全仏オープン後、自己最高位となるランキング11位をマークした錦織。ウィンブルドンを経て、得意の北米ハードコートシーズンで一気にトップ10入りといきたいところだったが、7月下旬からのワシントン大会はベスト16、続くマスターズ1000カナダ大会ベスト16、シンシナティ大会1回戦負けと思うような成績を挙げられずにUSオープン入りした。
そのUSオープンでは、第11シードが付いた錦織。1回戦の相手は、予選を勝ち抜いてきたイギリスのエバンス(世界ランキング172位)。片手打ちバックで、スライスやボレーなどさまざまなショットを器用に打ち分けてくるイギリス期待の若手だ。試合は、ボールの回転を微妙に変えてラリーに変化をつけるエバンスの少しトリッキーなプレーに錦織がリズムを崩され、第1セットを6-4で奪われてしまう。それでも、力強いプレーで試合が進むうちに次第にペースをつかんでいくのが錦織の強さ。ここから逆転してくれるはずと期待していたが、この日の錦織には覇気がなく、そのままずるずるとエバンスに押されるかたちで、まさかの1回戦負けを喫した。
ウィンブルドンで痛めたヒザの状態は「問題ない」とのことだったが、「ヨーロッパ遠征でやり切ったという感覚があり、なぜか活気が沸いてこなかった。こんな感覚は初めて」とやや疲れた表情を見せた錦織。錦織ほどの才能があっても少し集中力がなくなると、足もとをすくわれるのが男子の世界なのだ。
また、予選から出場していた伊藤竜馬は、予選2回戦をクリアし予選決勝まで勝ち進んだが、ダンセビッチとのフルセットの接戦をものにできず敗退。3年連続の本戦出場とはならなかった。
今年のグランドスラムは、全豪オープンこそベスト4だったものの全仏オープンはベスト16、ウィンブルドンは2回戦敗退と以前の成績に比べやや陰りが見え始めているフェデラー。ウィンブルドン後の大会でも目立った結果を残せず、このUSオープンのシードも第7シードまで落ちてしまった。
しかし大会がスタートとすると、そこにはかつての強いフェデラーの姿が。サーブとストロークでポイントを奪うテンポの速いテニスで、3回戦まですべてストレート勝ち。2回戦後は「今日は長いラリーをしなかったから」と試合後に練習するほど好調ぶりを見せていた。
そして続く4回戦ではケガから復活してきたロブレドと対峙。この4回戦は雨の影響で試合コートがセンターコートからルイ・アームストロング・コートに移動となり、フェデラーにとっては06年4回戦以来となるルイ・アームストロング・コートでの試合となった。試合後、このコート移動については「コートの移動は問題にしたくない」と語ったフェデラーだが、雨による影響を「湿気があったからグリップの握りやタイミングに影響があったとは思う」と振り返ったフェデラー。微妙にタイミングが合わなかったようで計43本のアンフォースドエラーを重ね、これまで10戦全勝と得意にしていたロブレドにストレートで敗れてしまった。それでもフェデラーは「ネガティブにはなっていないよ。まだ自分がより良くプレーできることを信じている」とコメント。「目標は再びNo.1になること」とテニスへの情熱も失っていないようなので、今後の室内ハードでの巻き返しに期待したい。
今大会第1シード&ディフェンデング・チャンピオンとして、圧倒的な強さを見せたのがセリーナ・ウイリアムズだ。9月26日で32歳になるベテランだが、「私はお金のために戦っているんじゃない。真剣にテニスの試合をしているの」と勝利に対するモチベーションは非常に高い。また、その強さは誰の目から見ても明らかで、4回戦でアメリカの後輩スティーブンスに第1セットを4ゲーム取られた以外、決勝まで相手に1セット3ゲーム以上を与えずに勝ち上がってきた。
そんなセリーナと決勝で顔を合わせたのが第2シードのアザレンカ。ウィンブルドンでは早々に負けたものの(2回戦でペンネッタに敗退)、その後のカールスバッド大会で準優勝、シンシナティ大会では決勝でセリーナを破って優勝するなど調子を上げてきていた。そして今大会でも3回戦のコルネ戦、4回戦のイワノビッチ戦ではいずれも第1セットを落としてからの逆転勝ち。持ち前の攻撃面に粘り強さもプラスされ、セリーナに対抗できるのはアザレンカだけと見られていた。
そして始まったこの2人の決勝戦は、「最初のポイントからお互いに勢いがあったわ。水か何かが沸騰するような勢いが、ね。とても素晴らしい試合だった」とアザレンカが試合後コメントしたほど、激しいラリーが続くシーソーゲームに。それでも、第1セットを7-5先取したのはパワーで押したセリーナ。すると第2セットもセリーナが主導権を握り、5-4アップと6-5アップで2度サービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを迎える。が、驚異の粘りを見せるアザレンカを崩せず、逆にアザレンカがタイブレークに突入したこの第2セットを7-6(6)で奪取。こうなるとアザレンカに流れが傾くかに思われたが、最終セットは高い集中力でさらにギアを上げたセリーナが6-1とアザレンカを突き離して勝利。見事2年連続5回目の優勝を遂げた。
試合後、「今大会は安定したプレーができたわ。私はグランドスラムを本当に愛している。もっともっと勝ちたいわね」と話したセリーナ。今後も勝利に対して貪欲に向かっていくだろう。一方敗れたアザレンカも「気持ちを全部出して常にファイトしたわ。素晴らしいチャンピオンに負けたけれど、大事なのはまた顔を上げて頑張ることよ」と前向き。今後の残りのシーズンもこの2人が中心となるのは間違いないだろう。
昨年、右手首の手術を行ったペンネッタ。ツアーに復帰してきたのは今年の3月で「復帰までは本当にタフだった。長い間プレーに慣れていないと、手に問題がなくても足やお腹に問題が出てきたりする。とにかく私は頑張ったわ」と苦労があったようだ。それでも、このUSオープンでは過去3度ベスト8をマークするなど相性がいいペンネッタ。今大会では安定したストローク力とダブルスで培ってきたネットプレーを武器に、2回戦でエラーニ、3回戦でクズネツォワ、準々決勝でビンチとシード選手を次々と撃破。準決勝ではアザレンカにストレート敗れたが、グランドスラムでは自己最高成績となるベスト4をマークした。「この大会はベストを尽くして勝ててよかった。良い大会だったわ」と満足げなペンネッタ。この調子で活躍できればトップ10も見えてくる。
そして、マカロワとスアレスナバーロがUSオープンでは初のベスト8に進出。マカロワは4回戦でこれまで一度も勝利&1セットも奪ったことがないラドワンスカを相手にストレートで勝利。準々決勝では李娜に惜しくも敗れたが、相手をコートの外に追い出し、オープンスペースに決めていく得意の展開の速いテニスを見せた。
一方のスアレスナバーロは今年の全仏オープン、ウィンブルドンともにベスト16をマークし調子を上げてきていた。今回のUSオープンでは、ダイナミックな片手打ちバックハンドで、4回戦ではケルバーにフルセットで勝利。準々決勝ではセリーナに負けたが、これからもどんどん上位に食い込んでくる勢いがある。