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2011.01 :: 全豪オープン2011「1週目総括レポート」(Page2)

伊藤竜馬 この錦織に続く日本人男子として期待されていた伊藤竜馬は、予選1回戦で敗退。相手はストロークに粘りのあるスペインのオラソ。タイブレークになった第1セットを先取されたものの、第2セットを取り返しセットオールとしたが、第3セットは2-6で敗退。

伊藤はオーストラリアンオープン前のブリスベン大会で予選決勝まで進んでいたのだが、残念ながら敗退。その試合後、全身ケイレンになり、オーストラリアンオープンの会場があるメルボルンに移動してきてからも、満足に練習できない状態だった。そして臨んだ予選1回戦だったのだが。最終セットで再びケイレンになり、メディカルタイムアウトを取りトレーナーにマッサージを受けたものの回復せずの敗退。ラリーを支配する場面も多かっただけに、悔しい敗戦となった。


フェデラー そして昨年の全豪オープン覇者で今大会第2シードのフェデラーは、2連覇に向けて着々とコマを進めている。

1回戦でスロバキアのラクコ、3回戦ではベルギーのマリース、4回戦ではスペインのロブレドにストレート勝ち。唯一苦戦したのが、これまで2戦全敗と苦手としているシモンと対戦した2回戦。最初の2セットを6-2、6-3と簡単に連取したものの、続く、第2、3セットをシモンに6-4、6-4で奪い返されて最終セットまでもつれる大接戦に。イヤな流れだったが、それでも何とか6-3で振り切って勝利した。しかしこの苦しい状況を突破したからだろう、前述の通り、続く3回戦ではマリース、4回戦ではロブレドと試合巧者を共にストレートで下してベスト8へ進出。このまま優勝まで走り抜けられる勢いだ。


ドルゴポロフ 男子の新戦力として注目してほしいのが、ウクライナのドルゴポロフ。超クイックのサーブ、それほど厚くないグリップの握りからヒジを使って強いスピン回転をかけたり、そのまま押し込んで高速フラットを打ったり、ドロップショットを打ったりと、錦織に負けず劣らずのトリッキーでコートを広く使ったテニスをするのが特徴の選手だ。その独特のテニスを完全にアドバンテージにし、今回のオーストラリアンオープンでは3回戦でこのオーストラリアンオープン準優勝の経験を持つツォンガ(第13シード)、4回戦でフレンチオープン準優勝の経験をもつソダーリン(第4シード)を撃破。

このドルゴポロフ、父がかつてメドベデフのコーチを務めていて(ドルゴポロフが5歳のときから)、その時、父と一緒にメドベデフのツアーに同行していたという特異な経験の持ち主。このオーストラリアンオープンでは、クレモン、シュットラー、バグダティスのように、それまであまり注目されなかった選手が決勝進出を果たしているが、ドルゴポロフも決勝まで進出することができるのだろうか?


ペトコビッチ / ギョルゲス

女子ではドイツのペトコビッチ(写真左)が4回戦でシャラポワを破る大金星。シャラポワはその前の3回戦で、同じくドイツのギョルゲス(写真右)をフルセットの末破っての4回戦だったのだが、ギョルゲスもペトコビッチもスピンの効いたパンチ力あるストロークが魅力の選手。さらに、サーブのスピードもあり、コート内に切れ込んでいくフットワークも軽やかなため、今後、この2人はグランドスラムをにぎわす常連になってくるだろう。


クビトワ 他に女子で大きくブレークしているのが、第25シードのクビトワ。左利きで、183cmと長身で手足が長く、高い打点から繰り出すサーブと、高い打点から打ち下ろすフォアハンドが特に強力。そのショットには男子並みの威力とスピードがある。また、これまでは左右に振られると足がもたつく弱点があったが、オフシーズンにトレーニングを積んだ成果が出て、このオーストラリアではほとんどのボールをしっかり打つポジションに入ることができていた。その成果が出て、2回戦で試合巧者のチャクベターゼを下すと、3回戦では地元オーストラリアの英雄、第5シードのストーサーにストレート勝ち。続く4回戦では第22シードのオールラウンダー・ペンネッタをフルセットで下してベスト8以上が確定。

このクビトワ、昨年のウィンブルドンでベスト4に入っているが、左利き特有の外に切れていくスライスサーブで相手に大きなプレッシャーをかけられること、また、ネットプレーもうまいことなどから、今後もグランドスラムの上位常連になってくるだろう。


エナン こうした女子の新戦力に負けない活躍が期待されたのが、一度引退したものの昨年約2年ぶりに現役復帰し、復帰最初のグランドスラムとなったオーストラリアンオープンで準優勝を果たしたエナン。エナンはその後、4月のシュツットガルト大会、6月のスヘルトヘンボス大会で優勝し、復帰の一番の原動力となった「グランドスラム大会で唯一まだタイトルを取っていないウィンブルドン優勝」を目指し、ウィンブルドンに挑んだのだが、4回戦で右ヒジを痛めてしまい敗退。その後、2010年シーズンの大会に出場せず、治療に専念していた。

しかし今回のオーストラリアンオープンの時期になっても、ケガは100%完治せず、右ヒジにサポーターを巻いての出場。それでもフットワークの速さだけでも普通の選手を圧倒する強さがあり、1回戦ではショットにキレのよさで勝負してくるミルザに第1セットを7-5で先取されながらも、続く2セットを6-3、6-1で連取し勝利。2回戦ではバルタッチャを6-1、6-3で下し、約半年間ツアーから離れたため、失っていた試合勘を徐々に取り戻しつつあった。

エナン しかし、3回戦で対戦したのが、第23シードのクズネツォワ。クズネツォワは昨年、テニスの調子をくずしランキングを落としていたが、04年USオープン、09年フレンチオープンで優勝するなど、元々エナン並にポテンシャルの高い選手。試合はお互いしっかりラリーをして、チャンスボールを確実に決めてポイントを重ねていくという展開になったが、クズネツォワが全盛期の頃を彷彿とさせるようなパンチ力あるフォアでエースを取ってくるのに対し、エナンは決めに行ったショットがネットにかかることが多く、どうも波に乗れない。結局、その差がゲーム数となって出てしまい、エナンは4-6、6(8)-7で敗退。やはり、テニス選手の生命線ともいえる右ヒジにケガを抱えたまま勝ち上がれるほど、グランドスラムは甘くなかった。