08年は1回戦負け、09年は右ヒジのケガで欠場と、このオーストラリアンオープンでは結果を残せていないためか「実は他のグランドスラムより思い入れがないんです」と言う錦織 圭。しかし、そうしたリラックスした気持で臨んだことがよかったのだろう。
1回戦では強めのスピンをかけてくるフォグニーニ相手に、サービスゲームでもリターンゲームでも常に錦織がボールを支配し、フォグニーニがそれに対応する形で試合が進行。最初の2セットを6-1、6-4と連取し、タイブレークになった第3セットは4-7で落としたものの、第4セットを6-4で取り錦織が勝利。「いいスタートを切れた。ラリーのミスも少なくてよかった。オーストラリアンオープンでの初勝利が一つの目標だった。第3セットはタイブレーク4-1アップから落としたので精神的に痛かった。でも、その中で気持を切り替えて第4セットに臨めたのはよかった。チェンナイ大会でUSオープンに続いてチリッチに勝ったし、このオーストラリアンオープンでも初戦で勝てたので、今年はいいスタートを切れたと思う」と錦織。納得がいくテニスでの勝利だったようだ。
そして2回戦、相手のマイヤーは、フラットで打ち込んでくるサーブの切れと、コントロールがいい選手。またストロークはフォア、バックともキレのあるフラットドライブをベースに、バックからは時折スライスを織り交ぜ、しっかりとゲームメイクしているのが特徴だ。試合のほうは、1回戦に続き6-4、6-3と錦織が最初の2セットを連取。しかし第3セットは0-6と一方的にマイヤーに取られるが、第4セットを6-3で錦織が締めゲームセット。USオープンに続きグランドスラム2大会連続で3回戦に駒を進めた。
試合後「今日は第3セットをイヤな落とし方をしてしまった。0-3とリードされた時点で、第4セットに向けて気持を切り替えようと思った。本当は、その切り替えに1セットもかかっていてはダメだと思う。でも第4セットは集中力を取り戻し、その中で勝てたのはよかったと思う」と振り返った錦織。この時点では「今日は、相手がバックが得意と分かっていたのでフォア側を攻め、また相手のバックハンド・スライスへの対処もうまくいった。このオーストリアンオープンのコートは球足が遅くて跳ねるので、僕には合っているかもしれない。自分が理想とする安定したミスの少ない、それでいてフォアで攻めるテニスで勝てたのはよかった。ここまで来たので、次の試合も楽しんで、ベスト16以上を目指したい」と本当に調子はいいようだった。
しかし続く3回戦、相手は第9シードのベルダスコ。そして、試合が行われたのは、センターコートに次いで2番目の大きさのハイセンス・アリーナ。錦織は「あの会場の雰囲気にのまれてしまって、また相手にも呑まれてしまった。1~2回戦は調子が良かったので落ちるような予感はあった」と第1セットを2-6とあっさり落としてしまう。この要因には緊張だけでなく、「リターンがよくなかった。相手の重いボールが対応しづらかった。ベルダスコのボールは、ナダルのようなヘビートップスピンで対応しづらかった。あのタイプの選手はやりにくい」という相手との相性もあったようだ。
それでも「第2セット以降はよくなった」という錦織。ゲームカウント3-3まではお互いのサービスキープが続く。「自分から攻撃に行かないと攻められっぱなしになるので、攻めていった」ことで、試合が少しずつ均衡してきたのだ。だが「そうして攻撃すると、どうしてもミスも多くなる」と錦織が試合後語ったように、ゲーム運びに無理が出てきた。そのため、第2セット、錦織サーブの第7ゲームをブレークされて6-4でベルダスコに取られると、第3セットも2つのサービスブレークを許し結局3-6で敗退。
試合後「結構力の差を感じた。トップ10のテニスのレベルの高さをすごく実感した。体力的にもテニス的にもまだまだ足りないと痛感した。相手は前の試合(2回戦のテイプサレビッチ戦。セットカウント0-2ダウンで、マッチポイントも握られていたところからの大逆転勝ち)で5セットを戦っていたのに、すごく動けていた。トレーニングにしてもテニスにしても、まだまだ足りないことがわかり、トップ10に入るのは本当に大変だと思った」と振り返った錦織。しかし、「でも、いいポイントもあったと思う。特にバックのディフェンスはよかった。そこからの組み立てが今後の課題。今年の目標はトップ50以内になること。1年をケガなく戦い抜けば可能だと思う」ともコメント。強打で押してくるベルダスコ相手に、ところどころドロップショットを決めるなど、錦織らしいパターンでポイントを取ることができていたので、このままいけば「今年の目標はトップ50に入ること」という設定は、クリアできそうだ。