今年1月に発売されたウイルソンのスピンラケットSTeam Sシリーズ(99Sと105S)。
『スピン』と銘打つこのラケットの最大の特徴は、そのストリングパターンで、実に縦16本×横15本。
これまでのラケットと比べると、縦横とも2~5本少なく、ストリングの目が粗くなっているのだ。
これは、最新の研究により“ボールにスピン回転をかける最大の要素は『スナップバック』にある”ことがわかったため。
スナップバックとは、インパクト時にボールがストリングと当たった時、ストリングが一旦ズレたあと元に戻ろうとする動きのこと。
この<ズレ→戻り>というストリングのスナップバックは、約1000分の3秒という短時間で一瞬のうちに起こるため、これまで見逃されてきたのだが、実はこのスナップバックこそスピン回転をかけるための大きな要因であることが分かったのだ。
ここで一旦、ウイルソンのスピンラケットの歴史を振り返ると、『プロ選手も使えるスピンを増加させるラケット』第一号は、1995年に発表された<ハンマーHMクラシック>。
これは、金づち(ハンマー)の原理を応用したもので、ラケットヘッドにウエイトを置くことで、少ない力でもヘッドが返しやすい=スイングスピードが上がるというもの。
そうしてヘッドが返ることがスイングスピードを上げることにつながり、それがスピンを増加させるという理論だった。
そして、このハンマーHMクラシックは、男子ではトッド・マーチン(94年全豪オープン準優勝、98年USオープン準優勝)、女子ではリンゼイ・ダベンポート(98年USオープン優勝、99年ウィンブルドン優勝)、コンチータ・マルチネス(94年ウィンブルドン優勝)と男女のトップ選手が愛用していたこともあり、数多くの一般プレーヤーにも受け入れられたモデルとなった。
続いてウイルソンが提案した『スピン』ラケット第2段は、1996年にリリースされた<ハンマースピン>。これはフレーム厚が14mmという驚異的な薄さが特徴のラケットで、それ故、空気抵抗が減り振り抜きが抜群=スピンがかけやすいというものだった。
こうしてフレームの形状にこだわったラケットは、見た目にも他との違いが明確なため、フレームに穴を空けたり、フレームの形を三角に近いものにしたりといったものが近年も他メーカーからも出ている。
今回のSTeam Sシリーズは、ウイルソンから出る『スピン』ラケットと謳ったモデルとしては、そのハンマースピン以来。前述したように、これまでのようにフレームに注目するのではなく、ストリングにスポットを当てたのが大きな特徴で、実際に16×10、16×20、8×10、8×20など色々なパターンで検証した結果、スナップバックのズレが大きく、戻るスピードが速いのは横糸(クロス)がメイン(縦糸)よりも少ない時ということが判明。
さらに、その[メイン>クロス]という法則を踏まえて調べたところ、縦16本×横15本というストリングパターンがラケットに対するベスト本数ということが分かったのだ。
実際にこのSTeam Sシリーズを打つと分かるが、本当にスピンが良くかかる。
フェデラーはこのSTeam Sシリーズをトライして「これを使ったら皆がナダルみたいになってしまうよ」とコメントしたのだが、確かにその通り。
また、錦織の「もの凄いです。ビックリしました。パワーがないプレーヤーにも簡単にスピンが打てるんでしょうね」という言葉も、このSTeam Sシリーズの特徴を明確に表している。
これに、スナップバック効果を更に引き出すルキシロンのポリ・ストリングを張れば、本当に自分でもビックリするスピンが打てるようになるはずだ。約20年に渡るウイルソンの「スピン研究の成果」を体感してみて欲しい。
>>「 STeam 99S / STeam 105S」に関する詳しい情報(2013.1.20更新号)
>>「Sシリーズ」が持つ高い「スピン&スピード&飛び」性能に関する詳しい情報(2013.2.20更新号)
>>「STeam S+4G」によるスピン性能に関する詳しい情報(2013.4.20更新号)
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