ラケットをこれまでのSTeam 95からBURN 95に持ち替えて、今シーズン最初のブリスベン大会に挑んだ錦織 圭(世界ランキング5位)。その新ラケットBURN 95は、錦織自らがウイルソンに「これまで以上にフリーポイントが取れるように、もっとスピードボールが打てるラケットにして欲しい」とリクエストした結果作られたモデルで(フェイス面の内側にフレームの変形率が抑えられる新素材≪ハイパフォーマンスカーボンファイバー≫を使用しているのが特徴)、実際にブリスベンで使った錦織は「サーブのスピードが速くなった」と効果を実感しているようだ。
前哨戦のブリスベンでは第2シードが付き、初戦となる2回戦のジョンソン(37位)戦、準々決勝のトミッチ(53位)戦ともにストレート勝ち。準決勝ではフルセットの末ラオニッチ(8位)に敗れたが、3セットともタイブレークに持つれ込む大接戦で、実はこの大会、錦織は自分のサービスゲームをすべてキープしている。昨年の錦織のサービスゲームキープ率が年間を通じて84%だったことを考えると、母数は少ないが今年はブリスベン終了時点で100%なので、≪サービスゲームに関しては錦織の期待通りラケットが機能している≫と言って差し支えないだろう。
また、5位になったことで錦織に対する注目度は上がり、昨年、全豪オープンを取材した日本の記者&カメラマンはテレビを除き26名だったが、全豪オープンのデイレクターによると、実際に取材申請の許可が下りた38名に対して、今年は60名近くの取材申請があったという。それだけ錦織の動向が日本で注目を浴びているということなのだが、錦織はこれに関して「日本のメディアから注目されているけれど、自分ができることをやっていきたい」とマイペースの様子。
そうした周りの過熱気味の報道に惑わされることなく、「以前より自信がついてきている。昨年のUSオープンのあとにいい試合ができて2大会連続で優勝し、初めて最終戦にも出ることができた。オフシーズンはしっかりトレーニングもできたので、このランキングをキープして上を狙っていきたい」と自分のテニスに対する自信を深めており、それが「今年はグランドスラムでコンスタントにベスト4以上に進んで、また決勝まで勝ち上がっていけるようになりたい。あとは、まだタイトルがないマスターズ1000大会での優勝も狙っていきたい」という今シーズンに対する前向きなコメントにもつながっている。
実は、この錦織、昨年の楽天ジャパン・オープンの時から市販より長めのオーバーグリップを使用している。ラケットの全長は市販品モデルと同じだが、「しっかり上まで巻くにはストレスだった」(錦織)こともありウイルソンが特別に作成。その際、彼のサインを刻印し錦織に渡したところ、「名前に色を入れられるのであればグリーンにしてほしい」という要望が錦織からあり、現在はそのグリーンの名前入りのオーバーグリップテープを使用しているのだ(市販はされていない)。
その錦織、第5シードが付いた全豪オープンで順当に勝ち上がると、4回戦でフェレール、準々決勝でワウリンカ、準決勝でジョコビッチと当たるドローとなっている(フェデラーとナダルは反対の山)。昨年のUSオープン(4回戦ラオニッチ、準々決勝ワウリンカ、準決勝ジョコビッチ)と似た対戦だが、今度はどうなるか。全員強敵だが、グランドスラムという大舞台で一度は勝っている相手だけに、今回も期待を込めて活躍を見守りたい。
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