2008年のプロ転向以来、今年で10シーズン目を迎えたグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)。25歳という年齢から考えても、本来持っている才能がいよいよ本格化する時期だったのかもしれない。
前哨戦となるブリスベン国際で錦織 圭を破って優勝。そして迎えた全豪オープンでも好調は続いた。3回戦では、第18シードで試合巧者のガスケ(フランス)をストレートで退けると、4回戦では今大会の台風の目、2回戦で第2シードのジョコビッチ(セルビア)を破ったイストミン(ウズベキスタン)の勢いも封じ込めて、まずはベスト8。続く準々決勝では、第11シード、昨年の楽天オープン準優勝のゴフィン(ベルギー)を寄せつけずに、グランドスラムとしては2014年のウィンブルドン以来、2度目となる準決勝進出を決めた。
名伯楽バルベルドゥ新コーチとのタッグがディミトロフを目覚めさせた成果は、準決勝のナダル(スペイン)戦でさらに鮮明になった。
4時間56分、フルセットに及んだ試合を通じて、ディミトロフが奪ったウイナーは79本(ナダル45本)、サービスエースの数は20本(ナダル8本)と、いずれもナダルを上回った。さらに、ネットプレーでのポイント獲得率は75%で、これはナダルの86%に抑えられるも、ネットに出た回数は48回と、ナダルの29回を大きく上回っている。つまり、サーブ、ストローク、そしてネットと、ディミトロフはオールラウンドなプレーのレベルアップと、そして攻撃性の高さを示したのだ。
トータルポイントは、ナダルの186に対してディミトロフは179。「これだけの試合をして負けるのはつらい。でも、自分は正しい方向に進んでいると思えた」(ディミトロフ) かつて"ベイビー・フェデラー"と賞賛された若き才能は、時を重ねて、他の誰でもない、"グリゴール・ディミトロフ"として、歩みを始めた。
また、腕の長さを存分に生かした、スイングの支点となる肩からインパクトポイントまでの距離の長さはディミトロフの特徴。「プロ スタッフ97S」を武器に、大きな弧を描く華麗なスイングから放たれるショットはスピードと精度を増し、ナダルを最後まで苦しませた。USオープン直後から使用を始めた新「Pro Staff 97S」。元からある天賦の才×新たな努力×新マテリアル、その積が今シーズン、出始めたということだ。