フレンチオープン・プレビュー

2013.05 :: 次世代No.1候補。G・ディミトロフと錦織圭がその本領を発揮!

ついに覚醒したディミトロフがNo.1ジョコビッチを撃破! 錦織 圭はNo.2フェデラーにフルセットで勝利!!

5月5日からスペインで始まったマドリード大会。 グランドスラムに次ぐ規模のATPマスターズ1000のカテゴリーに位置するこのトーナメントは、獲得できるポイントが大きいだけでなく、トップクラスの選手には出場義務があり否応なしにポイントがATPランキングを決める際に参入されてしまう。
そのため、出場選手はグランドスラム並に気合を入れて臨んでくるのが特徴だ。

ディミトロフ 特に、グランドスラム中、まだ全仏オープンでだけタイトルのないジョコビッチは、今年のクレーシーズンにかける意気込みが違った。 このマドリード大会の前に出場したATPマスターズ1000モンテカルロ大会では、決勝でナダルを破り大会初優勝。 ジョコビッチはモンテカルロを拠点としているため、その第二の故郷でもある地で優勝することは念願だったようで、 優勝スピーチでは「どうしても優勝したかった。最高のパフォーマンスができた」と喜びを語っていた。
そして、勢いに乗って乗り込んできたマドリード大会。第1シードとしてこの大会も制して、全仏オープンにいいリズムで向かいたいところだったが、それを阻んだのが伏兵グリゴール・ディミトロフ。 この試合、タイブレークに入った第1セットを先取したディミトロフだったが、再びタイブレークになった第2セットを奪ったのはジョコビッチ。
ここまで激しいラリー戦が続いていたので、これまでのディミトロフであれば王者ジョコビッチ相手に最終セットはトーンダウンしてあっさり振り切られてしまっていただろう(事実、3月のマイアミ大会でジョコビッチと対戦した時は、第1セットはタイブレークで落とすと、第2セットは1-6と突き放されてしまった)。 しかし実際はその逆で、第3セットを6-3で奪い勝利したのはディミトロフだったのだ。

このディミトロフは、片手バックということだけでなく、オールラウンドにクリエイティブなテニスを展開することから欧米では『ベビー・フェデラー』という愛称で呼ばれている。
ジュニア時代(08年)はウィンブルドン・ジュニア、USオープン・ジュニアを制し、ジュニアランキングNo.1にもなっているから、その実績とプレースタイルを知っている者ほど、彼の輝かしい未来を想像したことだろう。 しかし、創造性豊かなテニスは、現代テニスに求められるステディなストロークとは対極にあるスタイル。 それ故、短いポイントで決まる時はいいのだが、ラリーが長くなるとそれに耐えきれず自ら無理をして自滅という傾向が強かった。
ランキングでトップ100入りしたのは2011年になってからで、それ以降も50~60番台を行き来する中堅選手となってしまっていた。 しかし、それがガラリと変わったのが今年2013年。ようやく持ち前のテニスの質の高さと展開の作り方のバランスが取れてきて、年頭のブリスベン大会で準優勝すると(マレーに敗退)、2月のロッテルダム大会ではベスト4。そして、マドリード大会前のモンテカルロ大会ではベスト8まで進み、クレーでナダルとファイナルセットに及ぶ大接戦を演じている。そうした前兆があって、このマドリードでNo.1であるジョコビッチに勝利。
これが、ディミトロフにとって、トップ10へ入るための大きなキッカケとなるに違いない。


ついに覚醒したディミトロフがNo.1ジョコビッチを撃破! 錦織 圭はNo.2フェデラーにフルセットで勝利!! 錦織 圭 そして、この91年生まれのディミトロフに負けていられないとばかりに奮闘したのが、我らが錦織 圭。
錦織は1回戦でメルツァー、2回戦でトロイツキと試合巧者を連破すると、何と3回戦ではランキングNo.2のフェデラーを6-4、1-6、6-2で破ってしまったのだ。
最近の錦織は展開のリスクマネージメントが完全にトップクラスのそれで、自分は確率の高いプレーをしながら相手にリスクを押し付けてポイントを積み上げ、要所で攻勢に出る強い選手特有のテニスをするようになってきた。 これはクレーで最も必要な能力と言えるだけに、錦織がこれを自分のものとしつつあるのは心強い。 錦織はこれがフェデラーとの2回目の対戦だが、初顔合わせとなった11年バーゼル大会決勝では1-6、3-6で敗れている。
錦織はジョコビッチを下して勝ち上がってきていただけに、『フェデラーにも善戦するのでは?』という希望的観測もあったが、結果は完敗。 錦織が「フェデラーの展開は、他のプレーヤーと違う」とコメントするほど、2人の間には歴然と差があった。
それから約1年半を経て、そのフェデラーにフルセットでの勝利。上位選手、特に4強の選手にはラッキーで勝つことはできない。 勝ったということは、理由がある。錦織がその理由を自分なりにかみ砕き、そして自信に変えていけば、今年中にトップ10に入るのも夢ではないはずだ。