきたい」

その言葉どおり、続く3回戦(対ロペス)、4回戦(対コールシュライバー)は終始安定したプレーでストレート勝ちを収める。準々決勝の相手は、デルポトロ。思い出されるのは2009年の決勝。6連覇をかけて臨んだその舞台で対戦し、敗れた相手である。
ロジャー・フェデラー 「ラファが最も手強いし、優勝の最有力候補であることは変わらない。でも、デルポトロも同じく手強い。あのグレートなフォアハンドを打ち返すことは簡単ではない」
警戒をして臨んだ準々決勝だった。第1セットは終盤でフェデラーがミスをして奪われてしまうが、第2セットは持ち前の速い展開に持ち込んで奪い返す。そして迎えた3セット目はタイブレークとなった。3-1、4-2、6-4...先にミニブレークしたフェデラーは、リードを保つ。7-6、8-7と2度のセットポイントを握ったがものにできず。一度、失った流れを取り戻すことはできなかった。

「今日はデルポのほうが上だったということ。ベスト8という結果には満足している。(優勝できなかったことについて)残念には思っていない。なぜなら、今シーズンは十分いい結果を出すことができているからだ」

今年、PRO STAFF RF97 AUTOGRAPHを相棒に、全豪オープンとウィンブルドンを制した。フェデラーにとって年間2冠は、2009年以来。"十分いい結果"というのもうなづける。36歳にして、素晴らしいシーズンを送ったフェデラー。まだまだ、その活躍を見たいところである。



ファン・マルティン・デルポトロ
ファン・マルティン・デルポトロ 昨シーズン、左手首の故障から復帰すると、1大会優勝、五輪銀メダルと結果を遂げたファン・マルティン・デルポトロ。だが、2017年に入ると、イタリア国際でのベスト8がベスト・リザルト直前のシンシナティも3回戦敗退と低調な中でUSオープンを迎えた。

デルポトロにとって今大会は、2009年に優勝を果たした「特別な思いがある大会」。だからこそ、やる気も高かったのだろう。3回戦まではオール・ストレート勝ち。4回戦のティエム戦は、先に2セットを奪われる苦しい展開となったが、大逆転勝利で準々決勝にコマを進めた。この試合、デルポトロは発熱による体調不良のため、「途中棄権しようと思った」という。しかし「そこで観客たちの応援が聞こえてきて、それがエネルギーに変わった」と語っている。

準々決勝は、8年前の決勝の再現となるフェデラー戦。この試合は、紙一重の攻防となった。セットカウント1−1で迎えた第3セットタイブレーク。6−6でのサーブでダブルフォールトを犯してしまう。奪われれば、試合を流れが変わる局面だったが、ここでフェデラーがミス。セットを奪うと、デルポトロのハンマーフォアが破壊力を発揮する。セットカウント3−1で勝利をもぎ取った。

「今大会のベストゲームだ。フォアハンド、バックハンド、サーブとすべてがうまくいった」というデルポトロ、BURN FST 95から次々と好ショットを放ち、ベスト4進出を果たした。ファン・マルティン・デルポトロ その準決勝は、8年前と同じ相手、ナダルだ。第1セットを奪ったデルポトロだったが、激戦の疲れが豪快な動きを鈍らせた。「ティエムとロジャーの2試合、体調不良もあって、疲れ切っていた...」とデルポトロ。セットカウント1−3で敗れ、大会を終えた。

「ケガでツアーを離れていた時期には、こういった場に戻ってこられるとは、まったく考えられなかった。何とも言えない気分だ」
それは"本当の意味でやっとツアーに戻ってこられた"ということでもあるだろう。全力でのプレーができるようになった今、彼はどの大会でも優勝候補となる。そう確信させたUSオープンだった。

パブロ・カレーニョ・ブスタ
2017年のパブロ・カレーニョ・ブスタの活躍を見て"やっと来た"と思う人もいるかもしれない。2013年のMIP(最も進化したプレーヤー)が、満を持してトップに上り詰めようとしている。今年は全豪3回戦進出、全仏ベスト8だったが、USオープン、ベスト4と結果を残した。

パブロ・カレーニョ・ブスタ ブスタの真骨頂といえば、スペイン人らしい攻撃力と安定感を兼ね備えたストロークを軸としたオールラウンドさにある。それは「BURN 95 CV REVERSE」の性能を生かしたものと言ってもいい。準決勝の相手、アンダーソンも「ベースラインでの力こそが彼のすごさ」と認めている。

すべてストレート勝ちで4回戦に進むと、売り出し中の若手シャポバロフ相手にも3セットともタイブレークの末に3−0で下す。準々決勝は、親友シュワルツマンとの対戦。拮抗した場面こそあったものの、相手のセカンドサーブを着実にポイントにつなげると、またもストレート勝ちを果たす。「ベスト4、興奮が抑えられない」とカレーニョ・ブスタ。

準決勝で戦うアンダーソンとは今季0勝1敗、「その時より調子が良い」と自信を持って臨んだ。そして、試合開始からカレーニョ・ブスタは好ショットで相手を押していく。ミスが目立つアンダーソンから先にブレークを奪うと第1セットを6−4で奪う。決勝進出まで、あと2セット...。しかし、そこからアンダーソンが息を吹き返した。ファーストサーブが入り出した相手に対して、良い展開も作ったが、流れを取り戻すには至らなかった。

「いい試合だった。プレーに悔いはない。集中して自分のプレーをやり通せば、勝利へとつながる。今大会、僕は多くのことを学べた」  キャリア初のGSベスト4、この経験がどう生かされていくのか。遅咲きのスターから目が離せない。

マディソン・キーズ
「決勝でいいテニスができなかった。けど、私の手にはグランドスラムのトロフィーがある。それが本当にハッピーなこと」

マディソン・キーズ マディソン・キーズの2017年は、手術(昨年11月)をした左手首のリハビリからスタートした。復帰したのは3月。全仏、ウィンブルドンは共に2回戦敗退、さらに初戦負けを経験するなど、苦しい時期も経験していた。転機となったのは8月頭、優勝したバンク・オブ・ザ・ウエスト・クラシックだろう。そして、半月後、USオープンに臨んだ。

開幕前日の会見では、「コンディションが本当にいい。戦うのが楽しみだわ」と自信をのぞかせていた。1回戦メルテンス、2回戦マリア、3回戦ベスニナまで失セットは1。「私はファイター」と語るキーズ、芯で捕らえることで最高のパワーを発揮する「ULTRA TOUR 97」の相性は抜群だったと言える。攻撃的なショットが相手を追い詰める。4回戦で優勝候補の一人、スビトリーナを、準々決勝でカネピを破ると、準決勝では、ココ・バンダウェイとのアメリカ人対決に。バンダウェイは第1シード、プリスコワを破っているだけに無論好調である。その相手に、対して6−1、6−2。常に主導権を握り、反撃の隙を与えずに完勝した。

決勝は、大の親友であるスティーブンスとの対決となる。しかし、攻め続けた代償が疲れとなって出たのかもしれない。右太ももにテーピングを巻いて出場した試合、そのプレーは準決勝までのそれとは明らかに違っていた。アンフォーストエラーは30(相手は8)とミスが続いて、わずか61分で初のグランドスラム決勝は終わりを告げた。 「ほかの誰かに負けるのではなく、彼女に負けたことは良かった。最後にいいプレーができなかったけれど、この2週間、経験できたことはとてもハッピーなことだわ」

この2週間に見せたプレーは、キーズの大きな経験となったはず。今大会で見せた攻撃的なテニスができれば、どんなプレーヤーとも戦えるはず。近い将来のグランドスラム制覇を予感させる戦いぶりだった。

ビーナス・ウイリアムズ
ビーナス・ウイリアムズにとって、年齢とは単なる数字に過ぎないのだろう。ビーナス・ウイリアムズ プロ転向から23年目、37歳となった今年は、全豪、ウィンブルドンで準優勝、全仏はベスト16と特筆すべき結果を残してきている。長らく、アメリカをけん引してきたビーナスだが、BLADE SW104 AUTOGRAPH CVを武器にしたショットは衰えを見せない。そして初出場から21年目、母国でのグランドスラムで、その力を見せつけることとなった。

1回戦は18歳年下のクズモワ。セットを奪われる難しい展開となったが、落ち着いたプレーで退けると、2回戦ドダン、3回戦サッカリは貫禄のストレート勝ち。ここで妹・セリーナに、女の子が誕生といううれしいニュースが届く。「言葉にならないほどのうれしさ」と喜んだビーナスは、4回戦スアレス・ナバロ、接戦となった準々決勝クビトワ戦にも勝利して7年ぶりとなる準決勝進出を果たす。

36年ぶりのオールアメリカ人対決となった準決勝の相手は、ビーナスを「私たちの偉大なリーダー」と語るS.スティーブンス。1セットオールで迎えた第3セットは死闘となったが、5−5で迎えたサービスゲームで痛恨のブレーク。決勝進出は叶わなかった。
「運がある日もあれば、ない日もある。仕方ないこと。できる限り、攻撃的にプレーしたけれど、彼女のほうが少しだけ良かった」、アメリカのレジェンド、ビーナスは母国の若き才能を称えた。

ペトラ・クビトワ
昨年12月、暴漢に襲われ、手術を受けた利き手である左手はいまだ完治はせず。まずは復帰、そして大会優勝(バーミンガム大会)と目標をクリアしてきたペトラ・クビトワにとって、次なる目標はグランドスラムでの結果だっただろう。そペトラ・クビトワ して、今大会、彼女は証明してみせた。2年ぶりのベスト8進出である。

ハイライトは、4回戦ムグルザ戦だ。大会中、ランキング1位が確定したウィンブルドン覇者を相手に、第1セット、1−4といきなりピンチを迎えた。しかし、ここで「落ち着いてラリーを続けるようにした」(クビトワ)すると流れが一変。PRO STAFF 97から放たれるボールがコースを突き、ストレート勝ちで退けた。勝利の瞬間、クビトワは両手で顔を覆って喜んだ(後に自身のTwitterでその表情がすべてを物語っていると語っている)。

続く準々決勝、ビーナス・ウイリアムズ戦はフルセット、タイブレークまで粘ったものの惜敗。 「この地でいいプレーを見せられたことが、何よりうれしい。再び準々決勝まで進めるとは考えもしなかった」

試合後に語ったクビトワ。ニューヨークのファンは、彼女の苦闘を知っているのだろう。試合後コートをあとにする彼女に、アーサー・アッシュ・スタジアムに集まった23,000人の観客がスタンディングオベーションでカムバックを称えた。