以前のインタビューで、フェデラー選手は、夢のラケットというお題に「常にスーパーショットが打てるラケット」と答えた。錦織選手は同じ質問に「めちゃくちゃ速いサーブが打てるラケット(笑)」と回答した。現時点で彼らの夢を実現することは簡単ではない。
ただ、5年、10年、20年という期間で考えれば、現在のラケットは当時のラケットに比べれば“夢のラケット”と言ってもいいほどの進歩を遂げている。特にパワー面の進歩が顕著だが、飛べばいいというものでもない。大切なのがコートに収めるための「スピン性能」。ウイルソンには、Sラケ※と呼ばれる、インパクトさえすれば自動的にスピンがかかる特許をも取得したテクノロジーがある。それは、スピン発生の原理「スナップバック(ボールを捕らえる際、ストリングがずれて戻る動きのこと。これにより回転はかかる)」を最も効果的に発生させるラケットメーカー唯一の技術である。
そして、ウイルソンにはスピンを発生させたショットを連発するために作られた、通称“スピン・モンスター”と言えるラケットがラインナップされている。それが「BURN 100S CV」だ。フェイス・デザインは正面から見て横に広く、円形に近い。しなり、バランスなど、パワーはもちろん、どんな人でも、ラケットを振ればスピン量が増加するモデルだ。
※スピン・エフェクト・テクノロジー搭載ラケットのこと。スナップバックに着目し、横糸の本数を縦糸より少なくし、効率よくスピンを発生させるメカニズム。ウイルソンが特許を持っているテクノロジー。BURN 100S CVでは、ストリングのズレ幅が3.3倍増となり、ストリングスが戻る速度も69%UP。結果、回転量が10%UPしている。
その「BURN 100S CV」の性能をもっと高める方法がある。それがストリングの『セッティング』だ。どんなプレイヤーにどんなセッティングが最適か、打球に優れた効果を発揮させるストリングの組み合わせを見つけるため、今回、①縦ナイロン×横ナイロン ②縦ナイロン×横ポリ ③縦ポリ×横ナイロン ④縦ポリ×横ポリ(すべて『DUOコントロール』の4G ROUGHとNXT CONTROLを使用)と4種類の「BURN 100S CV」を用意し、編集部(広)&(川)含む20代から40代まで技量の異なる7名のテスターが参加し、レーダー弾道測定器“トラックマン”による大試打実験を行った。
今回は、打球のさまざまな数値を計測可能なトラックマンで、①スピン量 ②ボール速度の2つに焦点を当てて計測を行った。その結果が下記の表である。結論は6名のテスターは縦ナイロン×横ポリというセッティングで最もスピン量が増加。1名はポリ×ポリで1番のスピン量を計測した。
これで「ナイロン×ポリがいいんだな」と思うのは少し早計だろう。というのも、数値は、スイング速度、打球角度やパワーなど、いわゆるプレイヤーのタイプによって、選ぶべきパターンが変わるからだ。その証拠に、ナイロン×ポリのスピン数値が良かった6名も、2番目、3番目...のセッティングが同じではない。大事なのは、ストリングのセッティングを変えることで、数値は変化=打球が変化するということ。ストリングのセッティングをアジャストすることで
●【さらなる回転の向上】
●【(これ以上の回転は必要ではなく)スピードの向上】
●【回転とスピードをバランスよく向上】
以上3つの狙いを実現することができるわけだ。
「BURN 100S CV」ならスピンがかかることはまちがいない。7名の計測結果を参考に、“スピン・モンスター”に、自分が欲しいニーズをプラスαすることで自分仕様の「BURN 100S CV」に仕立て上げる――さらなる進化を目指して“ストリング・セッティング”を試してみてほしい。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
4 | 1551 | 72.9% | 2 | 104.5 | 97.8% | 4 | 171% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2128 | 100.0% | 4 | 99.5 | 93.2% | 1 | 193% |
ポリ × ナイロン |
3 | 1645 | 77.3% | 3 | 102.4 | 95.9% | 3 | 173% |
ポリ × ポリ |
2 | 1927 | 90.6% | 1 | 106.8 | 100.0% | 2 | 191% |
最高値-最低値 | 577 | 7.3 |
●数値からもわかるとおり、スイング速度は遅め。回転数で1位になったように、ナイロン系が適しているかと思いきや、ポリ×ポリもまずまずの結果に。ボール速度を上げたいので、今後ポリ×ポリを選択したい!
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
3 | 2,085 | 82.6% | 1 | 120.6 | 100.0% | 2 | 183% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2,523 | 100.0% | 4 | 106.1 | 88.0% | 1 | 188% |
ポリ × ナイロン |
2 | 2,154 | 85.4% | 3 | 109.2 | 90.5% | 3 | 176% |
ポリ × ポリ |
4 | 1,937 | 76.8% | 2 | 117.5 | 97.4% | 4 | 174% |
最高値-最低値 | 586 | 14.5 |
●フルウエスタン以上という特異なフォアのグリップで打つタイプ。縦にナイロン系を張るパターンが良さそう。ポリ世代だけに本人も衝撃的な結果だったようだ。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
2 | 2,130 | 96.7% | 1 | 116.1 | 100.0% | 1 | 197% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2,202 | 100.0% | 2 | 110.6 | 95.3% | 2 | 195% |
ポリ × ナイロン |
3 | 1,979 | 89.9% | 3 | 110.5 | 95.2% | 3 | 185% |
ポリ × ポリ |
4 | 1,803 | 81.9% | 4 | 109.4 | 94.2% | 4 | 176% |
最高値-最低値 | 399 | 6.7 |
●大学体育会出身者で、スイングが速く基本に忠実なスイングが特徴的。ナイロンをメインに用いたセッティングでいい数値が出ていることがわかる。逆にポリ×ポリはいま一つという結果になった。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
4 | 1831 | 88.4% | 4 | 122.4 | 96.3% | 4 | 185% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2,072 | 100.0% | 2 | 125.5 | 98.7% | 1 | 199% |
ポリ × ナイロン |
2 | 1,935 | 93.4% | 3 | 123.7 | 97.3% | 2 | 191% |
ポリ × ポリ |
3 | 1,861 | 89.8% | 1 | 127.1 | 100.0% | 3 | 190% |
最高値-最低値 | 241 | 4.7 |
●大学体育会出身者で、今だスイング速度は速い。回転数ではナイロン×ポリ、ボール速度ではポリ×ポリがベストに。ただし、その差は大きなものではないので、ナイロン×ナイロン以外の選択がフィットする可能性がある。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
4 | 1,892 | 86.7% | 4 | 118.9 | 93.1% | 4 | 180% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2,181 | 100.0% | 1 | 127.7 | 100.0% | 1 | 200% |
ポリ × ナイロン |
3 | 1,995 | 91.5% | 2 | 125.9 | 98.6% | 3 | 190% |
ポリ × ポリ |
2 | 2,085 | 95.6% | 3 | 125.8 | 98.5% | 2 | 194% |
最高値-最低値 | 289 |
●大学体育会出身者で、ボールを厚く捕えて打つプレーヤー。回転数、ボール速度、バランスとすべてでナイロン×ポリがベストという結果に。最適なセッティングを見つけることができた。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
3 | 2,265 | 81.9% | 3 | 134.8 | 97.7% | 2 | 180% |
ナイロン × ポリ |
2 | 2,334 | 84.4% | 4 | 125.0 | 90.6% | 4 | 175% |
ポリ × ナイロン |
4 | 2,138 | 77.3% | 1 | 138.0 | 100.0% | 3 | 177% |
ポリ × ポリ |
1 | 2,767 | 100.0% | 2 | 135.1 | 97.9% | 1 | 198% |
最高値-最低値 | 629 | 13.0 |
●明らかにスイング速度が速い男子大学生。ポリ世代と言われる年代だが、回転ではポリ×ポリが1位となり、ボール速度ではポリ×ナイロンが1位に。バランスでも1位であるため、ポリ×ポリが最良の選択とも言える。
縦×横 | 回転数 | ①最高回転を 100とした 場合の割合 |
ボール 速度 |
①最高回転を 100とした 場合の割合 |
回転+ボール 速度の 効率(①+②) |
|||
ナイロン × ナイロン |
3 | 2,112 | 93.2% | 3 | 100.0 | 92.9% | 3 | 186% |
ナイロン × ポリ |
1 | 2,267 | 100.0% | 4 | 99.5 | 92.4% | 2 | 192% |
ポリ × ナイロン |
2 | 2,236 | 98.6% | 2 | 104.4 | 96.9% | 1 | 196% |
ポリ × ポリ |
4 | 1,860 | 82.0% | 1 | 107.7 | 100.0% | 4 | 182% |
最高値-最低値 | 407 | 8.2 |
●きれいなスイングが特徴の女子大学生。回転数ではナイロン×ポリ、ボール速度ではポリ×ポリ、バランスではポリ×ナイロンという結果に。女性プレーヤーでも、ストリングを変えることで、スピン量、スピードをアップすることができる。
今回はスピン・エフェクト・テクノロジーを採用した通称“スピン・モンスター”こと”BURN 100S CV”と、新しく発売されるDUOコントロール(4G ROUGHとNXT CONTROL)のセッティングでカスタマイズを試みた結果、同じラケットでも、目指すプレーを想定してストリングのセッティングを施せば、非常に大きな差が生まれることを明らかにできた。ぜひ、自身の目指すテニスにあったセッティングを探してほしい。(ウイルソンではセッティングをカスタマイズし易い3種のDUO Seriesを発売予定だ。)
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