全仏オープン2015 REPORT

ウィンブルドン REPORT

ウィンブルドン REPORT
セリーナ、最年長の33歳289日でグランドスラム優勝
フェデラー

4回戦で姉のヴィーナス・ウイリアムズ(第16シード。ウィンブルドンで5回の優勝・2回の準優勝)、準々決勝でアザレンカ(第23シード)、準決勝でシャラポワ(第4シード)を下し決勝まで勝ち上がってきたセリーナ・ウイリアムズ。『タフなドロー』と言ってしまえばそれまでだが、実際に戦ってきたセリーナにとってはそうしたことを考える余裕もなかったはずで、事実「一戦一戦、自分のベストを出して戦おうと思っていたのがいい結果につながった」と振り返っている。

そうして強敵を倒して勝ち上がった末に、決勝戦で相対したのがムグルザ(第20シード。21歳)という意外な新勢力。しかし、ベテラン選手にとって波に乗った若手ほど怖いものはない。思い返せば、シャラポワが04年に17歳でウィンブルドン&グランドスラム初優勝した時の相手はセリーナ。この時のセリーナにはウィンブルドン3連覇がかかっていたのだが、怖いもの知らずで強打を連続で繰り出してくるシャラポワに押し切られる形で4‐6、1‐6の敗退となってしまった。

そして今回も、そうした流れになる可能性はあった。いきなりムグルザにサービスゲームをブレークされたセリーナは、1‐4ダウンとリードを広げられピンチに。このままでは04年シャラポワ戦の再現となりそうだった。が、ここで、それまで少し受け気味だったセリーナがムグルザに負けない気迫&ハードヒットをみせ5ゲームを連取。6‐4で第1セットを先取すると、その流れを維持したまま第2セットも5‐1とムグルザを大きく引き離す。フェデラーこの後、5‐4とムグルザに追いすがられるも、最後はムグルザのサービスゲームを0ゲームでブレークし優勝。このウィンブルドンでは、昨年は3回戦負け、一昨年は4回戦負けだっただけに優勝後の「再びウィンブルドンで優勝できてうれしい」というスピーチには、言葉以上の深い感慨が込められていた。

こうして6回目のウィンブルドン&21回目のグランドスラム優勝を決めたセリーナ。マーガレット・コートの24回、ステフィ・グラフの22回に次ぎ史上3位のグランドスラム優勝回数となった。また、33歳289日でのグランドスラム優勝は、ナブラチロワが1990年ウィンブルドンで達成した33歳263日を抜きオープン化以降最年長記録で、昨年のUSオープン、今年の全豪オープン、全仏オープンと合わせグランドスラム4連覇。02年全仏オープンから03年全豪オープンにかけてグランドスラム4連覇したのに続き、2度目のセリーナ・スラム達成となった。この快挙について「昨年USオープンで優勝した時に、また再びセリーナ・スラムができるとは思ってもいなかった。ケガが多くてアップ&ダウンがあった2年前や5年前は、再びグランドスラム4大会連続で優勝できるとは思ってもみなかった」言うセレーナだが、同時に「33歳だけれど、フィジカルはとてもいい状態よ。10~12年前の状態に戻ったみたい。自分ではまだまだ若いと思っているわ」とコメントしており、テニスに対しても「試合の中で自分ができる最大限のことをすることが一番大事」とモチベーションは非常に高い。8月31日に開幕するUSオープンでグランドスラム5連覇&年間グランドスラム達成をする可能性は非常に高いだろう。


フェデラー3年振りのグランド優勝ならず! ジョコビッチに敗れ2年連続の準優勝!!
第2シードがついたフェデラー。前哨戦のハレで優勝し、このウィンブルドンでも1回戦のジュムホール戦から準々決勝のシモン戦まで落としたサービスゲームはわずかに1回という驚異的な強さで駒を進め、準決勝では"第一の山場"になるであろうと予測されたマレーと対戦した。マレーは12年にこのウィンブルドンで行われたロンドン五輪決勝でフェデラーを破って優勝しており、翌13年のウィンブルドンでは決勝でジョコビッチを破って優勝。さらに地元の大声援を受けるということもあり、『ここまでと同じような戦いはできないだろう』というのが大方の予想だった。

フェデラーしかし試合が始まると、ここまで好調だったサーブが、リターン名手のマレーを相手にしても面白いように決まる。フェデラー自身「今日は序盤からいいプレーができた。試合では、そうしていいスタートを切ることがとても大切なんだ。そして、今日は、その後もすごく締まった試合ができた。特に今日は効果的なサーブを確率よく打つことができた。僕のキャリアの中でも最高のサーブだったと思う」という内容で、奪ったサービスエースは実に20本(準々決勝のシモン戦は11本)。結局、マレーに一度もブレークを許さず(ブレークポイントを与えたのも一度だけ)、逆にマレーのサービスゲームを各セット1度ずつブレークするという効率の良さ&勝負強さを見せ(ブレークポイントは全部で10回あった)、7‐5、7‐5、6‐4で難敵マレーに勝利。この試合を見ていたロッド・レーバーが「今年はフェデラーが優勝する」とコメントするほどフェデラーが終始主導権を握った内容だった。

そうして迎えた決勝戦の相手は、昨年に続きジョコビッチ(昨年は7‐6[7]、6‐4、6[4]‐7、7‐5、4‐6のフルセットで敗退)。第1セットのタイブレークはジョコビッチ(7‐1)、第2セットのタイブレークはフェデラー(12‐10)が取った時点で、試合時間は約2時間が経過。さらに総得点を見ると、第1セットが37対37で、第2セットで51対51とどちらも同点。この後、どちらが流れを握るのかまったく分からない状態になっていた。

フェデラーしかし、試合の流れが変わったのが第3セット。ジョコビッチがフェデラー・サーブの第3ゲームをブレークし2‐1アップ。そこからはお互いのサービスキープが続きジョコビッチの3‐2アップとなったところで、約20分の雨天中断(オフィシャル側としては雨は一時的なものとして屋根を閉じることはなかった)。このタイミングでの中断について、フェデラーは「雨が降ってきたタイミングが僕には悪かった。降るのであれば、もっと早くか遅くがよかった」と振り返っているが、試合再開後は、新たな気持ちで自分のサーブからスタートすることができたジョコビッチがステディなプレーを展開し、1ブレークの差を守って第3セットは6‐4でジョコビッチ。すると、第4セットも先にブレークに成功したジョコビッチが、5‐3アップで迎えたフェデラー・サーブの第9ゲームでもブレークに成功し、結局6‐3で2年連続の優勝を飾った。

33歳338日と34歳を目前にしたフェデラーのプレーは、全盛期と比較しても遜色ないものであり、それは「優勝できなかったのは残念だけれど、高いレベルで決勝まで勝ち進んでこれたことには満足している」という決勝後のフェデラーのコメントからも分かる。それでもジョコビッチを倒せなかったということは、それだけジョコビッチのプレーがステディだったことを物語っており、そのジョコビッチについてフェデラーは「あれだけ高いレベルのプレーを続けても、1年間の中で大きなケガをしないのは驚きだ」と評しているが、まさにそれがジョコビッチの強さの要因なのだろう。

そして、これからはUSオープンに向けて北米のハードコートシーズンが始まる。1強となりつつあるジョコビッチに対し、フェデラー、錦織を含めたトップ選手がどんな戦いを臨んでいくかに注目だ!