テニスはボールのやり取りでポイントを積み重ねて行くゲーム。
試合での勝負を考えたときに大事になるのは、打感などに代表される『自分サイドの感触』以上に、打ったボールが相手にどうダメージを与えるかの『相手サイドの感触』なのだが、
これは意外に気づかないまま過ごしてしまいやすい。
近年のテニス界で主流になりつつあるのが、いわゆる『黄金スペック』のパワー系モデル。
誰でも強いボールを作りやすく、かつコントロールもしやすいこともあって、多くのプレーヤーたちに受け入れられているが、それが広く浸透した今ではメリットも薄くなっている。
お互いに差がなくなって来た時に、相手よりもより有利な条件を引き出したければ、相手の上を行く武器を手にするのが一番早い。
アザレンカやフェリシアーノ・ロペスといったスピードボーラーたちが手にしているのが『JUICE』ファミリー。
フレーム厚をスロート部分とフェース部分で微妙に変化させた『デュアル・テイパー・ビーム』テクノロジーがそのキモとなる部分。
打球時のラケットの変形やしなりを抑制する方向で制御し、パワーロスを極限までなくして、スイングのパワーをそのままボールに表現するだけでなく、100のパワーを120に増幅してボールを弾き飛ばし、圧倒的なスピードで押すテニスを実現したのが『JUICE』ファミリーなのだ。
さらに、パワフルになれば当然犠牲になりやすいコントロール性も、手に打球情報を多く伝えるウイルソン独自の『アンプリ・フィール・テクノロジー』によって確保され、『コントロールできるパワー化』を実現。強烈な初速と、自在にボールを操れる感覚のチューニングで、フラット系のスピンで相手を押し込んだり、相手コートに鋭く返って返球を許さないボレーなど、スピードで攻めるテニスをしたい人のためのラケットに仕上がっている。その感覚は、アザレンカが「ウイルソンのラケットが私にパワーをもたらしてくれた。それでいてコントロールもしやすい。すごくプレーしやすかった」と語ったコメントに凝縮されていると言っていい。
一方、錦織 圭や伊藤竜馬、内山靖崇などが手にする『STeam』ファミリーは、しっかりとボールに食いついて、伸びるスピンで攻めたい人のためのモデル。
フレーム全体に使用するバサルトファイバーの量を増やして、ラケット全体の安定性を上げ、パワーロスを減らすと共に、軽量でトップヘビーのバランスとすることで、スイングの始動時の加速性を上げ、高い慣性モーメントを確保したセッティング。
つまり、打球時にフレームがブレない堅牢さと、力強いトルクでボールがしっかりと面に食い込むラケットになっているのだ。
これは海外のパワフルな選手たちと戦う日本人選手のために作られた、『ジャパン・モデル』(STeam PROとSTeam 95)という素性から生まれた特性。
鋭く高く跳ね上がって来る海外のトップ選手たちのボールに対して、ただ打ち負けないだけでなく、叩き返すためのセッティングを煮詰めた結果、生まれたバランスなのだ。
また、絶対的なウエイトが軽いため、男女を問わず使用できるのも、大きな特長のひとつと言っていい。
昨年秋、本来は2012年から使用を開始する予定だった『STeam PRO』を試打した錦織は、すぐにこれは武器になると判断。
急遽バーゼル大会に必要な本数を取り寄せて実戦で使用し、準決勝でランキング№1のジョコビッチを倒すという日本人男子としては初の快挙を成し遂げた。
強烈なパワーと鋭いスピンで、バウンド後も失速しない。
これはPRO、95、100のファミリー3モデルに共通した特性で、95を使う内山靖崇は「スピンを打つための高さが出しやすい」とコメントし、100を使う伊藤竜馬は「よりパワフルになっただけでなく、ライン際で落ちるボールが打ちやすくなった」とその戦闘力の高さを言葉にしている。
相手より質の高いボールを打って、攻撃するための2つの選択肢。本当の強さを求めるプレーヤーのためのラケット。それがこの『JUICE』と『STeam』なのだ。