US OPEN 2013 PREVIEW~男女共に近年稀に見る混戦に~

US OPEN 2013 PREVIEW

フェデラー、錦織、クビトバ、ロブソンは それぞれの答えを用意できるか?フェデラーは自分の パフォーマンスを取り戻せるかがカギ

フェデラーまだ発展途上と言えた03年以来、初めてトップ4から落ちるなど不振にあえいでいるのが今季のフェデラー。ウィンブルドンでは36大会に渡って続けてきたグランドスラムの連続ベスト8以上進出の伝説的な記録も途切れてしまった。7月には予定にはなかったドイツとスイスのクレーに急遽出場し、フェイスサイズの大きいパワー系ラケットをテストするなど、まさに背水の陣で臨むのがUSオープンだ。

テニス史上最強選手とも言われるフェデラーだが、既に32歳。衰えが出始めてもおかしくないと誰もが考える状況だが、彼自身は少しも諦めてはいないからこそ夏のクレーで新しいラケットを試すようなリスクを取ったに違いない。結果的には若手のデルボニスと、ビッグサーバーのブランズに敗れてしまい、ツアーにおける威圧感の低下を招いたと言えなくもないが、そんな些細なことよりも、新ラケットを含めて自分の戦力を底上げし本番であるUSオープンで結果を残せれば全てを帳消しにできるぐらいには考えていそうな気配もある。

フェデラーにとってのこのUSオープンは、ある意味では新しい挑戦の舞台。ジョコビッチとマレーはまずまず順調。ナダルも復調の兆しを見せているが、今のフェデラーにとっては、彼らとの戦いを心配するよりも、まず自分のパフォーマンスを取り戻すことが目的になるはず。そして、彼がそういう前向きなメンタルで大会に入れれば、大会そのものも面白くなるだろう。

錦織が最も得意とするUSオープンでの輝きに期待!
錦織圭錦織にとっては、昨年3回戦でチリッチに悔しい負け方をしたことに対しての彼なりの解答を期待したい。その時はチリッチの跳ね上がるサービスに対応できず、ミスを重ねるうちに敗れてしまった。しかしその悔しさが、その後の秋のシーズンでは存分に生かされ楽天オープンでの優勝などにもつながったが、やはりグランドスラムでのリベンジは果たしておきたいところ。今季の目標に掲げていたトップ10も目前で、このUSオープンでシードを守れれば届く可能性も十分にあるだけに、内容だけでなく結果も期待したい大会になる。

何より、ショットの威力と角度で相手を崩しながら、前に入って攻めたてていく錦織のスタイルは、USオープンのハードコートで最も輝きを増す。フィジカルさえ万全であれば、誰が相手でもチャンスがあるのが彼のスピード。リズムとテンポを支配して押し切るだけでなく、逆に相手に敢えて打たせながらカウンターを取るような精神的な余裕も見せられれば、ベスト8、あるいはそれ以上も十分に手が届くだろう。錦織がどんなテニスで勝とうとするのか。この大会はそこにも注目しておきたい。

女子は2人のサウスポー ロブソンとクビトワに注目!
ロブソン女子ではセリーナ・ウイリアムズがやはり優勝候補の大本命には違いないが、あえて注目したいのはクビトワとロブソン。女子きってのパワー系サウスポーの二人だ。ともにフラット系の強打を持ち球とし、当たり出したら手が付けられないのも同じ。当然、波も激しいのだが、何が起きるかわからない勝負の面白さを楽しませてくれる女子では希有な存在だ。

特にロブソンは、昨年、クリスターズや李 娜といった、実力も実績もある選手たちを次々と破り大会序盤の話題をさらった。若手特有の怖いもの知らずの強さで、女子きってのパワーヒッターたちを相手にポジションをどんどん上げて強打を連打するプレーぶりは圧巻だった。今季はまだ目立った戦績は挙げられていないが、それでもクレーでラドワンスカやヴィーナス・ウイリアムズを破るなど予測のつかなさは相変わらず。このUSオープンでも驚くような番狂わせを期待してもいい存在の一人だろう。


クビトワもう一人サウスポー・クビトワは、ツアーの中では危険な存在ではあるのだが、現状はアップダウンが激しいのが玉に瑕。。セリーナが相手でも蹂躙できるような爆発力を秘めつつも、下位の選手にも負けかねない危うさがある。それも彼女の魅力と言ってしまってもいいのだが、今季は課題だったフィジカルの絞り込みが見た目にもわかるレベルになりつつあり、動きの切れそのものは上がって来ている。また、彼女のキック力のあるサービスはハードコートでも大きな武器になるだけに、展開が早くなりやすいUSオープンでは期待できる。目が離せない選手だ。

ディミトロフは爆発の予感! 逆襲を期待したい伊藤竜馬
ディミトロフ男女を通じて注目しておきたいのは、ディミトロフだ。フォームが大きく、クレー的なスライドフットワークを多用する選手だけに、まだ高速系のサーフェスでは不利を被る段階から脱し切れてはいないものの徐々に対応しつつある。何よりボールを加速することにかけては独特のセンスを持ち、どこからでもウィナーを狙える能力は非常に高く、それが「フェデラーの再来」と呼ばれている理由でもある。大会序盤を無事に勝ち上がり上位勢に真っ向勝負を挑む場面が来れば、何が起きるか分からない。そうして勝ち方を覚え、裏付けのある自信を構築できれば、いつトップ10に駆け上がって来てもおかしくない。グランドスラムで優勝を狙えると言える数少ない選手の一人なのは間違いないだろう。

伊藤竜馬そして最後に伊藤竜馬にも触れておきたい。昨年はストレートインを果たしたが、今年は予選から。チャレンジャー大会でも思うような結果が出せず、「勝ちたいという気持ちが強くなり過ぎている」と本人もブログの中で言葉にしているが、今のテニス界では少しでも活躍した選手は即座に研究されて対策を立てられる。今のスランプ状態は、昨年の活躍で彼の名前とプレーが知られたことによることでもあるのだろう。これを打破するには底力を上げるしかないが、結果を出せる実力があるのは去年の結果が物語っている通り。日本男子では珍しく、相手のプレーに対応するのではなく、自分のテニスを相手に押し付けて勝ち切れるのが伊藤の魅力。ドラゴンの派手な逆襲劇に期待したい。