全豪オープン2017レポート


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セレナ・ウイリアムズ 昨年のグランドスラム・タイトルはウィンブルドンのみに終わったセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)。一般的に考えれば十分すぎるほどの栄誉だが、こと「セレナ・ウイリアムズの戦績」と考えると、物足りなさを感じるのもしかたない。全豪オープンと全仏オープンは準優勝に終わり、そして全米オープンでは準決勝で敗れたことで、長年守り続けてきたランキングNo.1の座も明け渡した。
セレナ・ウイリアムズセレナの1強独占から混戦の時代へ...そんな様相を呈した2016年を経て、2017年の女子テニスはどんな状況が描き出されるのか? 今回の全豪オープンはそこが焦点だった。

大会は序盤から中盤にかけて波乱の展開を見せた。まず、第3シードのラドワンスカ(ポーランド)が2回戦で、34歳、かつて"天才少女"と呼ばれたルチッチ・バローニ(クロアチア)の技の前にストレートで敗退。そして4回戦では、昨年のこの全豪決勝でセレナが苦杯を喫した第1シードのケルバー(ドイツ)が、ノーシード、25歳のバンダウェイのパワーに屈し、姿を消す。
大会1週目にして、新旧が激しくひしめき合い、悲喜交々とした展開は、昨年に続き混戦の時代が続くことを予感させた。
しかし、そんな中で泰然自若とした歩みを見せたのが、ほかならぬセレナだった。
1回戦は新進気鋭、19歳のベンチッチ(スイス)、2回戦ではダブルスNo.1のサファロワ(チェコ)と、大会序盤にして決して気の抜けない相手にストレート勝ち。続く3回戦では伏兵、23歳のギッブス(アメリカ)を一蹴。この後はシードどうしのぶつかり合いとなったが、4回戦では第16シードのストリコワ(チェコ)を、準々決勝では第9シードのコンタ(イギリス)を、いずれもストレートで退けてベスト4入りを決めた。

セレナ・ウイリアムズ準決勝で顔を合わせたのは、ラドワンスカを破った勢いを維持して勝ち進んできたルチッチ・バローニだった。1999年のウィンブルドンでベスト4を記録しているルチッチ・バローニだが、その後、波乱万丈の人生を経験し、雌伏の時を経て再び大舞台に登ってきた。35歳のセレナと34歳のルチッチ・バローニ。ネットを挟んで2人が対戦したのはこれが3回目だが、最後に戦ったのは、実に19年前のウィンブルドンだった。そして今回の対戦は、混戦の様相を見せる大会の中にあって、セレナに自分自身のテニス人生をあらためて振り返らせるものだった。 「あれはセンターコートでの試合だった。私が憶えているのはそれだけ。本当に若かったから。ただただ、すごく興奮していたわ」
セレナは、一方では若かった頃の記憶を懐かしみ、もう一方ではプレーの邪魔となる甘い感傷を振り払うようにルチッチ・バローニを退け、決勝へと歩を進めた。

セレナ・ウイリアムズそして...。迎えた決勝で顔を合わせたのは、姉のビーナス。13番目というシードが、今置かれた2人のステージの違いを示している。しかし、2009年のウィンブルドン以来となるグランドスラム決勝における2人の対戦(セレナの6勝2敗)は、やはり特別なものだった。
序盤こそ、姉妹対決ならではのぎこちなさがミスとなって表れたが、ポイントを重ねるごとにお互いのショットは精度を増し、グランドスラムの決勝戦にふさわしい崇高さを帯びていった。
結果は、今の2人の力の違いを示すものとなった。グラフ(ドイツ)と並んでいた記録を更新し、セレナが男女を通じて単独史上最多となる23個目のグランドスラム・タイトルを獲得。しかし、その時ロッドレーバーアリーナを満たした空気は、セレナとビーナスの2人をともに祝福するものだった。そして、それに応えるように姉妹は笑顔でお互いを称えあった。険しい道のりを歩み、そして苦しみを受け容れてきた者だけが見せることのできる優しい笑顔だった。混戦の時代の行方...それがほんの些細なことに感じられるほどの高貴さをたたえていた。

セレナの手に握られていたのは、初めて自らのイニシャルが冠せられたモデル、「ブレード SW104 オートグラフCV」。開幕前、「ウイルソンのシグニチャーラケットにラインナップされたことを誇りに思うわ」とセレナは語っていた。プレーヤーの疲労を軽減する新素材「カウンターベイル」が採用されたこのニューモデルは、セレナに新たな力を授けた。 険しい道のりを歩み、苦しみを受け容れてきた者のみが持ち得る包容力。「ブレード SW104 オートグラフCV」とセレナ。両者は、どこか似ている。



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