US OPEN 2014 REPORT

2015年全豪オープンREPORT

2015年全豪オープンREPORT 錦織対策として、対戦相手 が選んだ「パワーテニスでの短期決戦」

準々決勝で前年優勝者のワウリンカに敗れベスト8(3年振り2度目)に終わった錦織の全豪オープンは、第5シードということを考えると順当と言え、同時に今後グランドスラムやツアー大会で勝ち上がっていく厳しさを改めて知ることになった大会と言える。

錦織圭そもそもの話だが、今回の全豪オープンで錦織はドロー的に『厳しい山』に入ってしまった。第5シードなので準々決勝で第4シード以上と当たるのはしようがないとして、それでも4回戦でフェレール(第9シード)、準々決勝でワウリンカ(第4シード)、準決勝でジョコビッチ(第1シード)と対戦するという位置はきついドローだった。フェレールとの試合では体力が削られる消耗戦が予想されたので、続く準々決勝でこの全豪オープンを得意としているワウリンカと当たるのは厳しいドロー(ワウリンカは過去2年、この全豪でジョコビッチと5セットに渡る大接戦を繰り広げている。13年は最終セット12‐10でジョコビッチ、14年は最終セット9‐7でワウリンカが勝利。今年も2人はフルセットを演じ、勝ったジョコビッチがそのまま優勝)。もし、そのワウリンカに勝っても、準決勝で待ち構えているのは11~13年の3連覇を含めこの全豪オープンで4度優勝しているジョコビッチ。この山を勝ち上がるのは至難の業と予想された。

さらに昨年のUSオープンで準優勝したことで、対戦相手からの『マーク』が強くなったことも改めてこの全豪オープンでは確認された。事実、1回戦で対戦したアルマグロ(元ランキング9位。左足のケガでランキングを落としていたが、錦織との対戦成績は1勝1敗)だけでなく、2回戦のドディグ、3回戦のジョンソンともに、錦織に対しパワーテニスでの短期決戦型勝負を挑んできた。『ラリー戦になると錦織に適わない』と考えてのことで、結果的に5セットマッチの試合では錦織の安定感が上回り勝利したのだが、これからも下位選手はこうした一発狙いでアップセット(番狂わせ)を狙ってくるだろう。

そうした面からみて意外だったのは、4回戦で対戦したフェレール。この試合は「ボールを打つ感覚が良くて、コート内に入って速いタイミングで攻撃することができた」と錦織が好調だったこともあるが、フェレールが放つストロークの球足が短かったことも錦織の攻撃力を高めることにつながり、「すんなり勝ててビックリしています」と錦織がストレート勝ち(6‐3、6‐3、6‐3)。錦織圭フェレールは今年の開幕戦ドーハで優勝(ジョコビッチ、ナダルが早期敗退)、この全豪オープンでも1回戦ベルッキ(4セット)、2回戦スタコフスキ(4セット)、3回戦シモン(第18シード。4セット)と32歳の体にとっては厳しい試合が続き、錦織戦の時には十分な体力が残っていなかったことも錦織には幸いした。

だが、準々決勝の相手ワウリンカには隙がなかった。この全豪オープンのコートを得意としているだけでなく、昨年のUSオープン準々決勝で錦織に敗れていることもあり、「USオープン時に比べ明らかにワウリンカのサーブが良かった。前回とはコースも変えてきて、逆を突かれました」(錦織)としっかり錦織対策を練ってきた。また、「ストロークに深さと速さがあった」(錦織)ので、錦織が得意とする速いテンポでのラリー戦に持っていけず、結局、錦織はワウリンカのパワーと早めの仕掛けに屈するかたちでストレート負け。上位選手もしっかりと錦織をマークしていたことが確認できた試合となった。

今後、錦織は今回の全豪オープンのように『リズムの作りにくい』早めの展開を強いられる試合が多くなるだろう。それが3セットマッチのツアー大会であれば下位の選手相手でも少しのミスが命取りになり、5セットマッチのグランドスラムであれば上位選手が壁となって立ちはだかってくる。それを錦織はマイケル・チャンコーチとどのように乗り越えていくのか? 今の5位からランキングを上げるには、それへの取り組みがカギを握ることになるだろう。


自分で作った『気持ちの壁』に敗退
全豪オープンとしては2年ぶり3度目、グランドスラムとしては昨年のウィンブルドン、USオープンに続いて3大会連続出場となった伊藤竜馬。過去2回の全豪オープンではいずれも1回戦をクリアしているので今回も期待されたが、相手は第32シードのクリザンと厳しい対戦となった。

伊藤竜馬このクリザン、昨年の全仏オープン1回戦で錦織に勝利していることから、伊藤も対戦前は「軌道の高いボールを打ってくる左利きのクレーコーター」と見ていたのだが、実際に対戦してみると「鋭いストロークを打ってきました。特に回り込みフォアはどちらにボールが来るのか分からなかった」と鋭いストロークを展開。それでも伊藤もオフシーズンに「動きの中でのバランスを保ったスイングなど充実したトレーニングができました」という成果が出て、第1セットはタイブレークへ。このセットはタイブレーク6-8と接戦で落としてしまったが、第2セット以降も十分にチャンスが来る内容だった。

だが、「ここから勝つには、こんなラリーをあと3セットも続けるのか」とメンタル的に引いてしまった伊藤。それがプレーにも現れるかたちとなり、続くセットを2-6、4‐6で落とし結局ストレート負け。外から見るぶんには伊藤のほうが元気に動いてプレーしていたため、自ら気持ちで壁を作ったのはもったいなかった。


好事魔多し! フェデラーまさかの3回戦敗退!!
フェデラー昨年後半のスパート(最終戦準優勝)、そして今年のスタート(ブリスベン大会優勝)の勢いを見ると、『フェデラーが全豪オープンの優勝候補』といっても誰も否定しなかっただろう。またブリスベン優勝で通算1000勝となったことも心理面でプラスに働いていたのは事実で、「昨年新しいラケットにしたのが今は完全に馴染んできて、特にサーブとバックハンドが良くなっている。調子もいいよ」(フェデラー)と全豪オープン入り。さらに第2シードがついたドローにも恵まれていて、順当にいけば4回戦までで当たる最高シードが第15シードのロブレドで、準々決勝でマレー(第6シード)、準決勝でナダル(第3シード)、決勝でジョコビッチという予定。2010年以来5年振り5度目の全豪オープン優勝も夢ではなかった。

しかし、好事魔多し。1回戦は盧にストレート勝ちし、2回戦でボレリにセットカウント3-1で勝ったものの、3回戦でセッピにセットカウント1‐3で敗退[4‐6、6(5)‐7、6‐4、6(5)‐7]。2度あったタイブレークをどちらも落としてしまったのが痛かったが、それよりも「今日はサーブやフォア、バックがどうのこうのではなく、全体的にプレーの質が悪かった」とフェデラー自身がコメントするとおりの内容で、そこにセッピの「いい感じでボールを打てていた」という絶好調が重なったこともあっての敗退。「試合前の練習の時からどうもリズムが悪かった。それでも以前は試合になるといいプレーができていたんだけれど、今日は試合になっても調子が悪かった」とフェデラー。やはり33歳とベテランになってくると、昔は修正できたことができなくなってくるのだろう。5セットマッチのグランドスラムで勝ち上がる難しさを改めて知ることとなった。

着実な進化を見せた錦織のライバル、ラオニッチ
ラオニッチ錦織(25歳)同様、時代を担う選手として認知されているラオニッチ(24歳)だが、実は24歳というのはフェデラーやジョコビッチは既にグランドスラムで優勝していた年齢。選手本人もそんな意識はないはずだが、いつまでも『期待の若手』ではいられない。そうした気概をしっかりと見せたのがラオニッチで、前哨戦ブリスベンでは錦織に勝利(決勝でフェデラーに敗れ準優勝)。

第8シードがついた全豪オープンでも、2回戦でヤング、4回戦でロペスとクセのある選手をしっかりと下して準々決勝まで進出。特に回り込みフォアからのショットはこれまで逆クロスが多かったのだが、今回はそれにプラスしてダウン・ザ・ラインへ打ち分けるタイミングが良くなり、またネットへのダッシュ・スピードも速くなったため、従来から高かった攻撃力にスピーディーさと安定感がプラス。さらに4回戦のロペス戦では最終セットまでもつれる試合をものにするなど、メンタル面での強さも見せつけた。

準々決勝ではジョコビッチの鉄壁ストロークを崩しきれなかったが[6(5)‐7、4‐6、2‐6]、ジョコビッチのラケットを弾くようなパワーショットでプレッシャーをかける場面もあり、着実に『自分ならではの上位に勝つためのテニス』を身に付けつつある。今後、錦織がグランドスラム優勝、ランキングNo.1といった目標を達成する際に、ジョコビッチ、マレー、フェデラー、ナダルとともに壁となる年下ライバルになるのは間違いない。


驚異の33歳! これでグランドスラム19勝!! グラフの記録22まであとわずか!!
S.ウィリアムズ1981年生まれのフェデラー(33歳)が突然の不調に陥り3回戦負けを喫したことを考えると、同じ1981年生まれの33歳セリーナ・ウイリアムズ(第1シード)が準々決勝で昨年の準優勝者チブルコワ(25歳 / 第11シード)、準決勝で勢いのあるキーズ(19歳)、決勝でシャラポワ(27歳 / 第2シード)と厳しいドローをすべてストレートで勝ち上がったことがいかにすごいかが分かるだろう。しかもパワー、テクニックともに若手にひけをとるどころか、上回るほど。特にオープンスタンスで放つ両手バックハンドは、男子でもなかなかパワーを出すことができない体勢なのだが、セリーナはほぼこのオープンスタンスでバックを打つため、相手からするとどこにボールが来るのかまったく読むことができない。それでいてパワーもあるのだから、今回の全豪オープンは『セリーナが集中してプレーすると適う女子はいない』ということを改めて見せつける大会となった。そして、そのセリーナが使用しているのが日本では未発売のBLADE 104。フレームがしなってボールが食いつく構造のBLADEに、104平方インチというフェイス面とパワーホールを採用したことも、セリーナのプレースタイルをサポートしていることは間違いない。

また、今回が19回目のグランドスラム・タイトルとなったセリーナ。S.ウィリアムズこれまで18回タイで並んでいたナブラチロワとエバートを抜き、グラフが持つオープン化以降1位の記録22回にさらに近づくことに。そして「まずは一歩ずつ。次は20回ね。最終的には22回も目標よ」(セリーナ)と、まだまだテニスへの情熱は失っていない。男子と違いグランドスラムでも3セットマッチの女子は、体力的な点では『ベテランも勝ちやすい』と言うことができる。とすると、今年残っている3つのグランドスラムすべてをセリーナが取り、グラフの22に追いつくことも考えられなくはない。それにしても驚異的な33歳だ。