錦織にとって、8度目のウィンブルドン挑戦を迎えた。過去最高成績は2年前のベスト16(4回戦進出)。第5シードで迎えたこともあってか、大会前「少なくとも準々決勝進出を」と目標を掲げた。
1回戦は、ツアー史上最速サーブ(時速263km)記録の持ち主、S.グロス(オーストラリア)。グラス(芝)コートはビッグサーバーが有利なサーフェス。イヤな相手だったが、「リターンがよく、先にブレークできた」と語るとおり、うまく攻略してストレート勝利。ただ、ここで恐れていたことが起きてしまった。試合途中、左脇腹を治療するため、メディカルタイムアウトを取ったのだ。そこは、ウィンブルドン前哨戦(ゲーリーウェバーオープン)で、途中棄権を強いられた箇所だった。
試合後、「体調は100%ではない」と語った錦織。だが、センターコートで行われたJ.ベネトー(フランス)との2回戦、全仏でも勝利しているA.クズネツォフ(ロシア)との3回戦では、試合巧者ぶりを発揮して勝利。過去最高成績に並んだ。
4回戦の相手は、M.チリッチ(クロアチア)。忘れもしない2014年USオープン決勝の相手だ。鬼門の4回戦を突破するに、ふさわしいカードとも言える。しかし、結果的に錦織の体は、すでに戦える状況ではなかった。試合が始まると、異変はすぐに明らかになった。まともにサーブすら打てない状況だったのだ。第1セットは1-6。もはや棄権するしかないだろう。ところが、ベンチに座り、下を向いていた錦織は第2セットに挑んだ。とはいえ、劇的によくなるはずもない。ゲームカウント1-5となったところで、自陣営から強い指示で、ついに棄権を申し出る。
「2年連続の棄権は、情けない思いがあった。だから、"筋肉が切れるまでやろう"と思っていた」と錦織。実は、今大会、どの試合もウォーミングアップの時点でかなりの痛みを感じていたのだという。「これだけのケガの中で、いい試合が3試合できたのは、来年の自信につながる」と前向きに語った錦織。 "サーブがもっとしっかりしてくれば、芝で十分に活躍できる"
4回戦突破という宿題は、来年に持ち越し。だが、芝での戦いに自信を深めたことは何より大きいはず。2017年ウィンブルドンが今から楽しみである。
「彼はウィンブルドンで勝てるチャンスがある5、6人の内の1人」
そう語ったのは、全仏から5週間という約束で、ラオニッチのコーチになったJ.マッケンローの言葉である。ツアー屈指のサーブ力に加えて、ネットプレーも成長しつつあるラオニッチは、全豪でベスト4、全仏はベスト16と結果を残している。前哨戦のロンドン/クィーンズ大会でも準優勝。「このサーフェスでは、やりたいことができる。自身の成長も感じる。ウィンブルドンでは決勝を狙いたい」と語り、オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブに乗り込んだ。
タイブレークもあったが3回戦まではストレート勝ち。次戦、D.ゴフィン(ベルギー)との4回戦は先にセットを連取される苦境に陥ったが、そこから挽回して勝利。続く準々決勝でN.ジョコビッチ(セルビア)を倒したS.クエリー(アメリカ)を退けると準決勝では、R.フェデラー(スイス)を対戦する。ウィンブルドンでのベストリザルトは2014年のベスト4。この時、同じく準決勝でストレート負けした相手がフェデラーだった。
ウイルソンラケット対決となった準決勝は、今大会のベストマッチと言っても良いほど白熱した展開になる。共に2セットずつ奪った第5セット、ラオニッチは先にブレークに成功して6-3と2年前のリベンジを成し遂げた。有言実行、決勝進出に進んでA.マレーと戦うことになった。
カナダ人初のグランドスラマーになるか、注目された決勝だが、試合開始からラオニッチの動きは明らかに硬かった。武器のサーブも、この日はいま一つで、マレーの守備を切り崩すことはできず。ストレート負けという結果になってしまった。
惜しくも準優勝。それでも、「準決勝からステップアップできたし、2セットダウンからも勝利できた。ガッツも見せることができたし、情熱も見せることができた。次につながると思う」と前を向いたラオニッチ。次のグランドスラム、USオープンでの期待は高まるばかりだ。
「コンディションが万全ではない」として全仏は直前に回避。6月、シュツットガルト、ハレと芝の前哨戦で復帰を果たしてウィンブルドンを迎えたロジャー・フェデラー(スイス)。
G.ページャ(アルゼンチン)との1回戦、ストレート勝ちを収めたものの、第1セット、第2セットはタイブレーク勝ち。その回復具合に不安を覚えたファンも多かったものの、2回戦でランキング700位台というM.ウィリス(イギリス)を、3回戦でD.エバンス(イギリス)にもストレート勝ち。続くS.ジョンソン(アメリカ)には、第1セットを奪われたものの、立て直してベスト8入り。そして準々決勝で迎えたのがM.チリッチ(クロアチア)。序盤、ミスも出てしまい、何と2セットダウンとなってしまう。「観客と共に戦っているつもり」と語るフェデラーだが、観客の声援が大きくなると、自身のリズムを取り戻す。高い位置から強打してくるチリッチに対して、左右に切り返して優位に立つとフルセットとなり、最終セットも6-3で辛くも勝利。準決勝はラオニッチとの対戦に。
第1セットは、ラオニッチの攻めに手こずって3-6。しかし、2セット目から、いいテニスを取り戻す。このセットをタイブレークで奪うと、第3セットは6-4。3年連続の決勝進出まで、あと1セット。第4セットは、一進一退の攻防に。5-6のサービスゲーム、40-0としたところから、ダブルフォールトを犯してブレークされてしまった。ここが運命の分かれ目だった。このセットをブレークされて第4セットを奪われると、流れは相手に傾く。第5セット1-2で迎えたサービスゲーム、アドバンテージラオニッチでもまさかのダブルフォールト。そのゲームを取り戻すことはできず。ベスト4という成績で今年のウィンブルドンを終えた。
実はこの戦いの裏でうわさとなっていたのが「最後のウィンブルドンになるのでは?」というもの。しかし、フェデラーは「またセンターコートに戻ってきたい。みんなにもお礼を言いたい。最後のウィンブルドンではないし、8度目の優勝を私は夢見ている。それがテニスをやる理由ではないけどね」と、これを否定している。
敗れはしたが、コンディションが不安視される中、準々決勝、準決勝で合計10セットとタフな試合をこなしたことは、一安心といったところだろう。本人もそれについては「この10セットを戦えたことは、今シーズンにとってプラスだ」と語っている。
フェデラーの伝説はまだ続く。残る最後のグランドスラム、USオープンではさらにコンディションを高めて臨んでくることだろう。
強すぎる女王がグランドスラムのコートに返ってきた。
2015年のウィンブルドンで2年ぶり6度目の優勝。S.グラフが持つグランドスラム最多優勝22まで、あと1勝と迫った。その後、地元USオープンでは準決勝で敗退。今年の全豪、全仏では決勝に進出しながら、いずれも制することができず。それは、22勝目というプレッシャーだったのだろう。
第1シードで迎えた今大会、決勝までの失セットはわずか1という盤石な状況。そして決勝で迎えたのは、全豪で敗れたA.ケルバー(ドイツ)だった。
第1セットがスタート。今大会、特にサーブが好調だったウィリアムズは、決勝でも変わらず調子をキープ。エース、サーブポイント、またサーブで押してウィナーを奪うという正に圧倒する展開で、6‐2で奪う。続く第2セット、ブレークポイントは握られるが不安など皆無。サービスゲームの第6ゲームをラブゲームで奪ってゲームカウント6-0。ストレート勝利で2年連続7度目のウィンブルドン優勝を達成した。 「記録(GS22勝)のことを意識しないようにすることが、とても難しかった。これまで懸命に努力してきてつかんだ勝利だから、喜びは格別」
やっとつかんだ22勝目、優勝の瞬間、コートに大の字に倒れ込んだ歓喜の姿は、苦しさの裏返しだったのだろう。今回の勝利は、オープン化以降でのグランドスラム優勝最年長記録を更新するものでもあった。34歳となるウィリアムズだが、衰えなどまったく見せることはない。彼女の一強時代、そして伝説はまだまだ続きそうだ。